【結論】宅建業法第29条とは、宅建業者が主たる事務所を移転した際に、営業保証金の供託先を変更する手続き(保管替え等)を定めた条文です。
供託方法が「金銭のみ」か「有価証券等を含む」かによって手続きが異なる点が、宅建試験では頻出の比較論点となっています。
宅建業法第29条の全体像|保管替え等の制度趣旨
営業保証金は消費者保護のために供託所へ預けるお金ですが、本店を移転すると最寄りの供託所が変わるケースがあります。このとき供託先を新しい最寄りの供託所へ切り替える仕組みが、宅建業法第29条に規定された「保管替え等」です。
制度の目的は、供託所と主たる事務所の地理的な対応関係を常に維持し、消費者がスムーズに還付請求できる状態を確保することにあります。
試験対策で押さえるべき比較ポイント
- 金銭のみで供託 → 現在の供託所へ「保管替え請求」(費用を予納)
- 有価証券等を含む供託 → 新供託所へ「新たに供託」し、旧供託所分を取り戻す(二重供託)
- いずれの場合も「遅滞なく」手続きを行う義務がある
この「金銭のみ=保管替え請求」「その他=二重供託」の違いは、宅建試験の四肢択一で選択肢の入れ替えとして問われやすいため、表で整理して正確に暗記しておくことが得点に直結します。
そもそも営業保証金とは、宅地建物取引業者(以下、「宅建業者」)が事業を行うために供託所へ預ける金銭のことです。これは、取引の相手方である消費者を保護するための制度で、宅建業者が万が一債務不履行を起こした場合、取引の相手方がこの保証金から損害の補填を受けることができます。
宅建業者は、主たる事務所(本社や本店)がある都道府県の供託所に営業保証金を供託しなければなりません。
営業保証金の保管替え
宅地建物取引業者は、その主たる事務所を移転したためその最寄りの供託所が変更した場合において、金銭のみをもつて営業保証金を供託しているときは、法務省令・国土交通省令の定めるところにより、遅滞なく、費用を予納して、営業保証金を供託している供託所に対し、移転後の主たる事務所の最寄りの供託所への営業保証金の保管替えを請求し、その他のときは、遅滞なく、営業保証金を移転後の主たる事務所の最寄りの供託所に新たに供託しなければならない。
どのような場合に保管替えが必要か?
宅建業者が主たる事務所を移転すると、主たる事務所(本店)の最寄りの供託所が変わることがあります。このとき、次のような対応をしなければなりません。このような場合に、営業保証金の保管替えが必要となります。
営業保証金の供託方法による違い
営業保証金の供託方法は2種類あります。
- 金銭のみを供託している場合、現在の供託所に保管替えを請求する必要があります。
そのための費用を前もって納める必要があります。
保管替えの手続きは遅滞なく行わなければなりません。 - その他(不動産や有価証券を含む)で供託している場合、新たな供託所に改めて供託する必要があります。これを「二重供託」と言います。
なぜなら、一時的に、現在の供託所と新たな供託所の両方に営業保証金が二重で供託されている状態になるからです。
こちらも遅滞なく行わなければなりません。
具体例1:金銭のみ供託している場合
例えば、東京都に本社がある宅建業者A社が、大阪府に本社を移転したとします。
A社は東京法務局の供託所(現在の供託所)に対し、大阪法務局の供託所への保管替えを請求します。
費用を納めた後、東京法務局が営業保証金を大阪法務局へ移します。
具体例2:その他の方法で供託している場合
A社は大阪法務局の供託所(新供託所)に、新たに営業保証金を供託します(二重供託)。
供託が完了した後、東京法務局に供託していた営業保証金を取り戻します。
保管替えをした後の届出義務(施行規則15条の4)
営業保証金の保管替えが完了した場合、宅建業者は免許権者(国土交通大臣または都道府県知事)に対して、遅滞なく供託書正本の写しを添付して届出を行わなければなりません。
具体例
先ほどのA社のケースでは、東京法務局から大阪法務局へ営業保証金が移された後、A社は国土交通大臣または大阪府知事に対して、供託書正本の写しを添付して届出を行う必要があります。
営業保証金の変換(施行規則15条の4の2)
営業保証金の変換とは?
営業保証金の「変換」とは、供託している営業保証金の種類を変更することを言います。つまり、一部の営業保証金を別の形で供託し直す場合などが該当します。例えば、国債証券で営業保証金を供託していて、その国債と現金を変更する場合です。
変換した場合の届出義務
宅建業者が営業保証金を変換した場合も、保管替えと同様に供託書正本の写しを添付して、遅滞なく免許権者に届出を行う必要があります。
する。
例えば、宅建業者B社が資金繰りの都合で、営業保証金の一部(500万円)を金銭から国債(額面500万円)に変換したとします。この場合、B社は変更後の供託書正本の写しを添付し、国土交通大臣または都道府県知事に届出を行わなければなりません。
注意点
宅建業法第29条のよくある間違い|試験で差がつく5つの誤解
宅建業法第29条(保管替え等)は、選択肢の入れ替えで受験生を惑わせる典型的な出題パターンがあります。以下の「よくある間違い」を事前に潰しておくことで、本番での失点を防ぎましょう。
間違い①:支店の移転でも保管替えが必要だと思ってしまう
保管替え等の手続きが必要になるのは「主たる事務所(本店)」の移転により最寄りの供託所が変わった場合のみです。従たる事務所(支店)を移転しただけでは、保管替えの手続きは不要です。
間違い②:金銭のみ供託と有価証券を含む供託の手続きを逆に覚える
最も多い誤答パターンです。正しい対応関係を確認しましょう。
- 金銭のみ → 現在の供託所に「保管替え請求」+費用の予納
- 有価証券等を含む → 新しい供託所に「新たに供託」→ 旧供託所分を取り戻す(二重供託)
有価証券は物理的に移送しにくいため二重供託になる、と理由をセットで押さえると逆転しにくくなります。
間違い③:保管替え請求の相手先を「新しい供託所」だと思ってしまう
金銭のみの場合の保管替え請求は、現在の(移転前の)供託所に対して行います。「移転先の供託所に請求する」という選択肢はひっかけです。
間違い④:費用の予納が必要なケースを取り違える
費用を予納するのは「金銭のみで供託している場合」の保管替え請求時だけです。二重供託のケースでは、新供託所への供託と旧供託所からの取り戻しという別々の手続きになるため、予納の規定はありません。
間違い⑤:最寄りの供託所が変わらない場合にも手続きが必要だと思ってしまう
主たる事務所を移転しても、最寄りの供託所が同じままであれば保管替え等の手続きは不要です。条文の「最寄りの供託所が変更した場合において」という要件を見落とさないようにしましょう。
まとめ
営業保証金の保管替えや変換は、消費者の保護を目的とした重要な制度です。特に、宅建業者が事務所を移転した際や供託方法を変更した際には、適切な手続きを速やかに行うことが求められます。
本記事のポイントを整理すると、
- 営業保証金の保管替えは、主たる事務所の移転時に必要。
- 金銭のみ供託している場合は、現在の供託所に保管替えを請求し、その他の場合は、新しい供託所に新たに供託(二重供託)する。
- 保管替えや変換を行った後は、免許権者に遅滞なく届出をする。
このような手続きを怠ると、宅建業法違反となり業務停止処分などのリスクが発生するため、十分に注意が必要です。





