そもそも営業保証金とは、宅地建物取引業者(以下、「宅建業者」)が事業を行うために供託所へ預ける金銭のことです。これは、取引の相手方である消費者を保護するための制度で、宅建業者が万が一債務不履行を起こした場合、取引の相手方がこの保証金から損害の補填を受けることができます。
宅建業者は、主たる事務所(本社や本店)がある都道府県の供託所に営業保証金を供託しなければなりません。
営業保証金の保管替え
宅地建物取引業者は、その主たる事務所を移転したためその最寄りの供託所が変更した場合において、金銭のみをもつて営業保証金を供託しているときは、法務省令・国土交通省令の定めるところにより、遅滞なく、費用を予納して、営業保証金を供託している供託所に対し、移転後の主たる事務所の最寄りの供託所への営業保証金の保管替えを請求し、その他のときは、遅滞なく、営業保証金を移転後の主たる事務所の最寄りの供託所に新たに供託しなければならない。
どのような場合に保管替えが必要か?
宅建業者が主たる事務所を移転すると、主たる事務所(本店)の最寄りの供託所が変わることがあります。このとき、次のような対応をしなければなりません。このような場合に、営業保証金の保管替えが必要となります。
営業保証金の供託方法による違い
営業保証金の供託方法は2種類あります。
- 金銭のみを供託している場合、現在の供託所に保管替えを請求する必要があります。
そのための費用を前もって納める必要があります。
保管替えの手続きは遅滞なく行わなければなりません。 - その他(不動産や有価証券を含む)で供託している場合、新たな供託所に改めて供託する必要があります。これを「二重供託」と言います。
なぜなら、一時的に、現在の供託所と新たな供託所の両方に営業保証金が二重で供託されている状態になるからです。
こちらも遅滞なく行わなければなりません。
具体例1:金銭のみ供託している場合
例えば、東京都に本社がある宅建業者A社が、大阪府に本社を移転したとします。
A社は東京法務局の供託所(現在の供託所)に対し、大阪法務局の供託所への保管替えを請求します。
費用を納めた後、東京法務局が営業保証金を大阪法務局へ移します。
具体例2:その他の方法で供託している場合
A社は大阪法務局の供託所(新供託所)に、新たに営業保証金を供託します(二重供託)。
供託が完了した後、東京法務局に供託していた営業保証金を取り戻します。
保管替えをした後の届出義務(施行規則15条の4)
営業保証金の保管替えが完了した場合、宅建業者は免許権者(国土交通大臣または都道府県知事)に対して、遅滞なく供託書正本の写しを添付して届出を行わなければなりません。
具体例
先ほどのA社のケースでは、東京法務局から大阪法務局へ営業保証金が移された後、A社は国土交通大臣または大阪府知事に対して、供託書正本の写しを添付して届出を行う必要があります。
営業保証金の変換(施行規則15条の4の2)
営業保証金の変換とは?
営業保証金の「変換」とは、供託している営業保証金の種類を変更することを言います。つまり、一部の営業保証金を別の形で供託し直す場合などが該当します。例えば、国債証券で営業保証金を供託していて、その国債と現金を変更する場合です。
変換した場合の届出義務
宅建業者が営業保証金を変換した場合も、保管替えと同様に供託書正本の写しを添付して、遅滞なく免許権者に届出を行う必要があります。
する。
例えば、宅建業者B社が資金繰りの都合で、営業保証金の一部(500万円)を金銭から国債(額面500万円)に変換したとします。この場合、B社は変更後の供託書正本の写しを添付し、国土交通大臣または都道府県知事に届出を行わなければなりません。
注意点
まとめ
営業保証金の保管替えや変換は、消費者の保護を目的とした重要な制度です。特に、宅建業者が事務所を移転した際や供託方法を変更した際には、適切な手続きを速やかに行うことが求められます。
本記事のポイントを整理すると、
- 営業保証金の保管替えは、主たる事務所の移転時に必要。
- 金銭のみ供託している場合は、現在の供託所に保管替えを請求し、その他の場合は、新しい供託所に新たに供託(二重供託)する。
- 保管替えや変換を行った後は、免許権者に遅滞なく届出をする。
このような手続きを怠ると、宅建業法違反となり業務停止処分などのリスクが発生するため、十分に注意が必要です。
