いずれも宅地建物取引業者であるA社、B社及びC社(以下この問において「売主ら」という。)が、分譲マンションを共同で建築、販売することとなり、建築確認を受けた後、工事完了前にその一室を5,000万円で宅地建物取引業者ではない個人である買主に売却しようとする場合に関する次の記述のうち、宅地建物取引業法(以下この問において「法」という。)に違反するものはいくつあるか。
ア 売主らは、共同する全社が各個に重要事項説明を実施すると、かえって買主を混乱させると考え、買主の了解を得た上で、A社1社を幹事社とし、A社の宅地建物取引士が単独で重要事項説明書に記名のうえ、買主に交付し説明を行った。
イ 売主らは、A社の事務所において買主から買受けの申込みを受け、売買契約を締結したが、売主らは当該売買契約には法第37条の2の規定に基づくいわゆるクーリング・オフの適用はないと判断し、クーリング・オフについて買主に告げる書面の交付は行わなかった。
ウ 売主らは、当該物件については、重要事項説明の時点では共用部分に関する規約が案であるので、買主の了解を得た上で、契約締結後に決定した規約を交付することとし、重要事項説明書への記載は省略した。
エ 売主らは買主から手付金500万円を受領することとしたが、手付金の保全措置を講じる必要はないと判断し、手付金保全措置の概要について重要事項説明書への記載は省略した。
1.一つ
2.二つ
3.三つ
4.四つ
ア・・・ 違反する
宅地建物取引業法35条1項では、宅建業者が自ら売主となる場合、買主に対して「宅地建物取引士」が記名した書面(重要事項説明書)を交付し、説明をさせなければならないと定めています。この義務は、取引に関わるすべての宅建業者に課せられています。たとえ複数の業者が共同で売主になる場合であっても、それぞれの業者が自らの責任を果たさなければなりません。たとえ「買主が混乱するから」という理由で1社が代表して説明を行うこと自体は認められていますが、書面への記名については、共同売主であるA社、B社、C社の「すべて」の宅地建物取引士が行う必要があります。これは、もし説明に不備があった場合に、どの業者が責任を負うのかを明確にするためです。したがって、A社の取引士一人のみの記名では、B社とC社が法で定められた義務を怠ったことになり、違反となります。
【具体例】例えば、仲良し3人組で一台の中古車を誰かに売ると想像してみてください。「代表して一人だけが説明すればいいよ」と買い手が言ってくれたとしても、もしその車に不具合があったとき、名前を書いていない残りの二人が「私は説明に関わっていないから知らないよ」と逃げてしまったら、買い手は困ってしまいますよね。法律の世界では、責任の所在をはっきりさせることがとても大切です。試験では「買主の承諾があれば1社の記名で足りる」といった、いかにももっともらしいひっかけ問題が出題されやすいので注意しましょう!たとえ相手が「1人でいいよ」と言っても、プロの業者としては全員が責任を持って名前を刻まなければならない、と覚えておいてください!
イ・・・ 違反しない
宅地建物取引業法37条の2第1項では、宅建業者が自ら売主となる売買契約において、買主が「事務所等」以外の場所で申し込みや契約をした場合に、一定期間内であれば無条件で契約を解除できる(クーリング・オフ)と定めています。逆に言えば、買主が自ら業者の「事務所」に出向いて申し込みをした場合は、買主にはじっくり考える余裕があったとみなされるため、クーリング・オフの制度自体が適用されません。そして、クーリング・オフの告知書面(クーリング・オフができる旨やその方法を書いた紙)は、あくまで「クーリング・オフができる場合」に、その期間をカウントダウンさせるために交付するものです。今回のケースのように、最初からクーリング・オフが適用されない場所(事務所)で申し込みをした場合には、そもそも告知する義務も書面を渡す義務もありません。したがって、書面を交付しなかったことは適法であり、違反にはならないのです。
【具体例】このルールをイメージしやすく例えると、自分からデパートのお店に行って「これください!」と買ったものは、後から「やっぱりやめた」とは言いにくいですよね。それと同じで、業者の事務所という「プロの本拠地」に自分から出向いて申し込んだ人は、それだけ買う意思が固まっていると判断されるわけです。試験対策上の注意点としては、「申し込みの場所」と「契約の場所」が違うときです。この場合、判断基準になるのはあくまで「申し込みをした場所」です。
「テント張りの案内所」や「買主の自宅(買主から申し出た場合)」など、場所によって適用されるかどうかが細かく分かれますので、一つずつ場所の性質を確認しておきましょう!
