借家契約の終了および更新のポイント一覧
- 存続期間を定めた場合、当事者が期間満了1年前から6ヶ月前までに更新しない旨を通知したとき、当初定めた存続期間で終了
- 存続期間を定めた場合、上記通知を行わず、賃貸人が意義を述べない場合は従前と同一の条件で更新したものとみなす(更新後は期間の定めのない賃貸借となる)
- 更新拒絶などをして、借家契約が更新されていないのに、賃借人が使用継続し、それについて、賃貸人が遅滞なく異議を述べない場合、更新となる
- 存続期間を定めなかった場合、当事者はいつでも解約の申し入れができる。契約が終了する時期は、「賃貸人が申し入れから6ヶ月を経過をしたとき」または「賃借人が申し入れから3ヶ月が経過したとき」
- 建物が滅失した場合、建物賃貸借契約は当然に終了する
- 上記すべてに言えるが、賃貸人が更新拒絶する場合、正当な事由が必要
存続期間を定める場合
当事者が期間満了1年前から6ヶ月前までに更新しない旨を通知したとき、当初定めた存続期間で終了します。
また、更新しない旨の通知しなかった場合や条件変更の通知をしなかった場合、賃貸人が意義を述べない場合は従前と同一の条件で更新したものとみなします。
ただし、存続期間については同一の条件とはならず、期間の定めのない賃貸借となります。
賃貸人が更新拒絶する場合、正当な事由がなければ更新拒絶をすることができません。
一方、賃借人からの更新拒絶は正当な事由は必要ありません。
使用継続による法定更新
更新拒絶などをして、借家契約が更新されていないのに、
賃借人が使用継続し、それについて、賃貸人が遅滞なく異議を述べない場合、従前の契約と同一の条件(存続期間は除く)で更新したものとみなします。
この異議には正当な事由は不要です。
存続期間を定めない場合
当事者はいつでも解約の申し入れができます。ただし、賃貸人から申し入れをする場合には正当な事由が必要です。
- 賃貸人が申し入れから6ヶ月を経過をしたとき
- 賃借人が申し入れから3ヶ月が経過したとき
賃貸借契約は終了します。
こちらも、異議を述べない場合は同一の条件で更新したものとみなされます。
建物が滅失した場合
建物が滅失した場合、建物賃貸借契約は当然に終了します。
注意が必要なのは、建物が滅失しても、借地契約(土地に関する契約・借地権)は当然に終了しません。
借家契約の終了および更新の問題一覧
■問1
賃貸人と賃借人との間で、建物につき、期間5年として普通借家契約を締結する場合、賃貸人も賃借人も契約期間中の中途解約をすることができない旨の規定は、無効である。 (2015-問12-4)
答え:正しい
存続期間を定めがある場合、原則として、契約期間内に中途解約することはできません。
ただし、特約で「中途解約できる旨」が付いていたら、(中途解約する権利を留保したら)中途解約はできます。
したがって、原則、中途解約できないのだから、特約で、再度「中途解約できない旨」をつけても意味はないけど、有効です。
■問2
AがBとの間で、A所有の甲建物について、期間3年、賃料月額10万円と定めた賃貸借契約を締結した場合にして、AがBに対し、賃貸借契約の期間満了の6か月前までに更新しない旨の通知をしなかったときは、AとBは、期間3年、賃料月額10万円の条件で賃貸借契約を更新したものとみなされる。 (2015-問11-1)
答え:誤り
本問は「期間3年」と決められているので、「期間の定めがある建物賃貸借」です。
そして、「期間の定めがある建物賃貸借」では、賃貸借契約の期間満了の1年前から6ヶ月前までに「更新しない旨」の通知をしなかった場合、法定更新され(自動的に更新となり)、契約期間は「期間の定めのないもの」とみなされ、それ以外の条件は更新前と同じです。つまり、賃料は10万円で更新されます。
そして、本問から一歩進んだ問題になると、注意点があります。応用問題にも対応できるよう、「個別指導」ではその点も併せて解説しています!
