借地権の対抗要件のポイント一覧
- 借地権は、「借地権(地上権または賃借権)を登記すること」または「借地上建物を登記」することで第三者に対して対抗できる
- 借地上の建物の登記については、保存登記でも表示登記でもよい
- 借地上の建物の登記名義人が、借地権者と異なる場合は、対抗できない
- 借地上の建物が事前に登記されていれば、万一、滅失したとしても、一定事項を土地の見やすい場所に掲示することで、滅失の日から2年間は対抗力が認められる
借地権の対抗要件とは?
そもそも「対抗する」とは、「自分の権利を主張する」ことを言います。そのため「対抗要件」とは、「自分の権利を主張できる要件・条件」という意味です。
そして、借地権者の第三者に対する対抗要件(借地権者が第三者に対して、この土地を利用できるのは私です!と主張できる要件)は、地上権又は賃借権の登記を備えることです。
しかし、賃借権の場合、借地権設定者(地主)は登記に協力する必要はないため、借地権を登記することができない場合もあります。
そのため、借地権者保護のために、下記のようなルールがあります。
借地上の建物が登記
借地権者が借地上に登記された建物を所有する時、借地権を第三者に対抗することができます。
重要判例
- 同居する長男名義で保存登記した建物では土地の新所有者に対抗することができない。
- 借地上の建物が自己名義で表示登記がされていれば、対抗力を認める。(もちろん、保存登記でもよい)
掲示による対抗力
借地上の登記した建物が滅失した場合、建物がないわけなので、第三者に対抗することができません。
これでは、借地権者が再築したいと思っていても、対抗力がないため、不安で再築もできません。
そこで、借地権者が借地上に登記された建物を所有していたときは、「滅失があった日、新たに築造する旨」などの一定事項を土地の見やすい場所に掲示すれば、滅失の日から2年間は対抗力が認められます。
借地権の対抗要件の問題一覧
■問1
Aが居住用の甲建物を所有する目的で、期間30年と定めてBから乙土地を賃借した。 Aが甲建物を所有していても、登記上の建物の所在地番、床面積等が少しでも実際のものと相違している場合には、建物の同一性が否定されるようなものでなくても、Bから乙土地を購入して所有権移転登記を備えたEに対して、Aは借地権を対抗することができない。 (2016-問11-2)
答え:誤り
借地権を第三者に対抗するための「借地上建物の登記」について 建物の登記上の所在の地番や床面積等が、表示と多少、違っていても、建物の同一性が確認できる程度の軽微な違いであれば、問題なしとして、対抗要件を満たします。
■問2
Aが居住用の甲建物を所有する目的で、期間30年と定めてBから乙土地を賃借した。 Aが甲建物を所有していても、建物保存登記をAの子C名義で備えている場合には、Bから乙土地を購入して所有権移転登記を備えたDに対して、Aは借地権を対抗することができない。 (2016-問11-1)
答え:正しい
A:借地権者(土地の借主)
B:借地権設定者(土地の貸主・地主)
本肢は、借地権者がAで、借地上建物の名義人がCです。
借地権を第三者に対抗する場合、「借地権者」と「借地上建物の名義人」は同じでないといけません。
したがって、所有権移転登記を備えたD(対抗要件を満たしたD)に対して、Aは借地権を対抗することができないので正しいです。
ちなみに、借地権を第三者に対抗できる場合は3つあります。
1.借地権の登記
2.借地上建物の登記(借地権者本人名義であること)
3.掲示による対抗(建物が滅失した場合、その旨を掲示している:滅失した日から2年間対抗力を持つ)
■問3
甲土地の所有者が甲土地につき、建物の所有を目的として賃貸する場合(以下「ケース1」という)と、建物の所有を目的とせずに資材置き場として賃貸する場合(以下「ケース2」という)に関して、 「ケース1」では、賃借人は、甲土地の上に登記されている建物を所有している場合には、甲土地が第三者に売却されても賃借人であることを当該第三者に対抗できるが、 「ケース2」では、甲土地が第三者に売却された場合に賃借人であることを当該第三者に対抗する方法はない。 (2014-問11-2)
答え:誤り
■ケース1
借地権者の対抗要件は「借地権の登記」もしくは「借地上建物の登記」いずれかです。本問では、「登記されている建物」と書いてあるので、賃借人は第三者に対抗できます!
