宅地建物取引業者ではないAが、宅地建物取引業者Bに対して、契約の解除の通知を発出したときに関する次の記述のうち、宅地建物取引業法(以下この問において「法」という。)の規定によれば、Bが法第37条の2の規定に基づくいわゆるクーリング・オフに応じなければならない場合はいくつあるか。
ア.Aは、自宅を売却するため買主Bと売買契約を締結したが、代金の支払いを受ける前に、翻意し、契約締結日から8日目に、クーリング・オフにより解除する旨の書面を発出し、その翌日Bに到達した。
イ.Aは、自らの申し出によって勤務先近隣の喫茶店でB所有の建物の買受けを申し込み、翌日Bの事務所に赴いてBが売主でAが買主となる売買契約を締結するとともにクーリング・オフについて告げる書面を交付され告げられたが、Aは代金の支払い前に、翻意し、契約締結日から8日目に、クーリング・オフにより解除する旨の書面を発出し、その翌日Bに到達した。
ウ.Aは、訪問販売で来訪したBの営業担当者を自宅に入れ、紹介された建物の買受けを申し込んだところ、「法第37条の規定に基づく書面及びクーリング・オフについて告げる書面は、電子データで提供したい。」旨のBからの申し出を受け承諾し、Bが売主としてAが買主となる売買契約を締結するとともに当該電子データを受領したが、Aは代金の支払い前に、翻意し、契約締結日から10日目に、クーリング・オフにより解除する旨の書面を発出し、その翌日Bに到達した。
エ.Aは、B所有の建物を内覧し、その場で買受けを申し込み、翌日Bの事務所においてBが売主でAが買主となる売買契約を締結するとともにクーリング・オフについて告げる書面を交付され告げられた。また、同日中にAからBに代金が全額支払われたため、Bも直ちに所有権移転登記手続を行い、契約締結から5日目に登記完了証を受領した。しかし、Aは建物の引渡しを受ける前に、翻意し、契約締結日から8日目に、クーリング・オフにより解除する旨の書面を発出し、その翌日Bに到達した。
1.一つ
2.二つ
3.三つ
4.四つ
ア・・・ 応じる必要はない
「クーリング・オフ」とは、事務所以外の落ち着かない場所で買受けの申込みや契約をした買主が、一定の期間内であれば、理由を問わず、書面で申込みの撤回や契約の解除ができる制度のことを言います(宅建業法37条の2)。
この制度が使えるのは、宅建業者が自ら売主となり、宅建業者ではない人が買主となる場合だけです(宅建業法78条2項)。プロである宅建業者に売り込まれて、よく考えないまま買ってしまった素人の買主を守るための制度だからです。
この肢では、宅建業者ではないAが自宅を売る「売主」で、宅建業者Bは「買主」です。立場が逆になっているので、そもそもクーリング・オフの対象になりません。ですので、契約から8日目に書面を出していても、Bはクーリング・オフに応じる必要はありません。
売主が誰で買主が誰なのかを最初に確認するクセをつけておきましょう。
イ・・・ 応じなければならない
クーリング・オフができるかどうかは、契約をした場所ではなく、「買受けの申込みをした場所」で判断します。申込みの場所と契約の場所が違うときは、申込みの場所が基準になります(宅建業法37条の2第1項)。
クーリング・オフができない「事務所等」には、宅建業者の事務所や、契約の申込みを受ける案内所などのほか、買主が自分から申し出た場合の「買主の自宅又は勤務場所」が含まれます(宅建業法施行規則16条の5)。たとえば、「会社まで来てください」と買主が自分から頼んだ場合は、勤務先で申し込んでもクーリング・オフはできません。
しかし、この肢で申込みをしたのは勤務先の「近く」の喫茶店です。喫茶店は、買主が自分から申し出た場所であっても事務所等には当たりません。ですので、翌日にBの事務所で契約をしていても、クーリング・オフはできます。
また、クーリング・オフについて書面で告げられた日から起算して8日を経過するとできなくなりますが、告げられた日を1日目として数えるので、8日目に書面を発すればまだ間に合います。クーリング・オフは書面を「発した時」に効力が生じるので、到着が翌日でもかまいません(宅建業法37条の2第2項)。代金もまだ支払っていないので、Bはクーリング・オフに応じなければなりません。
ウ・・・ 応じなければならない
