(解説について改正民法適用済み)
不法行為に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
1.放火によって家屋が滅失し、火災保険契約の被保険者である家屋所有者が当該保険契約に基づく保険金請求権を取得した場合、当該家屋所有者は、加害者に対する損害賠償請求金額からこの保険金額を、いわゆる損益相殺として控除しなければならない。
2.被害者は、不法行為によって損害を受けると同時に、同一の原因によって損害と同質性のある利益を既に受けた場合でも、その額を加害者の賠償すべき損害額から控除されることはない。
3.第三者が債務者を教唆して、その債務の全部又は一部の履行を不能にさせたとしても、当該第三者が当該債務の債権者に対して、不法行為責任を負うことはない。
4.名誉を違法に侵害された者は、損害賠償又は名誉回復のための処分を求めることができるほか、人格権としての名誉権に基づき、加害者に対し侵害行為の差止めを求めることができる。
【答え:4】
1・・・誤り
損益相殺とは、不法行為で損害を受けた被害者が、その不法行為によって損害以上の利益を受けた場合に、賠償額からその利益分を控除することをいいます。 つまり、不法行為によって、損害と利益を同時に受けている場合に損益相殺されます。 そして、被害者の受け取る保険金については、損益相殺の対象となる「利益」には含まれません。 よって、「保険金額を損益相殺として控除しなければならない」という記述は誤りです。
2・・・誤り
選択肢1の解説の通り、損益相殺とは、不法行為で損害を受けた被害者が、その不法行為によって損害以上の利益を受けた場合に、賠償額からその利益分を控除することをいいます。 つまり、本問のように「被害者が、不法行為によって損害を受ける」と同時に、「同一の原因によって損害と同質性のある利益を既に受けた」場合、損害額から利益の額を差し引かれます。 例えば、1000万円の損害があり、同時に200万円の利益があれば、800万円しか賠償されないことになります。
3・・・誤り
「教唆(きょうさ)」とは、「そそのかす」という意味です。 第三者が債務者をそそのかして、結果として、債務の履行ができなくなった場合、そそのかした第三者は、当該債務の債権者に対して、不法行為責任を負います。
4・・・正しい
本問は正しい記述です。 例えば、名誉を違法に侵害された者は、それに対して、①損害賠償や②名誉回復のための処分(新聞紙に謝罪広告を掲載してもらうこと)を求めることができます。
さらに、人格権としての名誉権に基づき、実際に行われている侵害行為(名誉毀損の行為)を止めてもらうよう請求すること(差止め請求)も可能です。
令和元年(平成31年)度(2019年)宅建試験・過去問
- 問1
- 対抗関係
- 問2
- 意思表示
- 問3
- 契約不適合責任
- 問4
- 不法行為
- 問5
- 代理(判決文)
- 問6
- 相続
- 問7
- 弁済
- 問8
- 請負
- 問9
- 時効
- 問10
- 抵当権
- 問11
- 借地権
- 問12
- 借家権
- 問13
- 区分所有法
- 問14
- 不動産登記法
- 問15
- 都市計画法
- 問16
- 都市計画法(開発許可)
- 問17
- 建築基準法
- 問18
- 建築基準法
- 問19
- 宅地造成等規制法
- 問20
- 土地区画整理法
- 問21
- 農地法
- 問22
- 国土利用計画法
- 問23
- 所得税
- 問24
- 固定資産税
- 問25
- 地価公示法
- 問26
- 免許
- 問27
- 8種制限
- 問28
- 重要事項説明書(35条書面)
- 問29
- 監督処分・罰則
- 問30
- 広告規制
- 問31
- 媒介契約
- 問32
- 報酬計算(空き家等の特例)
- 問33
- 保証協会
- 問34
- 37条書面
- 問35
- 業務上の規制
- 問36
- 37条書面
- 問37
- 手付金等の保全措置
- 問38
- クーリング・オフ
- 問39
- 重要事項説明書(35条書面)
- 問40
- 業務上の規制
- 問41
- 重要事項説明書(35条書面)
- 問42
- 宅地の定義
- 問43
- 免許の基準
- 問44
- 宅建士
- 問45
- 住宅瑕疵担保履行法
- 問46
- 住宅金融支援機構
- 問47
- 不当景品類及び不当表示防止法
- 問48
- 統計(省略)
- 問49
- 土地
- 問50
- 建物