■問3
A所有の居住用建物(床面積50㎡)につき、Bが賃料月額10万円、期間を2年として、賃貸借契約締結する場合、本件普通建物賃貸借契約では、中途解約できる旨の留保がなければ賃借人は2年間は当該建物を借りる義務がある。 (2012-問12-4)
答え:正しい
普通建物賃貸借契約では、中途解約できる旨の留保がなければ賃借人は2年間は当該建物を借りる義務があります。
これはどういうこととかというと、「中途解約できる旨」が契約書に記載あるかどうかです。
「中途解約できる旨」がない場合は、契約通り、期間内に解約はできないこととなります。
■問4
A所有の居住用建物(床面積50㎡)につき、Bが賃料月額10万円、期間を2年として、賃貸借契約締結する場合、本件普通建物賃貸借契約では、本件普通建物賃貸借契約では、更新がない旨の特約を記載した書面を契約に先立って賃借人に交付しても当該特約は無効である。 (2012-問12-3)
答え:正しい
普通建物賃貸借では、「更新がない旨」は無効です。
そして、契約前に書面を交付しても無効です。
■問5
Aは、BからB所有の建物を賃借し、特段の定めをすることなく、敷金として50万円をBに交付した。Bは、Aの、賃貸借契約終了時までの未払賃料については、敷金から控除できるが、契約終了後明渡しまでの期間の賃料相当損害額についても、敷金から控除できる。 (2001-問9-4)
答え:正しい
敷金は、賃借人が建物を明け渡すまでの債権を全てを保証(担保)するためのものです。
つまり、契約が終了しても、その後、賃借人が建物を明け渡す前までの賃料相当損害額やトイレを壊してしまった場合、その修繕費用も敷金で保証されます。
例えば、1ヶ月の賃料が20万円で、契約終了前に1ヶ月分(20万円)の家賃を滞納し、さらに契約終了後、半月の間使用し続けて建物を明け渡した場合、半月の賃料は10万円なので、「契約終了後明渡しまでの期間の賃料相当損害額」は10万円となります。したがって、合計で30万円を敷金から控除し、賃借人Aが建物を明け渡した後、賃貸人Bは50万円-30万円=20万円を賃借人Aに返還すればよいわけです。
「控除」とは「差し引く」という意味です。
■問6
A所有の甲建物につき、Bが一時使用目的ではなく賃料月額10万円で期間の定めがない賃貸借契約を締結する場合、AはBに対して正当な事由があるときに限り、解約を申し入れることができる。 (2009-問12-2)
答え:正しい
期間の定めのない賃貸借では、各当事者(賃貸人A、賃借人B)は、いつでも解約の申入れをすることができます。
賃貸人からの解約申入れの場合、正当な事由をもって解約申入れをしてから6ヶ月経過することによって賃貸借契約は終了します。
つまり、本問は正しいです。
本問は色々考えるべき内容があるので、「個別指導」ではその点も含めて体系的に解説していきます!
■問7
Aは、BからB所有の建物を賃借し、特段の定めをすることなく、敷金として50万円をBに交付した。賃貸借契約が終了した場合、建物明渡債務と敷金返還債務とは常に同時履行の関係にあり、Aは、敷金の支払と引換えにのみ建物を明け渡すと主張できる。 (2001-問9-3)
答え:誤り
「敷金返還債務」と「建物の明渡債務」は同時履行の関係ではありません。
「賃借人が建物の明け渡し」を先に行い、その後、賃貸人は「敷金を返還」すればよいです。
本問を解くだけであれば、上記ポイントだけ頭に入れておけば解けます。
「建物明渡債務と敷金返還債務とは常に同時履行の関係にあり」と言う部分が誤りです。
しかし、そのポイントだけ覚えるだけでは実力は上がりません。
丸暗記学習には限度があります。
だからこそ、一緒に覚えられるものは一緒に覚えた方が効率的です。
また、敷金が何のためにあるのか?等も理解しておくと良いでしょう!
