宅建業法5条の欠格事由を徹底解説|免許が下りないケースと具体例

  • LINEで送る
令和7年度の宅建試験対策の個別指導

宅地建物取引業(以下、宅建業)を営むためには、国土交通大臣または都道府県知事の免許が必要です。しかし、誰でも免許を取得できるわけではなく、法律で定められた基準を満たしていないと免許を受けることはできません。本条文では、どのような場合に免許が下りないのかを具体的に定めています。ここでは、それぞれの基準を分かりやすく解説し、具体例を交えながら説明します。

破産者で復権していない者(5条第1号)

「破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者」とは、簡単に言えば「破産して経済的に立ち直っていない人」のことです。宅建業では大きな金額の取引が発生するため、破産して信用が回復していない人に免許を与えると、取引相手にリスクが生じる可能性があるため、このような制限が設けられています。

ちなみに、「復権」とは、破産手続きが終了した後に、破産者が一定の制限から解放され、法律上の地位(宅建士になる権利)を回復することを指します。宅地建物取引士(宅建士)は、破産者で復権を得ていない場合資格登録ができません(宅建業法第18条)。しかし、復権すれば登録が可能になります。

具体例

田中さんは2年前に自己破産し、まだ復権(裁判所による資格回復)を得ていません。この場合、田中さんは宅建業の免許を取得することができません。

免許取消から5年経過していない者

免許取消から5年が経過していない者(5条第2号)

過去に宅建業法に違反し、免許を取り消された者は、取消しの日から5年間は新たに免許を取得できません。また、法人が免許を取り消された場合、その法人の役員だった者(※1)も同様に5年間は免許を取得できません。

※1 役員(業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者をいい、相談役、顧問、その他いかなる名称を有する者であるかを問わず、法人に対し業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者と同等以上の支配力を有するものと認められる者を含みます。

では、「同等以上の支配力」とは?

同等以上の支配力」の認定においては、名刺、案内状等に会長、相談役等の役職名を使用しているか否かが一つの基準となります。

具体例
佐藤さんは、不正な取引を行ったため、宅建業の免許を取り消されました。取消しからまだ3年しか経過していないため、免許を再取得することはできません。

免許取消処分の公示後に自主的に廃業した者(第3号)

免許取消処分の公示がされた後に、事業を廃止する届出を行った場合も、届出の日から5年間は免許を取得できません。ただし、事業の廃止に「相当の理由」がある場合は例外となり、免許欠格ではありません(それを理由に免許を受けることができない、とはなりません)。

具体例
高橋さんは、免許取消処分の聴聞が公示された後、事業を自主的に廃止しました。しかし、処分逃れのための廃業と見なされるため、5年間は免許を取得できません。

※「相当の理由」とは、事業の廃止が正当な事情によるものであり、免許取消処分の回避目的ではないと認められるケースです。例えば、以下のような事情が考えられます。

  1. 代表者の死亡や重病
    代表取締役や個人事業主が死亡した、または重病により事業継続が不可能になった場合。
  2. 天災や不可抗力による廃業
    地震・津波・火災・洪水などの自然災害により、事業の継続が困難になった場合。
  3. 経済的な事情
    取引先の倒産や経営不振により、やむを得ず事業を廃止せざるを得なかった場合。
    ただし、単なる赤字経営ではなく、経営破綻が不可避であったと合理的に判断できる場合。

取消処分を受けた法人の役員だった者(5条第4号)

免許取消処分を受けた法人が合併消滅・解散した場合、合併消滅など公示の日前60日以内その法人の役員だった者も、合併消滅日・解散日から5年間は免許を取得できません。

ただし、合併消滅・解散に「相当の理由」がある場合は例外となり、免許欠格ではありません(それを理由に免許を受けることができない、とはなりません)。

具体例

田村さんは、免許取消を受けた法人の取締役でした。法人が解散した後も、5年間は宅建業の免許を取得することができません。

※ 「相当の理由」とは、免許取消処分を受けた法人がやむを得ない事情で合併消滅・解散した場合、当該法人の役員だった者が免許欠格にならない場合を指します。例えば、以下のような事情が考えられます。

→会社の合併が経営合理化のためであり、免許取消処分とは関係がない場合

  • 免許取消処分を受けた法人が、単なる事業戦略として別の法人と合併した
  • 事業譲渡により業務を別法人に引き継ぎ、法人としての役割を終えた

禁錮以上の刑を受けた者(5条第5号)

刑事罰として「禁錮以上の刑」を受けた場合、その刑の執行を終えてから5年間は免許を取得できません。「禁錮以上の刑」とは、懲役刑や禁錮刑(労役なしの拘束刑)を指します。この「刑の執行が終わってから」とは、「刑務所で服役し、刑期を満了した(出所した)日」を指します。

注意点

執行猶予付きの判決を受けた場合、執行猶予期間中は免許欠格で、執行猶予期間が満了したら、直ちに免許を受けることができます。
具体例
山本さんは、3年前に業務上過失致死で禁錮1年の判決を受け、服役しました。現在、刑の執行終了から3年しか経っていないため、宅建業の免許を取得できません。

特定の犯罪で罰金刑を受けた者(5条第6号)

宅建業に関係のある以下の犯罪で罰金刑を受けた場合、刑の執行が終わってから5年間は免許を取得できません。この「刑の執行が終わってから」とは、罰金を完納(支払い完了)した日を起点とします。
刑法

  • 暴行罪(第204条)
  • 傷害罪(第206条)
  • 脅迫罪(第222条)
  • 強要罪(第223条)
  • 詐欺罪(第246条)
  • 横領罪(第252条)
  • 背任罪(第247条)

暴力行為等処罰法

  • 集団的暴行等の罪(第1条)
  • 凶器準備集合罪(第1条の2)
  • 指揮者責任による罪(第1条の3)
具体例
鈴木さんは、4年前に詐欺罪で罰金刑を受けました。まだ5年経過していないため、免許は取得できません。

暴力団関係者(第7号、第14号)

暴力団員や、暴力団を辞めて5年以内の人、または暴力団の支配を受けている企業は免許を取得できません。これは、宅建業が健全に運営されるために必要な規制です。

具体例
松本さんは2年前まで暴力団員でした。宅建業の免許を取得するには、あと3年間待つ必要があります。

まとめ

宅建業の免許を取得するためには、信用や適正な経営能力が求められます。過去の違法行為や破産歴、暴力団関係、心身の問題などがある場合は、免許が下りない仕組みになっています。これらの基準を理解し、適切に対策を講じることが重要です。

毎日3問、宅建試験の過去問の詳細解説を無料でお届けします!
  • LINEで送る

SNSでもご購読できます。

宅建通信に関する相談はこちら