AがBから弁済の期限の定めなく金1,000万円を借り入れる金銭消費貸借契約(以下この問において「本件契約」という。)における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
1.Aは、本件契約におけるAの債務を担保するために、Aが所有する不動産に対し、Bのために、抵当権を設定することはできるが、質権を設定することはできない。
2.Aが本件契約に基づく債務の弁済を怠ったときに、BがAから預かっている動産を占有している場合には、Bは当該動産の返還時期が到来しても弁済を受けるまでその動産に関して留置権を行使することができる。
3.Aが本件契約に基づく債務の弁済を怠った場合には、BはAの総財産に対して先取特権を行使することができる。
4.Aが、期限が到来しているBの悪意による不法行為に基づく金1,000万円の損害賠償請求債権をBに対して有している場合、Aは本件契約に基づく返還債務をBに対する当該損害賠償請求債権で相殺することができる。
AがBから弁済の期限の定めなく金1,000万円を借り入れる金銭消費貸借契約に関する問題です。
1.Aは、本件契約におけるAの債務を担保するために、Aが所有する不動産に対し、Bのために、抵当権を設定することはできるが、質権を設定することはできない。
1・・・ 誤り
本問は、Aが借りた1,000万円という債務に対して、自らの不動産にどのような担保権を設定できるかを質問しています。
そして、民法上、質権の対象は「動産」に限りません。「不動産」や「権利(債権など)」に対しても質権を設定することが可能です(民法342条、362条)。
したがって、「質権を設定することはできない」とする本肢は誤りとなります。
■抵当権と質権の決定的な違い(占有の移転)
抵当権: 物を相手に引き渡す必要がありません。Aさんはその家に住み続けたまま、担保に入れることができます。実務で圧倒的に多いのはこちらです。
質権: 「物の占有(引き渡し)」が効力の発生要件です。つまり、Aさんが不動産に質権を設定すると、その不動産をBさんに明け渡し、Bさんが管理・使用することになります。
実際、不動産質権はあまり使われないです。
なぜなら、不動産質を設定すると、所有者(Aさん)はそこを使えなくなってしまうからです。質権だと住宅ローンなどで「家を担保に入れながら住み続ける」ことができないため、不動産取引では抵当権が主役となり、不動産質は影が薄いです。
AがBから弁済の期限の定めなく金1,000万円を借り入れる金銭消費貸借契約に関する問題です。
2.Aが本件契約に基づく債務の弁済を怠ったときに、BがAから預かっている動産を占有している場合には、Bは当該動産の返還時期が到来しても弁済を受けるまでその動産に関して留置権を行使することができる。
2・・・ 誤り
留置権とは、簡単に言えば「お代を払ってくれるまで、この物は返しません!」と居座ることができる権利です。
例えば、時計の修理代を払うまで、時計屋さんが修理済みの時計を返さない場合、時計屋が持っている権利が「留置権」です。
この留置権における最大のポイント『債権と物の「つながり(牽連性)」』です。
留置権が認められるためには、「その物に関して生じた債権」である必要があります。これを専門用語で牽連性(けんれんせい)と呼びます。
本問のケースで見ています。
債権: AがBから借りた「1,000万円」の返済。
占有している物: BがAから預かっている「動産」。
1,000万円という借金は、預かっている「動産」から発生したものではありませんよね?
単なる金銭の貸し借りと、預かりものは全く別次元の話です。
留置権が成立するには、「その物自体から発生した債権」(修理代、エサ代、建物への支出した費用など)でなければなりません。
本肢をみると、Bが持っている「1,000万円の債権」は、預かっている「動産」に関して生じたものではないため、牽連性が認められません。そのため、留置権を行使することはできません。
したがって、Bは返還時期が来れば、動産をAに返さなければならないということです。
AがBから弁済の期限の定めなく金1,000万円を借り入れる金銭消費貸借契約に関する問題です。
3.Aが本件契約に基づく債務の弁済を怠った場合には、BはAの総財産に対して先取特権を行使することができる。
3・・・ 誤り
ポイントは、「先取特権」がどのような場合に発生する権利かという点にあります。
先取特権とは、法律が定める特定の種類の債権を持つ人が、債務者の財産から他の債権者に先立って(優先的に)支払いを受けることができる権利です。
これは「法定担保物権」と呼ばれ、当事者の合意ではなく、法律の定め(公益性や公平性)によって自動的に発生します。
■一般的な「お金の貸し借り(金銭消費貸借契約)」には、法律上、先取特権は認められていません。
もしお金を貸しただけで「あなたの財産を優先的に差し押さえます」という強力な権利が認められてしまったら、他の債権者が予測不可能な不利益を被るからです。よって、本肢は誤りです。
先取特権はイメージが必要なので、この点はこの点は個別指導で解説します!
AがBから弁済の期限の定めなく金1,000万円を借り入れる金銭消費貸借契約に関する問題です。
4.Aが、期限が到来しているBの悪意による不法行為に基づく金1,000万円の損害賠償請求債権をBに対して有している場合、Aは本件契約に基づく返還債務をBに対する当該損害賠償請求債権で相殺することができる。
4・・・ 正しい
まず、相殺には「自働債権」と「受働債権」という言葉が出てきます。ここを混同しないことが攻略の第一歩です。
- 自働債権: 自分から「相殺しようぜ!」と切り出すための武器(債権)
- 受働債権: 相手から突きつけられている、支払わなければならない宿題(債務)
本問を整理すると以下のようになります。
- Aの債務: Bから借りた1,000万円を返す義務(受働債権)
- Aの債権: Bの「悪意の不法行為」によって発生した損害賠償請求権(自働債権)
そして、民法509条では「不法行為による相殺」について、禁止されるパターンと許されるパターンの2つを規定しています。
【禁止されるパターン(Bからの相殺)】
加害者Bから相殺するということは、
B(加害者)が「俺はお前に1,000万円貸してるんだから、今回殴って(不法行為)発生した賠償金1,000万円は、貸し金とチャラにしてやるよ」と言うことです。
これを許すと、お金を貸している側が「どうせ相殺できるから」と、暴力や嫌がらせを助長する恐れがあるため、法律で厳しく禁止しています。
【許されるパターン(Aからの相殺)】
一方、本問のように、被害者であるAが「Bに借金を返すのは癪(しゃく)だけど、ちょうど損害賠償金をもらう権利があるから、これでチャラにしてスッキリしよう」と言うことは、被害者であるAの自由な意思であり、Aにとってメリットがあるため、何ら禁止される理由がありません。よって、本肢は正しいです。
令和7年(2025年):宅建試験・過去問
- 問1
- 意思表示・物権変動
- 問2
- 保証・連帯保証
- 問3
- 意思表示
- 問4
- 担保物権・相殺
- 問5
- 相続(代襲相続)
- 問6
- 物権変動
- 問7
- 賃貸借
- 問8
- 民法の条文
- 問9
- 承諾・債務引受
- 問10
- 契約不適合責任
- 問11
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