この点については「個別指導」で解説しています。
■問8
期間の定めのない契約において、賃貸人が、解約の申入れをしたときで、その通知に借地借家法第28条に定める正当事由がある場合は、解約の申入れの日から3月を経過した日に、契約は終了する。 (2002-問14-4)
答え:誤り
期間の定めのない建物の賃貸借では、賃貸人・賃借人とも「いつでも」解約の申入れをすることができますが、「賃貸人」から解約の申入れをする場合は、正当事由を必要とし、解約申入れから「6ヶ月」を経過することによって終了します。
今回は一つのポイントしか解説していませんが、複数のポイントを一度に学習した方が効率的です。
そのため、「個別指導」では細かく解説しています。
■問9
期間の定めのある契約が法定更新された場合、その後の契約は従前と同一条件となり、従前と同一の期間の定めのある賃貸借契約となる。 (2002-問14-3)
答え:誤り
法定更新されると、更新後の契約は、期間を除いて従前と同一条件となり、期間については、「期間の定めのない賃貸借」になります。したがって、
「従前と同一の期間の定めのある賃貸借契約となる。」というのは誤りです。
「法定更新」とは何か?については、「個別指導」で解説します。
■問10
期間の定めのある建物賃貸借において、賃貸人が、期間満了の10月前に更新しない旨の通知を出したときで、その通知に借地借家法第28条に定める正当事由がある場合は、期間満了後、賃借人が使用を継続していることについて、賃貸人が異議を述べなくても、契約は期間満了により終了する。 (2002-問14-2)
答え:誤り
期間の定めのある建物賃貸借の場合、賃貸人および賃借人が、賃貸借期間満了の1年前から6月前までの間に、相手方に対して、「更新拒絶の通知」または「条件を変更しなければ更新しない旨の通知」をしなかったときは、期間を除いて従前の契約と同一の条件で、契約を更新したものとみなされます。
つまり、本問のように、賃貸借期間満了の10か月前に、賃貸人が賃借人に対して、「更新拒絶の通知」をした場合、その通知に正当事由があれば、期間満了で契約終了となります。
ただし、正当事由に基づいて「更新拒絶の通知」をして、期間満了しても賃借人が使用を継続している場合、賃貸人が「期間が満了したから早く出ていってください!」と異議を述べない場合、更新してしまいます。
したがって、本問の「賃借人が使用を継続していることについて、賃貸人が異議を述べなくても、契約は期間満了により終了する」という記述が誤りです。
■問11
期間の定めのある建物賃貸借において、賃貸人が、期間満了の1年前から6月前までの間に、更新しない旨の通知を出すのを失念したときは、賃貸人に借地借家法第28条に定める正当事由がある場合でも、契約は期間満了により終了しない。 (2002-問14-1)
答え:正しい
期間の定めのある借家契約の場合、賃貸人が、賃貸借期間満了の1年前から6か月前までの間に、賃借人に対して、「更新拒絶の通知」または「条件を変更しなければ更新しない旨の通知」をしなかったときは、期間を除いて従前の契約と同一の条件で、契約を更新したものとみなされます。したがって本問では、賃貸人が、期間満了の1年前から6月前までの間に、更新しない旨の通知を出すのを失念しているので、契約期間満了により終了せず、更新したものとみなされます。
■問12
賃貸借契約期間中でも、賃貸人の返済能力に客観的な不安が生じた場合は、賃借人は賃料支払債務と敷金返還請求権とを対当額にて相殺することができる。 (2001-問9-1)
答え:誤り
敷金返還請求権は建物を「明け渡した後」に発生する権利です。
そのため、「賃貸借契約期間中」は、賃借人は「敷金返還請求権」を使って相殺する権利はありません。
したがって、賃借人は賃料支払債務と敷金返還請求権とを相殺することができないです。