■ケース2
民法の場合、「賃借権を登記」すれば第三者に対抗することができます。
したがって、本問はケース2の部分が誤りです。
■問4
二筆以上ある土地の借地権者が、そのうちの一筆の土地上に登記ある建物を所有し、登記ある建物がない他方の土地は庭として使用するために賃借しているにすぎない場合、登記ある建物がない土地には、借地借家法第10条第1項による対抗力は及ばない。 (2013-問12-3)
答え:正しい
借地権の対抗要件の一つに、「建物の登記」があります。
本問は、土地が2つ(二筆)あり、一つの土地(一筆)は建物が建っていますが、他方の土地は庭なので、庭については対抗力はありません。
どういうことか理解できていますか?
キチンと理解しないと勉強しても実力は付きません。
勉強したらその分実力を付けていただきたいので、「個別指導」では、理解していただくために具体例を使いながら解説しています!
今すぐ、実力の付く勉強を実践していきましょう!
■問5
建物の所有を目的とする土地の適法な転借人は、自ら対抗力を備えていなくても、賃借人が対抗力のある建物を所有しているときは、転貸人たる賃借人の賃借権を援用して転借権を第三者に対抗することができる。 (2012-問11-3)
答え:正しい
まず、土地の賃借の動きは
土地所有者→賃借人(転貸人)→転借人
です。
そして、その土地に、賃借人が建物を所有し、登記をしているわけです。つまり、賃借人は対抗力があります。
この場合、転借人は賃借人(転貸人)のこの対抗力を援用することにより転借権を第三者に対抗することができます。
これもキチンと状況を理解しないといけない部分なので、「個別指導」では具体例と図を使って解説しています!
■問6
建物の所有を目的とする土地の賃貸借契約において、建物が全焼した場合でも、借地権者は、その土地上に滅失建物を特定するために必要な事項等を掲示すれば、借地権を第三者に対抗することができる場合がある。 (2012-問11-2)
答え:正しい
建物の滅失があっても、借地権者が、その建物を特定するために必要な事項等を土地の上の見やすい場所に掲示するときは、借地権は、建物の滅失があった日から2年間は第三者に対抗することができます。 「掲示してから」ではないので注意してください!
ここで一つ注意点!
上記のとおり対抗するためには、建物滅失前に建物が登記されていないといけないということ。
ポイントだけで言えば上記の通りですが、これは、キチンと具体的な状況などを理解しておく必要があります。
なので、「個別指導」では具体的にどういう状況の問題なのかを詳しく瑕疵悦しています!
■問7
建物の所有を目的とする土地の賃貸借契約において、借地権の登記がなくても、その土地上の建物に借地人が自己を所有者と記載した表示の登記をしていれば、借地権を第三者に対抗することができる。 (2012-問11-1)
答え:正しい
借地権が第三者に対抗するためには、「借地権の登記」もしくは「借地上建物の登記(表示登記でよい)」です。
併せて覚えておきたいことは、借地上の建物については自分名義(借地権者と同一名義)でないと対抗要件を満たしません。
本問は自分名義なので、対抗要件を満たし、本問は正しいです。
細かい考え方や本問が具体的にどういうことを言っているのかについては「個別指導」で解説します!