「訪問販売」とは、業者の営業担当者が客の自宅などを訪ねて行って、商品を売り込むことを言います。買主の自宅は、買主が自分から「自宅で説明を聞きたい」と申し出た場合に限って事務所等に当たり、クーリング・オフができなくなります(宅建業法施行規則16条の5)。この肢では、Bの営業担当者が訪問販売で来ているので、Aの自宅は事務所等に当たらず、クーリング・オフができる場所です。
次に期間です。クーリング・オフは、宅建業者から「クーリング・オフができること、そのやり方」を書面で告げられた日から起算して8日を経過するとできなくなります(宅建業法37条の2第1項1号)。
重要事項説明書(35条書面)や契約書面(37条書面)は、相手方の承諾があれば電子データで提供することができます。しかし、クーリング・オフについて告げる書面は、電子データで提供することは認められておらず、紙の書面を交付しなければなりません(宅建業法施行規則16条の6)。たとえ買主が承諾していても同じです。
ですので、この肢では、きちんとした告知がされていないことになり、8日間のカウントが始まっていません。10日目であってもクーリング・オフはでき、代金も支払っていないので、Bは応じなければなりません。35条・37条書面との違いはよく出題されるので、しっかり押さえておきましょう。
エ・・・ 応じなければならない
この肢でAが買受けを申し込んだのは、B所有の建物を内覧したその場所、つまり物件の現地です。案内所などが設けられていない物件の現地は事務所等に当たらないので、翌日Bの事務所で契約をしていても、クーリング・オフはできます(宅建業法37条の2第1項)。
クーリング・オフができなくなるのは、①書面で告げられた日から起算して8日を経過したとき、②買主が宅地・建物の「引渡しを受け」、かつ、「代金の全部を支払った」ときです(宅建業法37条の2第1項2号)。②は、引渡しと代金全額の支払いの「両方」がそろってはじめてクーリング・オフができなくなるという点がポイントです。
この肢では、代金は全額支払っていますが、建物の引渡しはまだ受けていません。所有権移転登記が済んで登記完了証を受け取っていても、登記は引渡しとは別のものです。ですので、②には当たりません。
また、告げられた日から8日目に書面を発しているので、①の期間内でもあります。したがって、Bはクーリング・オフに応じなければなりません。
以上から、応じなければならないのはイ、ウ、エの三つです。
令和8年(2026年):宅建試験・過去問
- 問1
- 所有者不明土地・管理不全土地
- 問2
- 賃貸借
- 問3
- 共有
- 問4
- 相続(法定相続分)
- 問5
- 契約の終了
- 問6
- 売買契約・賃貸借契約
- 問7
- 代理
- 問8
- 売買契約
- 問9
- 法定地上権
- 問10
- 契約総合
- 問11
- 借地権
- 問12
- 建物賃貸借
- 問13
- 区分所有法
- 問14
- 不動産登記法
- 問15
- 都市計画法
- 問16
- 都市計画法・開発許可
- 問17
- 建築基準法
- 問18
- 建築基準法
- 問19
- 盛土規制法
- 問20
- 土地区画整理法
- 問21
- 農地法
- 問22
- 国土利用計画法
- 問23
- 贈与税(住宅取得等資金の非課税特例)
- 問24
- 不動産取得税
- 問25
- 地価公示法
- 問26
- 広告
- 問27
- 監督処分・罰則
- 問28
- 宅建士
- 問29
- 媒介契約
- 問30
- 営業保証金
- 問31
- 宅地・宅建業の定義
- 問32
- 犯罪収益移転防止法
- 問33
- 専任の宅建士
- 問34
- 重要事項説明・35条書面
- 問35
- 報酬計算(売買)
- 問36
- 重要事項説明
- 問37
- 報酬計算(貸借)
- 問38
- 37条書面
- 問39
- 業務上の規制
- 問40
- 業務上の規制
- 問41
- 届出
- 問42
- クーリングオフ
- 問43
- 重要事項説明
- 問44
- 案内所等の規制
- 問45
- 住宅瑕疵担保履行法
- 問46
- 住宅金融支援機構
- 問47
- 不当景品類及び不当表示防止法
- 問48
- 統計
- 問49
- 土地
- 問50
- 建物






