宅建業法30条の完全ガイド|営業保証金の取り戻し条件と具体例

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営業保証金とは、宅地建物取引業者(宅建業者)が事業を開始する際に、一定額を法務局に供託するお金です。この保証金は、万が一宅建業者が契約の不履行などをした場合に、被害者である顧客が損害を回収するために使われます。

しかし、宅建業者が廃業したり、免許を取り消されたりした場合、この営業保証金を取り戻すことが可能になります。これが「営業保証金の取り戻し」の制度です。

営業保証金の取り戻しができるケース

宅建業法第30条では、次のような場合に営業保証金の取り戻しが認められています。

宅建業の免許が失効したとき

例えば、宅建業の免許の有効期間(5年)が満了し、更新しなかった場合、免許は自動的に失効します。この場合、宅建業者は営業保証金を取り戻すことができます。

免許の欠格要件に該当したとき

宅建業者が法律で定められた欠格要件(例:破産した、刑事罰を受けたなど)に該当し、免許を喪失した場合も、営業保証金の取り戻しが可能です。

免許を取り消されたとき

宅建業法に違反したことが理由で、国土交通大臣や都道府県知事によって免許が取り消された場合も、営業保証金を取り戻すことができます。

事務所を一部廃止したとき

宅建業者が事務所の一部を閉鎖した場合、営業保証金の額が法定の基準額を超えることがあります。この超過額に関しては、取り戻すことができます。

営業保証金を取り戻すための手続き

営業保証金を取り戻すには、一定の手続きが必要になります。

(1)公告(こうこく)の義務

営業保証金の取り戻しをする際、宅建業者は供託所(法務局)を通じて、営業保証金を取り戻す意思を公告しなければなりません。

公告とは、公の場(官報など)で情報を公開することです。この公告を行うことで、宅建業者が過去に取引をした顧客が「まだ損害を受けたままの状態ではないか」を確認する機会を与えます。

公告の期間は「6か月以上」と定められています。

(2)公告期間内に債権者からの申出がないこと

公告の期間内に、取引の相手方(顧客など)から「まだ未払いの損害がある」などの申し出がなければ、宅建業者は営業保証金を取り戻すことができます。

(3)10年経過で公告不要

もし営業保証金を取り戻す事由が発生してから10年以上経過した場合は、公告なしで営業保証金を取り戻すことが可能になります。これは、還付請求権が10年の時効期間満了によって消滅するからです。

具体例

【事例1】免許更新を忘れてしまったA社

A社は宅建業の免許を取得し、営業保証金として1000万円を供託していました。しかし、免許の更新を忘れたため、有効期限が切れました。この場合、A社は免許失効となるため、公告を行ったうえで営業保証金を取り戻すことができます。

【事例2】B社が宅建業を辞めることにした

B社は経営難のため、宅建業から撤退することを決めました。B社はすでにすべての顧客との取引を清算しており、未払いの損害もありません。そのため、官報に公告を掲載し、6か月間の申し出期間を経て、営業保証金を取り戻すことができます。

【事例3】10年経過したC社

C社は10年前に宅建業を廃業しましたが、営業保証金を取り戻す手続きをしていませんでした。この場合、公告なしで営業保証金を取り戻すことができます。

まとめ

  • 営業保証金の取り戻しは、宅建業を廃業したり免許が失効したりした際に、適切な手続きを踏むことで可能になります。
  • 免許の失効・取消、事務所の一部閉鎖などの事由で取り戻しができる。
  • 取り戻す際には、6か月以上の公告期間を設け、債権者からの申し出がなければ返還される。
  • 10年が経過すれば、公告なしで取り戻しが可能

このように、営業保証金の制度は宅建業者にとって重要な仕組みであり、適切な手続きを理解することが求められます。

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