■問8
Aが所有している甲土地を平置きの駐車場用地として利用しようとするBに貸す場合と、一時使用目的ではなく建物所有目的を有するCに貸す場合、土地賃貸借契約の期間を定めなかった場合、AB間の土地賃貸借契約を書面で行っても、Bが賃借権の登記をしないままAが甲土地をDに売却してしまえばBはDに対して賃借権を対抗できないのに対し、 AC間の土地賃貸借契約を口頭で行っても、Cが甲土地上にC所有の登記を行った建物を有していれば、Aが甲土地をDに売却してもCはDに対して賃借権を対 抗できる。 (2008-問13-4)
答え:正しい
【AB間の賃貸借について(民法適用)】
民法では、賃借権を第三者に対して主張するには 「賃借権を登記」が必要です。
したがって、「AB間の土地賃貸借契約を書面で行っても、Bが賃借権の登記をしないままAが甲土地をDに売却してしまえばBはDに対して賃借権を対抗できない」という記述は正しいです。
【AC間の賃貸借について(借地借家法適用)】
借地借家法では、借地権者が第三者に対抗するには「賃借権(借地権)の登記」もしくは「建物の登記」です。
したがって、「AC間の土地賃貸借契約を口頭で行っても、Cが甲土地上にC所有の登記を行った建物を有していれば、Aが甲土地をDに売却してもCはDに対して賃借権を対抗できる」という記述は正しいです。
本問に関して一緒に学習していただきたいことが複数あるので、その点を踏まえて「個別指導」では細かく解説します。
■問9
Aが所有者として登記されている甲土地上に、Bが所有者として登記されている乙建物があり、CがAから甲土地を購入した場合に関して、BがAとの間で期間を定めずに甲土地の借地契約を締結している場合には、Cは、いつでも正当事由とともに解約を申し入れて、Bに対して建物を収去して土地を明け渡すよう請求できる。 (2007-問13-4)
答え:誤り
「期間の定めのない」借地契約は存続期間30年で、借地権者Bの対抗要件は「借地権を登記」もしくは「借地上の建物(乙建物)を登記」です。
本問をみると、借地権者Bは 「借地上の建物(乙建物)を登記」をしているので、対抗要件を満たしています。
つまり、借地権者Bは、Aから土地を購入した新所有者Cに対しても借地権を対抗できるので、
Cが正当事由とともに解約を申し入れて、Bに対して建物を収去して土地を明け渡すよう請求できません。
したがって、本問は誤りです。
本問は問題文を理解する必要がありますね!
どのように問題文を理解するかは「個別指導」でお伝えします。
■問10
Aが所有者として登記されている甲土地上に、Bが所有者として登記されている乙建物があり、CがAから甲土地を購入した場合に関して、BがAとの間で甲土地の借地契約を締結しており、甲土地購入後に借地権の存続期間が満了した場合であっても、Cは、Bに対して建物を収去して土地を明け渡すよう請求できない場合がある。 (2007-問13-3)
答え:正しい
借地権者Bの対抗要件は「借地権を登記」もしくは「借地上の建物(乙建物)を登記」で、一方、土地の購入者Cの対抗要件は「所有権の登記」です。ここで問題文には、「Bが所有者として登記されている乙建物」という記述から、Bは借地権の対抗要件を満たしています。
したがって、BはCに対して借地権を対抗できます。
本問の答えを導くまでの流れが重要です。
どのように問題文を理解し、上記ルールと使って答えを導くか?
これが重要です。
「個別指導」ではその点も解説しています!
近年の難化する宅建試験に対応するためにも理解しながら勉強は進めていきましょう!
■問11
自らが所有している甲土地を有効利用したいAと、同土地上で事業を行いたいBとの間の契約に関して、甲土地につき、Bが建物を所有して小売業を行う目的で存続期間を30年とする土地の賃貸借契約を締結している期間の途中で、Aが甲土地をCに売却してCが所有権移転登記を備えた場合、当該契約が公正証書でなされていても、BはCに対して賃借権を対抗することができない場合がある。 (2006-問13-4)
答え:正しい
借地権者Bが第三者Cに借地権を対抗するには①借地権の登記もしくは②借地上の建物の登記です。
そして、本問をみると、①も②も記述がありません。
つまり、①②のどちらの登記もなければ、所有権移転登記を備えた第三者CはBに対抗することができるので、BはCに対抗できない場合があります。
したがって本問は正しい記述です。公正証書はヒッカケルための記述です。
■問12
Aが、Bに、A所有の甲地を建物の所有を目的として賃貸し、Bがその土地上に乙建物を新築し、所有している。乙建物が滅失した場合でも、Bが借地借家法に規定する事項を甲地の上の見やすい場所に掲示したときは、Bは、甲地に賃借権の登記をしていなくても、滅失のあった日から2年間は、甲地をAから譲渡され所有権移転登記を受けたDに対し、甲地の賃借権を対抗できる。 (2003-問13-2)
答え:正しい
借地上の建物登記されていれば、建物が滅失しても、一定事項を記載した掲示を行うことで、滅失の日から2年間は第三者に対抗できます。これを掲示による対抗といいます。このルールは、「滅失前の建物を登記しておくこと」が要件となっています。本問では、借地借家法に規定する事項を掲示していることから、滅失した建物は登記されていたと考えられるのですが、それほど気にする必要はありません。
それよりも本問の状況は理解できていますか?なぜ、このような「掲示による対抗」というルールがあるのか理解していますか?
