宅建業法第33条の2:自己の所有に属しない宅地又は建物の売買契約締結の制限
宅地建物取引業者(以下、宅建業者)は、自己の所有でない宅地や建物について、売主として売買契約を締結してはいけない、というのが宅建業法第33条の2の基本ルールです。ただし、以下の条件に該当する場合には例外として契約が認められます。
- 宅建業者が、該当する宅地や建物を取得する契約をすでに結んでおり、その取得が確実な場合(施行令・施行規則に詳細な規定あり)。
- その売買が、宅建業法第41条第1項に規定される場合で、所定の措置(手付金等の保全措置)が取られている場合。
この条文の趣旨は、宅建業者が自己所有でない不動産を無責任に売却し、後で所有権の取得に失敗することで買主に損害を与えることを防ぐことにあります。
なぜこの規制があるのか?
例えば、ある宅建業者が所有権を持っていない土地を売買契約してしまったとします。買主は契約を信じて代金を支払い、計画を進めるかもしれません。しかし、業者がその土地を取得できなかった場合、買主は土地を得られず、場合によっては大きな損害を被ることになります。
このようなリスクを防ぐため、宅建業法第33条の2では、宅建業者が確実に取得できる見込みがない限り、自己所有でない土地や建物を売主として販売することを禁止しています。
例外となるケースの具体的な解説
(1) 宅建業者が取得契約を結んでいる場合
→ 宅建業者が既に売買契約を締結している場合、または取得が確実である場合は売主として販売可能
具体例
- 宅建業者Aが土地所有者Bと「この土地を来月購入する契約」を結んでいる。
- その契約が無条件で確定している(停止条件がない)。
- その場合、宅建業者Aは「この土地を買う予定が確実だから」として、第三者Cに対して売主として販売することができる。
- しかし、「条件付きの契約」はダメです。例えば、「この契約は、市の許可が下りたら成立する」 というような条件付き契約の場合、所有権取得が不確実なため、売主として契約することはできません。
(2) 公共事業に関わる特例
宅建業者が開発行為の一環として、国や地方自治体の公共施設用地を取り扱う場合、その開発行為が進んでいれば、所有権取得が確実とみなされ、売買契約が可能となります。
具体例
- 宅建業者が、都市計画に基づき開発許可を受けた大規模な住宅地開発を進めている。
- その開発区域の一部の土地は、公共施設(道路、公園など)として国や自治体が所有。
- 開発が進めば、最終的に宅建業者がその土地を取得することが確実。
- そのため、宅建業者は、その土地について事前に売主として販売できる。
- このようなケースは、都市計画法、新住宅市街地開発法、土地区画整理法などに基づく特例として規定されています。
(3) 土地区画整理事業や住宅供給事業に関連する場合
宅建業者が、土地区画整理事業や住宅供給事業に関連する場合、特定の条件を満たせば、自己所有でない宅地の売買契約を締結することが可能になります。
具体例
- 宅建業者が土地区画整理事業の一環として「保留地予定地」(事業完了後に取得できる土地)を持っている。
- その宅地について、将来的に確実に取得できることが認められる場合。
- この場合、宅建業者は売主として販売可能。
- このように、土地区画整理事業や住宅街区整備事業において、開発進捗によって取得が確実な場合には、例外的に売買契約が認められています。
(4) 所有権移転を前提とする契約
宅建業者が第三者(買主)に対して「所有権移転を前提とした契約」を締結している場合も例外となります。
具体例
- 宅建業者Aが土地所有者Bと「この土地を買う契約」をしている。
- その契約に基づき、買主Cに対して「Cに所有権を移転することを約束する契約」を結ぶ。
- このような場合、宅建業者Aは売主として契約を結んでもOK。
- ただし、ここでも「取得が確実であること」が前提になります。
まとめ
宅建業法第33条の2は、宅建業者が自己所有でない宅地・建物を売ることで発生するトラブルを防ぐために定められています。
基本ルール
- 自己所有でない宅地や建物は、売主として売買契約を結ぶことが禁止される。
- 例外として、「取得が確実な場合」や「特定の法律に基づく場合」などがある。
特に注意する点
- 「取得契約が成立している」ことが必須。
- 「条件付きの取得契約」では契約できない。
- 「都市計画法・土地区画整理法・新住宅市街地開発法」などに基づく開発行為の例外あり。
これらのルールを理解し、宅建試験の学習に活かしてください。
