所有者の所在を知ることができない土地及び所有者による管理が不適当である土地に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。
1.所有者の所在を知ることができない土地が存在する場合、公益性の観点から、誰であっても、裁判所に対して、所有者不明土地管理命令を請求することができる。
2.相続によって共有となった土地の共有者の中に、他の共有者が所在を知ることができない共有者がいる場合、相続開始の時から10年を経過していなければ、所有者不明土地管理命令の請求がなされても、裁判所は所有者不明土地管理命令を発することはできない。
3.所有者の所在を知ることができない土地について、裁判所が所有者不明土地管理命令によって選任した所有者不明土地管理人は、裁判所の許可を得なくても、保存行為や、当該土地の性質を変えない範囲内においてその利用又は改良を目的とする行為を行うことができる。
4.所有者による管理が不適当である土地について、裁判所が管理不全土地管理命令によって選任した管理不全土地管理人は、所有者の同意がなくても、裁判所の許可を得て、当該土地を処分することができる。
1・・・ 誤り
「所有者不明土地管理命令」とは、持ち主が分からない土地や持ち主がどこにいるか分からない土地は荒れて周りが困るので、裁判所がそのような土地の「管理係」を選ぶことを言います。
この命令を裁判所に請求できるのは「利害関係人」だけです(民法264条の2第1項)。利害関係人とは、その土地のことで実際に困っている人や、その土地と関係がある人のことを言います。たとえば、草や木がはみ出してきて困っている隣の土地の持ち主や、その土地を買いたい人、その土地を使って道路をつくりたい国や市町村などです。
まったく関係のない人まで請求できてしまうと、他人の土地に好き勝手に口出しできることになってしまいます。ですので、「誰であっても請求できる」というのは誤りです。
2・・・ 誤り
「共有」とは、1つの土地を何人かでいっしょに持っている状態のことを言います。たとえば、お父さんが亡くなって子ども3人が土地を相続すると、その土地は3人の共有になります。そして、1人ひとりが持っている権利の割合(3分の1ずつなど)のことを「持分」と言います。
兄弟3人で共有している土地で、そのうち1人がどこにいるか分からない場合、裁判所は、その行方不明の人の持分について所有者不明土地管理命令を出すことができます(民法264条の2第1項)。このとき、相続が始まってから10年たっているかどうかは関係ありません。10年たっていなくても命令を出すことができます。
「相続開始から10年」というルールが出てくるのは、行方不明の共有者の持分を、ほかの共有者が裁判所の手続きで取得したり、第三者に譲渡したりする制度のほうです(民法262条の2第3項、262条の3第2項)。相続した土地は、相続人どうしで誰が何をもらうかを話し合う(遺産分割)機会を守る必要があるので、10年間は待つことになっています。
この肢は、この2つの制度を混ぜたひっかけになっています。
3・・・ 正しい
「所有者不明土地管理人」とは、所有者不明土地管理命令によって裁判所が選んだ、その土地の「管理係」の人のことを言います。弁護士や司法書士などの専門家が選ばれることが多いです。管理人が選ばれると、その土地を管理したり処分したりする権限は管理人だけが持つことになります(民法264条の3第1項)。
管理人は、①保存行為と、②土地の性質を変えない範囲内での利用・改良行為であれば、裁判所の許可を得なくても行うことができます(民法264条の3第2項)。
①の保存行為とは、土地の今の状態を守るための行為のことです。たとえば、伸びた草を刈ったり、捨てられたゴミを片づけたり、ゴミを捨てられないように柵を立てたり、崩れそうな塀を補修したりすることです。
②の土地の性質を変えない範囲内での利用・改良行為とは、土地の形や種類を変えずに、土地を使ったり使いやすくしたりする行為のことです。たとえば、空き地を資材置き場として短い期間だけ人に貸したり、でこぼこの地面を平らにならしたりすることです。
これに対して、土地を売ったり、土地の上に建物を建てたり、畑を造成して宅地に変えたりするような、①②をこえる行為をするときは、裁判所の許可が必要になります。
4・・・ 誤り
「管理不全土地管理命令」とは、持ち主は分かっているのに、その持ち主がきちんと管理しないため周りに迷惑や危険が出ている土地について、裁判所がその土地の「管理係」を選ぶことを言います(民法264条の9)。たとえば、がけが崩れそうなのに放置されていたり、ゴミが山積みになって悪臭がしていたりする土地です。そして、ここで選ばれた人のことを「管理不全土地管理人」と言います。
管理不全土地管理人が土地を売るなどの処分をするには、裁判所の許可が必要です。さらに、裁判所がその許可を出すには、所有者の同意が必要とされています(民法264条の10第2項・第3項)。ですので、「所有者の同意がなくても処分できる」というのは誤りです。
なぜ所有者の同意が必要かというと、管理不全土地の場合は持ち主がちゃんといて、連絡も取れるからです。持ち主がいるのに勝手に土地を売られてしまったら困りますよね。
一方、所有者不明土地管理人の場合は、持ち主が誰なのか、どこにいるのかが分からないので、同意を取ることができません。そのため、所有者不明土地管理人は裁判所の許可だけで土地を処分することができます。この違いはよく出題されるので、しっかり押さえておきましょう。
令和8年(2026年):宅建試験・過去問
- 問1
- 所有者不明土地・管理不全土地
- 問2
- 賃貸借
- 問3
- 共有
- 問4
- 相続(法定相続分)
- 問5
- 契約の終了
- 問6
- 売買契約・賃貸借契約
- 問7
- 代理
- 問8
- 売買契約
- 問9
- 法定地上権
- 問10
- 契約総合
- 問11
- 借地権
- 問12
- 建物賃貸借
- 問13
- 区分所有法
- 問14
- 不動産登記法
- 問15
- 都市計画法
- 問16
- 都市計画法・開発許可
- 問17
- 建築基準法
- 問18
- 建築基準法
- 問19
- 盛土規制法
- 問20
- 土地区画整理法
- 問21
- 農地法
- 問22
- 国土利用計画法
- 問23
- 贈与税(住宅取得等資金の非課税特例)
- 問24
- 不動産取得税
- 問25
- 地価公示法
- 問26
- 広告
- 問27
- 監督処分・罰則
- 問28
- 宅建士
- 問29
- 媒介契約
- 問30
- 営業保証金
- 問31
- 宅地・宅建業の定義
- 問32
- 犯罪収益移転防止法
- 問33
- 専任の宅建士
- 問34
- 重要事項説明・35条書面
- 問35
- 報酬計算(売買)
- 問36
- 重要事項説明
- 問37
- 報酬計算(貸借)
- 問38
- 37条書面
- 問39
- 業務上の規制
- 問40
- 業務上の規制
- 問41
- 届出
- 問42
- クーリングオフ
- 問43
- 重要事項説明
- 問44
- 案内所等の規制
- 問45
- 住宅瑕疵担保履行法
- 問46
- 住宅金融支援機構
- 問47
- 不当景品類及び不当表示防止法
- 問48
- 統計
- 問49
- 土地
- 問50
- 建物