単に上記ポイントを覚えるだけであればだれでもできます。しかし、すぐに忘れます。
重要なのは理解することです!
もし、理解できていないのであれば今すぐ理解学習を開始しましょう!
理解学習の仕方が分からない方は「個別指導」を使ってください。
理解学習する為の内容がすべて記載されています!あなたは調べることもないでしょう!
■問13
Aが、Bに、A所有の甲地を建物の所有を目的として賃貸し、Bがその土地上に乙建物を新築し、所有している。Bが、乙建物につき自己名義の所有権の保存登記をしている場合は、甲地につき賃借権の登記をしていないときでも、甲地をAから譲渡され所有権移転登記を受けたCに対し、甲地の賃借権を対抗できる。 (2003-問13-1)
答え:正しい
借地権者の対抗要件は「借地権の登記」もしくは「借地上の建物の登記」です。これを言い換えると、借地権者は「借地権の登記」がなくても「借地上の建物を登記」していれば第三者に対抗できます。ただし、建物の登記は「借地権者の名義」でないといけません。本問は乙建物がB名義で保存登記されており、借地権者と同一名義なので、対抗要件を満たします。ちなみにこの建物の登記については、保存登記も大丈夫ですし、表題登記だけでも大丈夫です。
簡単な解説はここまでですが、まず、宅建合格するためには、キチンと問題文を理解する必要があります。
問題文の状況を図にできるか?次に、本問で注意すべき点はどこか?(どのようなヒッカケパターンがあるか?)などに答えられないと実力は付きません。もちろん、表示登記と保存登記の違いは基本中の基本なので理解しておくことは当然ですよ!
このように、宅建合格するには、理解学習を実践する必要があるわけです。
でも、テキストや予備校ではこのようなことまでは教えてくれません。
だから、あなたは、ネットでドンドン調べながら理解学習を行う必要があるわけです!
そうすれば、次の試験で合格できるでしょう!
でも、どうやって調べたらいいか分からないというのであれば、「個別指導」を使ってください!
ここには、理解すべき内容がすべて記載されています!あなたは調べる必要はありません。つまり、楽に実力を上げることができるわけです!
いち早く宅建の苦悩から解放されましょう!
■問14
Aは、昭和46年(西暦1971年)8月、Bから、その所有地を、建物の所有を目的として存続期間30年の約定で賃借し、その後A所有の建物を同土地上に建築し、A名義の所有権保存登記をしてきた。Aは平成12年(西暦2000年) 7月に再築のため建物を取り壊し、土地の上の見やすい場所に「旧建物を特定するために必要な事項、取り壊した日、建物を新たに築造する旨」 を掲示した。この掲示が存続していれば、建物が未完成でも、平成13年8月時点で、Aは本件借地権を第三者に対抗できる。 (2001-問12-3)
答え:正しい
現借地借家法の施行日(平成4年8月1日)よりも前に、建物の取り壊しが行なわれた場合(滅失した場合)、「掲示による対抗」のルールが適用されません。
一方、現借地借家法の施行日(平成4年8月1日)以降に建物の取り壊しが行なわれた場合(滅失した場合)、 「掲示による対抗」のルールが適用されます。
本問は平成12年に建物を取り壊しているので、 「掲示による対抗」のルールが適用されます。
したがって、土地の上の見やすい場所に「旧建物を特定するために必要な事項、取り壊した日、建物を新たに築造する旨」 を掲示していれば、建物がなくても、滅失の日から2年間は第三者に対抗できます。
ここでは「掲示による対抗」について簡単に解説しているだけですが、「個別指導」では詳しく解説しています!