Aが居住用の甲建物を所有する目的で、期間30年と定めてBから乙土地を賃借した場合に関する次の記述のうち、借地借家法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。なお、Aは借地権登記を備えていないものとする。
1.Aが甲建物を所有していても、建物保存登記をAの子C名義で備えている場合には、Bから乙土地を購入して所有権移転登記を備えたDに対して、Aは借地権を対抗することができない。
2.Aが甲建物を所有していても、登記上の建物の所在地番、床面積等が少しでも実際のものと相違している場合には、建物の同一性が否定されるようなものでなくても、Bから乙土地を購入して所有権移転登記を備えたEに対して、Aは借地権を対抗することができない。
3.AB間の賃貸借契約を公正証書で行えば、当該契約の更新がなく期間満了により終了し、終了時にはAが甲建物を収去すべき旨を有効に規定することができる。
4.Aが地代を支払わなかったことを理由としてBが乙土地の賃貸借契約を解除した場合、契約に特段の定めがないときは、Bは甲建物を時価で買い取らなければならない。
【答え:1】
1・・・正しい
A:借地権者(土地の借主)
B:借地権設定者(土地の貸主・地主)
本肢は、借地権者がAで、借地上建物の名義人がCです。
借地権を第三者に対抗する場合、「借地権者」と「借地上建物の名義人」は同じでないといけません。
したがって、所有権移転登記を備えたD(対抗要件を満たしたD)に対して、Aは借地権を対抗することができないので正しいです。
ちなみに、借地権を第三者に対抗できる場合は3つあります。
- 借地権の登記
- 借地上建物の登記(借地権者本人名義であること)
- 掲示による対抗(建物が滅失した場合、その旨を掲示している:滅失した日から2年間対抗力を持つ)
2・・・誤り
借地権を第三者に対抗するための「借地上建物の登記」について
建物の登記上の所在の地番や床面積等が、表示と多少、違っていても、建物の同一性が確認できる程度の軽微な違いであれば、問題なしとして、対抗要件を満たします。
3・・・誤り
「更新がなく期間満了により終了し、終了時にはAが甲建物を収去すべき旨を有効に規定する」 ということは、定期借地権にする必要があります。
定期借地権は「一般定期借地権」「事業用定期借地権」「建物譲渡特約付借地権」があります。
建物譲渡特約付き借地権とは、期間満了後に、借地上の建物を地主に相当対価で譲渡することにより、借地権を消滅させるものなので、これに当てはまりません。そうなると、「一般定期借地権」と「事業用定期借地権」のどちらかになります。
「一般定期借地権」は、存続期間を50年以上で設定する必要があり、本肢は30年なのでこれも満たしません。
次に、「事業用定期借地権」は、「居住用建物」所有を目的とする場合は設定できません。
したがって、これも満たしません。
つまり、定期借地権にすることはできないので、本肢は誤りです。
4・・・誤り
賃借人の債務不履行によって契約が終了した場合には、建物買取請求権は認められないので本肢は誤りです。
平成28年度(2016年)宅建試験・過去問
- 問1
- 民法の条文
- 問2
- 制限行為能力者
- 問3
- 意思表示・対抗関係
- 問4
- 抵当権
- 問5
- 債権譲渡
- 問6
- 契約不適合責任
- 問7
- 賃貸借・使用者責任
- 問8
- 転貸借
- 問9
- 判決文
- 問10
- 相続
- 問11
- 借地権
- 問12
- 借家権
- 問13
- 区分所有法
- 問14
- 不動産登記法
- 問15
- 国土利用計画法
- 問16
- 都市計画法
- 問17
- 都市計画法
- 問18
- 建築基準法
- 問19
- 建築基準法
- 問20
- 宅地造成等規制法
- 問21
- 土地区画整理法
- 問22
- 農地法
- 問23
- 印紙税
- 問24
- 不動産取得税
- 問25
- 不動産鑑定評価基準
- 問26
- 監督処分
- 問27
- 媒介契約
- 問28
- 8種制限
- 問29
- 業務上の規制
- 問30
- 重要事項説明・37条書面
- 問31
- 保証協会
- 問32
- 広告の規制
- 問33
- 報酬
- 問34
- 業務上の規制
- 問35
- 免許
- 問36
- 重要事項説明
- 問37
- 免許の基準・免許換え
- 問38
- 宅地建物取引士
- 問39
- 35条書面・37条書面
- 問40
- 営業保証金
- 問41
- 業務上の規制
- 問42
- 37条書面
- 問43
- 8種制限
- 問44
- クーリングオフ
- 問45
- 住宅瑕疵担保履行法
- 問46
- 住宅金融支援機構
- 問47
- 不当景品類及び不当表示防止法
- 問48
- 統計
- 問49
- 土地
- 問50
- 建物