令和8年(2026年)問32|犯罪収益移転防止法

宅地建物取引業者は犯罪による収益の移転防止に関する法律第2条第2項の特定事業者に該当するが、宅地建物取引業者Aの行為に関する次の記述のうち、同法の規定によれば、正しいものはどれか。

1.Aは、宅地の売買や貸借を行うに際して、顧客の属性や取引時の状況等の情報を総合的に勘案して、本人性の疑義や犯罪収益の移転等の疑いが生じた取引に関しては、速やかに、所定の事項を行政庁に届け出る義務が発生する。

2.Aは、宅地の売買を行うに際して、相手方である買主が宅地を購入することを急ぎ、市場価格を大きく上回る価格でもいとわない姿勢を示したことにより、資金が犯罪による収益である疑いがあると判断し、速やかに、所定の事項を行政庁に届け出た。この場合、届出後に当該契約を締結してはならない。

3.Aは、宅地の売買契約の相手方である買主が、取引の関係書類に自己の名前を書くことを拒んだため、本人性が疑わしく、資金が犯罪による収益である疑いがあると判断し、速やかに、所定の事項を行政庁に届け出た。この場合、届出をしたことを相手方に伝えてもよい。

4.Aは、宅地の売買を行うに際して、当該売買契約の相手方である買主が、決済方法について現金での取引に執拗にこだわる姿勢を示していたことにより、資金が犯罪による収益である疑いがあると判断したときは、売買契約締結後であっても、速やかに、所定の事項を行政庁に届け出る義務が発生する。


【答え:4】

1.Aは、宅地の売買や貸借を行うに際して、顧客の属性や取引時の状況等の情報を総合的に勘案して、本人性の疑義や犯罪収益の移転等の疑いが生じた取引に関しては、速やかに、所定の事項を行政庁に届け出る義務が発生する。

1・・・ 誤り

「犯罪による収益の移転防止に関する法律」(犯罪収益移転防止法)とは、振り込め詐欺や麻薬の売買などで手に入れた汚れたお金が、不動産の購入などを通じて、きれいなお金のように見せかけられること(マネー・ローンダリング)を防ぐための法律のことを言います。宅建業者は、この法律の「特定事業者」として、一定の義務を負っています。

宅建業者が義務を負う「特定業務」は、宅地建物の売買と、その代理・媒介に限られています(犯罪収益移転防止法2条2項、別表)。宅地建物の貸借は対象に入っていません。家賃のやりとりでは大きなお金を一度に動かしにくいので、対象外とされています。

また、「疑わしい取引の届出」は、受け取った財産が犯罪による収益である疑いがあるときなどに行うものです(同法8条1項)。この肢は、貸借まで含めている点が誤りです。売買だけが対象で、貸借は対象外という点は、ひっかけとしてよく使われるので押さえておきましょう。


2.Aは、宅地の売買を行うに際して、相手方である買主が宅地を購入することを急ぎ、市場価格を大きく上回る価格でもいとわない姿勢を示したことにより、資金が犯罪による収益である疑いがあると判断し、速やかに、所定の事項を行政庁に届け出た。この場合、届出後に当該契約を締結してはならない。

2・・・ 誤り

「疑わしい取引の届出」とは、宅建業者が、取引で受け取るお金が犯罪によって手に入れたものではないかと疑ったときに、そのことを行政庁(免許をした国土交通大臣や都道府県知事)に届け出ることを言います(犯罪収益移転防止法8条1項)。

この肢のように、買主が、相場よりもかなり高い値段でもかまわないからとにかく早く買いたい、という態度をとっているときは、お金の出どころが怪しいと考えられるので、届出をするのは適切です。

しかし、届出をした後に契約を結んではいけない、という決まりは犯罪収益移転防止法にはありません。届出の制度は、行政庁や捜査機関に情報を集めるための仕組みであり、取引そのものを禁止するものではないからです。ですので、「届出後に契約を締結してはならない」というのは誤りです。


3.Aは、宅地の売買契約の相手方である買主が、取引の関係書類に自己の名前を書くことを拒んだため、本人性が疑わしく、資金が犯罪による収益である疑いがあると判断し、速やかに、所定の事項を行政庁に届け出た。この場合、届出をしたことを相手方に伝えてもよい。

3・・・ 誤り

宅建業者が疑わしい取引の届出をしようとするときや、届出をしたときは、そのことを、届出の対象になった顧客やその関係者に漏らしてはならないとされています(犯罪収益移転防止法8条3項)。

たとえば、宅建業者Aが買主に「あなたのことを行政庁に届け出ましたよ」と伝えてしまうと、その買主はお金を別の場所に移したり、証拠を隠したりしてしまうかもしれません。そうなると、せっかく届出をしても、犯罪のお金の流れを追いかけることができなくなってしまいます。

この肢のように、買主が書類に自分の名前を書くのを嫌がる場合は、本人かどうか疑わしく、届出をすること自体は適切です。しかし、届出をしたことを相手方に伝えてもよい、というのは誤りです。


4.Aは、宅地の売買を行うに際して、当該売買契約の相手方である買主が、決済方法について現金での取引に執拗にこだわる姿勢を示していたことにより、資金が犯罪による収益である疑いがあると判断したときは、売買契約締結後であっても、速やかに、所定の事項を行政庁に届け出る義務が発生する。

4・・・ 正しい

宅建業者は、宅地建物の売買などの特定業務で受け取った財産が、犯罪による収益である疑いがあると認められる場合には、速やかに、所定の事項を行政庁に届け出なければなりません(犯罪収益移転防止法8条1項)。

この届出は、契約を結ぶ前に限られるものではありません。契約を結んだ後であっても、疑いがあると判断したときは、速やかに届け出る義務があります。取引が終わった後に、あれはおかしかったと気がつくこともあるからです。

この肢のように、買主が、現金での支払いにしつこくこだわっている場合は、銀行の記録に残らないようにしたいのではないか、と考えられます。このようなときは、お金の出どころが疑わしいので、売買契約の締結後であっても、速やかに行政庁に届け出なければなりません。


令和8年(2026年):宅建試験・過去問

問1
所有者不明土地・管理不全土地
問2
賃貸借
問3
共有
問4
相続(法定相続分)
問5
契約の終了
問6
売買契約・賃貸借契約
問7
代理
問8
売買契約
問9
法定地上権
問10
契約総合
問11
借地権
問12
建物賃貸借
問13
区分所有法
問14
不動産登記法
問15
都市計画法
問16
都市計画法・開発許可
問17
建築基準法
問18
建築基準法
問19
盛土規制法
問20
土地区画整理法
問21
農地法
問22
国土利用計画法
問23
贈与税(住宅取得等資金の非課税特例)
問24
不動産取得税
問25
地価公示法
問26
広告
問27
監督処分・罰則
問28
宅建士
問29
媒介契約
問30
営業保証金
問31
宅地・宅建業の定義
問32
犯罪収益移転防止法
問33
専任の宅建士
問34
重要事項説明・35条書面
問35
報酬計算(売買)
問36
重要事項説明
問37
報酬計算(貸借)
問38
37条書面
問39
業務上の規制
問40
業務上の規制
問41
届出
問42
クーリングオフ
問43
重要事項説明
問44
案内所等の規制
問45
住宅瑕疵担保履行法
問46
住宅金融支援機構
問47
不当景品類及び不当表示防止法
問48
統計
問49
土地
問50
建物

宅建通信に関する相談はこちら