ウ・・・ 違反する
マンションのような区分所有建物の売買では、管理規約の内容は買主にとって非常に重要な情報です。そのため、宅建業法および施行規則(16条の2第2号)により、共用部分に関する規約の定めがあるときは、その内容を説明しなければならないとされています。このルールにおいて重要なのは、規約がまだ正式に決定しておらず「案」の状態であっても、その案の内容を記載・説明しなければならないという点です。「あとで決まったら渡します」という後回しや、買主の了解を得たからといって記載を省略することは認められていません。買主は「どんなルールがあるのか」を知った上で購入を決断する必要があるため、現時点でわかっている「案」をしっかりと示す義務があるのです。
【具体例】例えば、新築マンションを想像してみてください。入居前ですから規約はまだ「案」ですが、そこには「ペット禁止」や「楽器演奏の時間制限」などの重要なルールが書かれています。もし「規約は後で決まったら教えますね」と言われて契約し、後から「実はペット禁止でした」と知らされたら、ペットと暮らしたい買主は大変困ってしまいますよね。ですから、たとえ「案」であっても、今ある情報をすべて開示して、納得してもらう必要があります。
エ・・・ 違反する
宅建業法41条1項では、業者が自ら売主となり、まだ完成していない物件(未完成物件)を売る場合、一定の金額を超える手付金等を受け取る前に「保全措置(銀行等に預けるなどして守る仕組み)」を講じなければならないと定めています。保全措置が必要になるラインは「代金の5%以下かつ1,000万円以下」の両方を満たさない場合です。今回のケースでは、代金5,000万円の5%は250万円ですので、受け取る500万円はこのラインを超えています。つまり、法律上、保全措置が「必要」な状況です。
そして、宅建業法35条1項10号では、このように保全措置を講ずる必要がある場合には、その措置の内容を重要事項説明書に記載し、説明しなければならないと定めています。「必要ない」と勝手に判断して記載を省略することは、説明義務違反となります。
【具体例】このルールは、家が完成する前に不動産会社が倒産してしまったとき、買主が払ったお金が戻ってこなくなるのを防ぐための「買主を守るバリア」のようなものです。試験でよく出るひっかけは、「500万円は1,000万円以下だから保全措置はいらない」という思い込みです。未完成物件の場合は、「5%」というもう一つのハードルがあることを絶対に忘れないでください!
(5,000万円の5%=250万円なので、250万円を超えるなら1,000万円以下でもアウトです。)難しい計算に感じたら、まずは「未完成は5%、完成済みは10%」という数字のペアを覚えてしまいましょう!
令和7年(2025年):宅建試験・過去問
- 問1
- 意思表示・物権変動
- 問2
- 保証・連帯保証
- 問3
- 意思表示
- 問4
- 担保物権・相殺
- 問5
- 相続(代襲相続)
- 問6
- 物権変動
- 問7
- 民法総合
- 問8
- 共有
- 問9
- 連帯債務
- 問10
- 契約不適合責任
- 問11
- 借地権
- 問12
- 借家権
- 問13
- 区分所有法
- 問14
- 不動産登記法
- 問15
- 都市計画法
- 問16
- 都市計画法(開発許可)
- 問17
- 建築基準法
- 問18
- 建築基準法
- 問19
- 盛土規制法
- 問20
- 土地区画整理法
- 問21
- 農地法
- 問22
- 国土利用計画法
- 問23
- 登録免許税
- 問24
- 固定資産税
- 問25
- 不動産鑑定評価基準
- 問26
- 報酬計算
- 問27
- 重要事項説明・35条書面
- 問28
- 業務上の規制
- 問29
- 37条書面
- 問30
- 重要事項説明・35条書面
- 問31
- 業務上の規制
- 問32
- 8種制限
- 問33
- 35条書面・37条書面
- 問34
- 免許の基準
- 問35
- 保証協会
- 問36
- 重要事項説明
- 問37
- 業務上の規制
- 問38
- 免許
- 問39
- 媒介契約
- 問40
- クーリングオフ
- 問41
- 免許
- 問42
- 宅建士
- 問43
- 重要事項説明書・35条書面
- 問44
- 犯罪収益移転防止法
- 問45
- 住宅瑕疵担保履行法
- 問46
- 住宅金融支援機構
- 問47
- 不当景品類及び不当表示防止法
- 問48
- 統計
- 問49
- 土地
- 問50
- 建物







