宅建業法第13条(名義貸しの禁止)
- 宅地建物取引業者は、自己の名義をもつて、他人に宅地建物取引業を営ませてはならない。
- 宅地建物取引業者は、自己の名義をもつて、他人に、宅地建物取引業を営む旨の表示をさせ、又は宅地建物取引業を営む目的をもつてする広告をさせてはならない。
宅建業法第13条1項の分かりやすい解説
この条文は「名義貸しの禁止」について定めています。宅地建物取引業(以下、「宅建業」)を営むためには、国土交通大臣または都道府県知事の免許を受ける必要があります。しかし、免許を持つ業者が自分の名義を使って、免許のない人に宅建業を行わせることを禁じているのが、この規定のポイントです。
名義貸しが禁止される理由は、宅建業が消費者に大きな影響を及ぼす業務であり、適切な資格や免許を持たない者が取引を行うと、トラブルが発生するリスクが高くなるからです。
具体例:違法な名義貸しの例
Aさんは宅建業の免許を持っていますが、実際に営業するのが面倒になり、知り合いのBさんに「俺の名義で不動産売買をしてもいいよ」と許可しました。Bさんは免許を持っていませんが、Aさんの会社名義で不動産取引を始めました。
この場合、Aさんは「名義貸し」に該当し、法律違反となります。また、Bさんは宅建業の免許がないにもかかわらず営業しているため、無免許営業の違反にもなります。
宅建業法第13条2項の分かりやすい解説
第2項は、宅建業者が自分の名義を使って、無免許の第三者に「宅建業を行っているような表示をさせること」や「宅建業を営む目的の広告を出させること」も禁止する規定です。
具体例:広告を出す行為も違法
C社は宅建業の免許を持っていますが、友人のDさん(無免許)に「俺の名義で広告を出してもいいよ」と許可し、Dさんが不動産の仲介広告を出しました。
この場合も、C社は法律違反となり、名義貸しに該当します。さらに、Dさんが実際に取引を行えば、無免許営業として処罰の対象になります。
1項と2項の違い
項目 | 第1項 | 第2項 |
---|---|---|
禁止されている行為 | 宅建業者の名義を使って、実際に無免許者が宅建業を営むこと | 宅建業者の名義を使って、無免許者が「宅建業を行っているように表示」したり「広告を出したりすること」 |
違反例 | 無免許者が名義を借りて売買・仲介業務を行う | 無免許者が名義を借りて広告を出す |
なぜ禁止されるのか | 無免許者の違法営業を防ぐため | 消費者に誤解を与え、トラブルの原因となるため |
名義貸しが発生する理由
- 免許取得の手間を省きたい
宅建業の免許を取得するには、申請手続きや財産的要件の確認など、一定のハードルがあります。そのため、無免許の個人や業者が、既存の免許業者の名義を借りて営業しようとすることがあります。 - 営業の信頼性を得たい
免許を持たない業者が取引を行うと、消費者からの信用を得るのが難しいため、名義貸しを利用して信用を得ようとするケースがあります。 - 行政の監視を逃れたい
無免許業者が直接営業すると、行政の監視を受ける可能性が高まります。そのため、名義を借りることで、監視の目を逃れようとするケースもあります。
名義貸しの監督処分・罰則
違反内容 | 1項違反(実際に営業を行わせる) | 2項違反(広告を出すことを許可する) |
---|---|---|
行政処分 | 免許取消または業務停止 | 業務停止または指示処分 |
刑事罰 | 3年以下の懲役または300万円以下の罰金(またはその両方) | 6か月以下の懲役または100万円以下の罰金 |
まとめ
- 宅建業者が自分の名義を使って、無免許の人に宅建業を営ませることは名義貸しとして禁止されている。
- 免許を持たない人が宅建業を行うと、消費者トラブルが発生しやすいため、この規定がある。
- 名義貸しには、免許取消、業務停止処分、刑事罰(3年以下の懲役または300万円以下の罰金(またはその両方))などの厳しいペナルティがある。
- 広告の名義貸しも禁止されており、広告を出すだけでも法律違反になり、刑事罰(6か月以下の懲役または100万円以下の罰金)も受ける。
この規定をしっかり理解しておけば、宅建業法の試験対策だけでなく、実務でも重要な知識となるでしょう。
