不動産業(宅建業)を営むためには、必ず宅建業の免許を取得する必要があります。この免許制度の目的は、消費者を保護し、不動産取引の信頼性を高めることにあります。
免許の必要性
宅建業法第3条第1項
宅地建物取引業を営もうとする者は、二以上の都道府県の区域内に事務所を設置してその事業を営もうとする場合にあつては国土交通大臣の、一の都道府県の区域内にのみ事務所を設置してその事業を営もうとする場合にあつては当該事務所の所在地を管轄する都道府県知事の免許を受けなければならない。
宅建業を営むには、国土交通大臣または都道府県知事の免許が必要です。免許を取得する必要があるかどうかは、事務所の設置状況によります。
- 2つ以上の都道府県に事務所がある場合 → 国土交通大臣の免許
- 1つの都道府県内のみに事務所がある場合 → 都道府県知事の免許
例えば、東京都と神奈川県に事務所を持つ不動産会社は、国土交通大臣の免許が必要です。一方、東京都内のみに事務所がある場合は、東京都知事の免許で営業できます。
免許の有効期間と更新
宅建業法第3条第2項〜第5項
- 前項の免許の有効期間は、五年とする。
- 有効期間の満了後引き続き宅地建物取引業を営もうとする者は、免許の更新を受けなければならない。
- 更新申請がなされ、その処分が有効期間満了日までにされない場合は、従前の免許は処分がなされるまでの間も有効とする。
- 更新がなされた場合、有効期間は従前の免許の満了日の翌日から起算する。
宅建業法施行規則第3条
法第三条第三項の規定により同項の免許の更新を受けようとする者は、免許の有効期間満了の日の九十日前から三十日前までの間に免許申請書を提出しなければならない。
宅建業の免許は5年間の有効期限があります。引き続き不動産業を営む場合は、、免許の有効期間満了の日の90日前から30日前までの間に免許申請書を提出して、更新手続きをする必要があります。
もし、更新申請をしたのに処分が間に合わなかった場合でも、免許は一時的に有効となります。つまり、更新手続きが完了するまでの間は、宅建業を継続できます。
更新された場合、新しい免許の有効期間は「従前の免許の有効期間満了日から5年間」となります。
具体例
- 宅建業者A(東京都知事免許)は、2020年4月1日に東京都知事の宅建業免許を取得しました。有効期限は 2025年3月31日 です。
この場合、Aは有効期限の 90日前(2025年1月1日)から30日前(2025年3月1日)までの間に更新申請 を行う必要があります。 - もし、有効期限の 2025年3月31日までに新しい免許が交付されない場合、新しい免許が交付されるまでは、昔の免許(有効期限が 2025年3月31日の免許)が引き続き有効となります。そして、新しい免許の交付が交付されたら、新しい免許は、2025年4月1日から5年かん有効となります。
免許取得に必要な費用
免許を受けようとする者は、登録免許税法の定めるところにより登録免許税を納めなければならない。
また、免許の更新時には政令の定めるところにより手数料を納めなければならない。
免許手数料の額は33,000円とする。
免許手数料は収入印紙をもって納付しなければならない。
宅建業の免許を取得するには、登録免許税と手数料を支払う必要があります。免許の更新時にも手数料が必要になります。
- 知事免許:33,000円
- 大臣免許:90,000円
具体例
東京都で新たに不動産会社を立ち上げる場合、都道府県知事の免許を申請し、手数料33,000円を支払います。5年後の更新時にも同額の手数料が必要になります。
「事務所」の定義
宅建業法施行令第1条の2
法第三条第一項の事務所は、次に掲げるものとする。
- 本店または支店(商人以外は主たる事務所または従たる事務所)
- 継続的に業務を行うことができる施設を有し、契約を締結する権限を有する使用人を置くもの
「事務所」とは、宅建業を営む上での営業拠点のことで、次の2種類に分けられます。
- 本店・支店(または主たる事務所・従たる事務所)
※ 宅地建物取引業を営まない支店は、「事務所」に該当しない - 継続的に業務を行うことができる場所で、契約を締結できる使用人がいる施設
具体例
- A社は東京に本店、大阪に支店があります。支店では、宅建業を営むものとします。この場合、東京と大阪の両方が「事務所」に該当します。
- B社は東京に本店があり、神奈川には営業拠点を持っているが、契約締結権限を持つ社員がいない場合、神奈川の営業拠点は「事務所」に該当しません。
免許の条件
宅建業法第三条の二
- 国土交通大臣又は都道府県知事は、前条第一項の免許(同条第三項の免許の更新を含む。第二十五条第六項を除き、以下同じ。)に条件を付し、及びこれを変更することができる。
- 前項の条件は、宅地建物取引業の適正な運営並びに宅地及び建物の取引の公正を確保するため必要な最小限度のものに限り、かつ、当該免許を受ける者に不当な義務を課することとならないものでなければならない。
宅建業を営むには、国土交通大臣または都道府県知事から免許を受ける必要があります。この免許には、特定の条件が付されることがあります(宅建業法第3条の2)。
免許の条件の目的
免許に条件を付す目的は、
- 宅地建物取引業の適正な運営を確保すること
- 宅地および建物の取引の公正を守ること
にあります。そのため、条件は必要最小限にとどめるべきであり、不当に免許を受ける者の権利を制限するような義務を課すことは認められません。
免許に付される具体的な条件の例
実際にどのような条件が付される可能性があるのか、具体例を挙げて説明します。
例1:暴力団との関係があった場合の条件
ケース:ある宅建業者の役員が過去に暴力団員であった、または暴力団の支配下に入っていたことが判明した場合。
付される条件:「暴力団の構成員を役員等としないこと」または「暴力団の実質的な支配下に入らないこと」
解説:
宅建業は、多くの人が関わる不動産取引を扱うため、業界の健全性が求められます。過去に暴力団と関わりがあった役員がいる企業が免許を更新する場合、取引の公正性を確保するため、暴力団と一切の関係を断つような条件が付されることがあります。
例2:取引実績がない場合の条件
ケース:宅建業者が免許の更新を申請したが、過去5年間の宅地建物取引の実績がない場合。
付される条件:「免許直後1年の事業年度における宅地建物取引業の取引の状況に関する報告書を当該事業年度の終了後3カ月以内に提出すること」
解説:
宅建業の免許は、単に所有することが目的ではなく、実際に事業を行うためのものです。したがって、過去5年間に取引実績がない事業者に対しては、今後の事業活動が適正に行われるかどうかを確認するため、一定期間の取引状況を報告する義務が課されることがあります。
免許条件の意義と影響
宅建業者にとって、免許に付される条件は事業運営に直接影響を与えるものです。特に、暴力団との関係遮断や取引実績の証明といった条件は、業界の健全性を維持するために不可欠です。
例えば、不動産取引において暴力団が関与することで、一般の消費者が不利益を被る可能性があります。そのため、宅建業の免許更新時にこのような条件が付されるのは、公正な市場環境を守るための措置といえます。
また、取引実績がない業者については、免許が形骸化しないように、事業活動の有無を確認する仕組みが必要になります。そのための条件として、取引状況の報告義務が設けられるのです。
