以下は、宅地建物取引業法違反についての通報を受けた行政庁が宅地建物取引業者から聴取した内容である。下線部ア)~エ)の宅地建物取引業者の主張について、宅地建物取引業法に違反するおそれのないものの組合せは1から4のうちどれか。
居住用物件の仲介を行い、売買契約は無事成立しております。買主は個人の方で、宅地建物取引業者ではありません。物件は築20年の中古物件で現状有姿取引です。また、買主から急ぐため内見は不要との要望があったため、内見は行いませんでした。
重要事項説明は、令和8年の5月、買主に弊社の事務所にお越しいただき、専任の宅地建物取引士が直接説明を行っています。
ア)重要事項説明書は、宅地建物取引士の資格を持たない営業員が作成したものを専任の宅地建物取引士がチェックし、押印はせず記名のみ行い買主に交付しました。
イ)確かに買主からは事前に「通勤のために駐車場があることが契約の必須要件」との希望が出されていました。しかし、駐車場は重要事項説明義務の対象外であるため駐車場が無いことを重要事項説明書に記載せず、告知もしませんでした。
ウ)売主から「都市ガスが使用できている」とヒアリングしたので、重要事項説明書にはその売主からのヒアリング結果をそのまま記載しました。重要事項説明書の記載事項と実態が異なっていたかもしれませんが、ヒアリングを行っているので問題ありません。
エ)買主が耐震性能に関心を有していたこともあり、売主に診断の記録の有無を確認し、「無い」との回答が得られたためその旨を重要事項説明書に記載しました。弊社に耐震診断を実施する義務は無いと考えています。
1.ア、イ
2.ア、エ
3.イ、ウ
4.ウ、エ
ア・・・ 違反するおそれはない
「重要事項説明」とは、宅建業者が、契約をする前に、買主などに対して、物件や取引条件についての大切なことを宅地建物取引士に説明させることを言います(宅建業法35条)。
重要事項説明書を「作成」する人については、法律に決まりはありません。宅建士の資格を持たない営業員が下書きをしてもかまいません。宅建業法が求めているのは、説明を宅建士がすること、そして、書面に宅建士が「記名」することです(宅建業法35条1項・5項)。
以前は宅建士の「記名押印」が必要でしたが、法改正(令和4年5月施行)によって押印は不要になり、記名だけでよくなりました。ですので、押印をせずに記名のみ行ったことも問題ありません。
また、説明をする宅建士は、専任の宅建士である必要はなく、一般の宅建士でもかまいません。この肢では専任の宅建士が説明しているので、もちろん問題ありません。
イ・・・ 違反するおそれがある
駐車場があるかどうかは、宅建業法35条に列挙された重要事項説明の記載事項ではありません。その意味では、重要事項説明書に書かなかったこと自体は、すぐに35条違反になるわけではありません。
しかし、宅建業法47条1号は、宅建業者が、契約の締結について勧誘をするときなどに、相手方の判断に重要な影響を及ぼすこととなる事項について、わざと事実を告げなかったり、うその事実を告げたりすることを禁止しています。
この肢では、買主は事前に「駐車場があることが契約の必須要件」と伝えていました。つまり、駐車場がないと分かっていれば買わなかったはずです。それを知りながら駐車場がないことを告げなかったのは、まさに「相手方の判断に重要な影響を及ぼすこととなる事項」を故意に告げなかったことになります。
「35条の記載事項ではないから説明しなくてよい」というのは誤った考えです。重要事項説明の対象かどうかと、47条の故意の不告知の禁止とは別の話なので、気をつけましょう。
ウ・・・ 違反するおそれがある
飲用水、電気、ガスの供給のための施設の整備の状況は、重要事項説明の記載事項です(宅建業法35条1項4号)。都市ガスが使えるのか、プロパンガスなのかで、毎月のガス代やガス器具の買い替えが必要かどうかが変わってくるので、買主にとって大切な情報です。
宅建業者は、プロとして、重要事項説明書に正しい内容を書くために、必要な調査をしなければなりません。売主から聞いた話をそのまま書くだけでは足りず、ガス事業者に問い合わせたり、現地を確認したりして、実際の状況を確かめる必要があります。
この肢の業者は、「ヒアリングを行っているので問題ない」と言っていますが、調査をせずに、実態と違うかもしれない内容を重要事項説明書に記載しています。これは、35条の重要事項説明義務を果たしたことにならず、宅建業法に違反するおそれがあります。特に、この物件は内見もしておらず、現地の確認もしていないので、なおさら問題です。
エ・・・ 違反するおそれはない
「耐震診断」とは、建物が地震にどのくらい耐えられるかを、専門家が調べて評価することを言います。
重要事項説明では、建物が昭和56年5月31日以前に建築工事に着手したもの(いわゆる旧耐震基準の建物)である場合、一定の耐震診断を受けているときはその内容を説明しなければなりません(宅建業法35条1項14号、宅建業法施行規則16条の4の3第5号)。
ただし、これは「耐震診断を受けているなら、その内容を説明する」というルールであり、宅建業者に耐震診断を実施する義務があるわけではありません。ですので、売主に記録の有無を確認し、「無い」との回答を記載したこの業者の対応に問題はありません。
なお、この物件は築20年なので、そもそも旧耐震基準の建物には当たらず、この説明事項の対象ではありません。それでも、買主が関心を持っていたので確認して記載したのは丁寧な対応と言えます。
以上から、違反するおそれのないものはアとエで、正解は2です。
令和8年(2026年):宅建試験・過去問
- 問1
- 所有者不明土地・管理不全土地
- 問2
- 賃貸借
- 問3
- 共有
- 問4
- 相続(法定相続分)
- 問5
- 契約の終了
- 問6
- 売買契約・賃貸借契約
- 問7
- 代理
- 問8
- 売買契約
- 問9
- 法定地上権
- 問10
- 契約総合
- 問11
- 借地権
- 問12
- 建物賃貸借
- 問13
- 区分所有法
- 問14
- 不動産登記法
- 問15
- 都市計画法
- 問16
- 都市計画法・開発許可
- 問17
- 建築基準法
- 問18
- 建築基準法
- 問19
- 盛土規制法
- 問20
- 土地区画整理法
- 問21
- 農地法
- 問22
- 国土利用計画法
- 問23
- 贈与税(住宅取得等資金の非課税特例)
- 問24
- 不動産取得税
- 問25
- 地価公示法
- 問26
- 広告
- 問27
- 監督処分・罰則
- 問28
- 宅建士
- 問29
- 媒介契約
- 問30
- 営業保証金
- 問31
- 宅地・宅建業の定義
- 問32
- 犯罪収益移転防止法
- 問33
- 専任の宅建士
- 問34
- 重要事項説明・35条書面
- 問35
- 報酬計算(売買)
- 問36
- 重要事項説明
- 問37
- 報酬計算(貸借)
- 問38
- 37条書面
- 問39
- 業務上の規制
- 問40
- 業務上の規制
- 問41
- 届出
- 問42
- クーリングオフ
- 問43
- 重要事項説明
- 問44
- 案内所等の規制
- 問45
- 住宅瑕疵担保履行法
- 問46
- 住宅金融支援機構
- 問47
- 不当景品類及び不当表示防止法
- 問48
- 統計
- 問49
- 土地
- 問50
- 建物






