宅地建物取引士の設置義務(法第31条の3第1項)
宅地建物取引業者は、事務所ごとに 専任の宅地建物取引士(宅建士) を置かなければなりません。設置すべき宅建士の人数は、各事務所で業務を行う 従業員の5人に1人以上 の割合で定められています。
◎従業員の範囲
「従業員」には、以下の者が含まれます。
- 事務所の代表者や役員(非常勤の役員は除く)
- 宅建業務を行う全ての従業員
- 受付、秘書、運転手などの業務に従事する者(ただし宅建業務に直接関わらない者は除く)
◎具体例
たとえば、不動産会社Aが都内に本社と2つの支店を持っている場合、それぞれの事務所に専任の宅建士を置く必要があります。
本社(従業員10人) → 宅建士2人以上
支店(従業員4人) → 宅建士1人以上
このように、各事務所で業務を行う 従業員の範囲を考慮しながら宅建士を配置 する必要があります。
事務所以外でも宅建士を置くべき場所(規則第15条の5の2)
事務所以外でも、不動産取引を行う特定の場所では 専任の宅建士を配置 しなければなりません。
◎該当する場所
- モデルルームや案内所(10区画以上の宅地や10戸以上の建物の分譲)
- 他の宅建業者の分譲物件の代理・媒介を行う案内所
- 不動産フェアや住宅展示場 など、一時的に契約を締結する場所
◎具体例
✅ 大型マンションの販売センター大手不動産会社Bが 300戸のマンションを販売 するため、販売センターを設置した場合、そこは 事務所以外の取引を行う場所 に該当するため 宅建士を1人以上 置く必要があります。
✅ 住宅展示場での相談ブースA社が住宅展示場で 家を購入するための契約受付を行う場合、そこも専任の宅建士が必要です。
ただし、単に物件情報を紹介するだけの チラシ配布ブース などは、契約締結を行わないため、宅建士の配置義務はありません。
宅建業者の役員が宅建士である場合(法第31条の3第2項)
もし、宅建業者の役員(取締役など)が 宅地建物取引士の資格を持っている 場合、その役員が 主に業務を行う事務所 については、専任の宅建士とみなされます。
◎具体例
宅建業者が法令違反をしないための措置(法第31条の3第3項)
宅建業者は、 宅建士の配置基準に違反した事務所を開設してはならず、すでに開設した事務所が 基準に違反する状態になった場合は、2週間以内 に是正(専任の宅建士を選任)しなければなりません。
◎具体例
✅ 宅建士が辞職した場合の対応A不動産会社の 唯一の専任宅建士が退職 してしまった場合、会社は 2週間以内に新たな宅建士を確保 しなければなりません。もし、期間内に宅建士を確保できないと、業務停止命令を受ける可能性があります。
✅ 新店舗の開設時の注意点不動産会社Dが 新たに事務所を開設 した場合、開設と同時に 必要な宅建士の配置が義務 となります。配置ができていない場合、事務所の営業は認められません。
「専任の宅建士」の専任性とは(規則第15条の5の3)
「専任」とは、その事務所に 常勤で勤務し、宅建業務を専ら担当する ことを意味します。
- フルタイム勤務 が基本(パートやアルバイトはNG)
- 副業として別の仕事をしている場合はNG
- 複数の事務所の宅建士を兼務することはできない
具体例
✅ ITを活用したリモート勤務も可例えば、A不動産会社の宅建士が リモートワークで契約書の作成や相談業務を担当 している場合でも、適切に業務を行う体制が整っていれば 「専任」として認められます。
✅ 宅建業以外の業務を兼務できる場合も例えば、不動産会社Bが建設業も営んでいる場合、宅建士が 一時的に建設業の業務を担当すること は可能。ただし、宅建業務がない時間に限られ、業務の比重によっては「専任」とみなされなくなることもあります。
まとめ
- 事務所ごとに5人に1人以上の宅建士を配置
- モデルルームや住宅展示場などの契約を行う場所でも宅建士を配置
- 役員が宅建士なら、自ら業務に従事する事務所の専任宅建士とみなされる
- 違反した場合は2週間以内に是正が必要
- 宅建士は常勤で勤務し、専ら宅建業務に従事することが求められる
このようなルールを守らないと、 業務停止命令や罰則 を受ける可能性があるため、宅建業者はしっかりと体制を整えなければなりません。
