宅建業者が、不動産を販売したり、賃貸の仲介をしたりする際、どんな広告でもよいかというとそうではありません。消費者をだますような広告はもちろんだめです。つまり、宅建業者が広告を出す際には一定のルールを守らなければいけません。そのルールが宅建業法に規定されています。
「広告」に関する制限は、宅建業法ではよく出題される部分なので、このページでまとめて頭に入れておきましょう!
誇大広告等の禁止
宅建業者は、宅建業に関して広告をするときは、下記内容について、①著しく事実に相違する表示をしてはいけませんし、②実際のものよりも著しく優良であるような表示をしてはなりません。さらに③有利であると人を誤認させるような表示をしてはいけません。
下記内容とは?
- 「宅地・建物」の所在、規模、形質
→[所在]とは、地番、所在地、位置図等により特定される取引物件の場所。
→[規模]とは、取引物件の面積や間取り(個々の物件に限らず、宅地分譲における分譲地全体
の広さや区分所有建物の全体の広さ、戸数等も含まれる。)。
→[形質]とは、取引物件の形状及び性質(地目、供給施設、排水施設、構造、材料、用途、性能、経過年数等)。 - 「宅地・建物」の現在・将来の利用の制限、環境
→[現在又は将来の利用の制限]とは、取引物件に係る現在又は将来の公法上の制限(都市計画法、建築基準法、農地法等に基づく制限の設定又は解除等)、私法上の制限(借地権、定期借地権、地
上権等の有無及びその内容等)。
→[現在又は将来の環境]とは、取引物件に係る現在又は将来の周囲の状況(静寂さ、快適さ、方位等の立地条件等、デパート、コンビニエンスストア、商店街、学校、病院等の状況、道路、
公園等の公共施設の整備状況等)。 - 「宅地・建物」の現在又は将来の交通その他の利便
→[現在又は将来の交通その他の利便]とは、業務中心地に出るまでに利用する交通機関の現在又は将来の便利さ(路線名、最寄りの駅、停留所までの所要時間、建設計画等)。 - 「代金・借賃等」の対価の額・その支払方法
[代金、借賃等の対価の額又はその支払方法]とは、代金、借賃、権利金等の額又はその支払方法(現金一括払い、割賦払い、頭金、支払回数、支払期間等)。 - 「代金・交換差金」に関する金銭の貸借のあっせん
→[代金又は交換差金に関する金銭の貸借のあっせん]とは、金銭の貸借(住宅ローン)のあっせんの有無又は貸借の条件(融資を受けるための資格、金利、返済回数、金利の計算方式等)。
例えば、建物の床面積(規模)が、60㎡しかないにもかかわらず、70㎡と表示することは違反ということです。
また、宅地から最寄りの駅まで、バスを使って30分以上かかるにもかかわらず「駅近」という広告を出すのも違反ということです。
著しく事実に相違する表示とは?
「著しく事実に相違する表示」と認められるものとは、上記の各項目について、広告に書いてあることと事実との相違について、一般購入者等が知っていれば当然に誘引されない(誘われない)ものをいい、単に、事実と当該表示との相違することの度合いが大きいことのみで判断されるものではありません。
例えば、市街化調整区域に所在する物件を市街化区域と表示した場合、築後10年を経過した建物を築後1年と表示した場合、地目が農地である土地を宅地として表示した場合等は「虚偽広告」に該当します。
実際のものよりも著しく優良であり、若しくは著しく有利であると人を誤認させるような表示とは?
「実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるような表示」と認められるものとは、上記の各項目について、「宅地建物についての専門的知識のない一般購入者」や「物件に関する実際の情報を有していない一般購入者」等を誤認させる(勘違いさせる)程度のものを言います。
例えば、「駅まで1㎞の好立地」と広告に表示されているが、直線距離では駅まで1㎞程度であるものの、実際の道のりでは4㎞ある場合、駅までの道のりが1㎞であると一般の購入者を誤認させるような表示であるので、「誇大広告」に該当します。
定期借地権設定契約・定期建物賃貸借契約の代理又は媒介の広告で、誇大広告となる場合
宅建業者が、「定期借地権を設定する契約」又は「定期建物賃貸借契約」についての代理又は媒介に係
る広告を行う際において、下記に該当する場合は、「宅地又は建物の現在若しくは将来の利用の制限」に係る誇大広告等として宅建業法違反になりうることがあります。
- 通常の借地権(普通借地権)又は建物賃貸借契約(普通借家権)であると人を誤認させるような表示をした場合
- 当該定期借地権又は定期建物賃貸借契約の内容(期間、賃料等)について、著しく事実に相違する表示をし、又は実際のものよりも著しく有利であると人を誤認させるような表示をした場合
おとり広告・虚偽広告も宅建業法違反
「おとり広告」とは、顧客を集めるために売る意思のない・条件の良い物件に関する広告を言います。
「虚偽広告」とは、実際には存在しない物件に関する広告を言います。
これらの広告も、掲載すれば、実際に問い合わせがなくても宅建業法違反となります。
広告媒体は問わない
広告の媒体(掲載先)には、「新聞の折込チラシ、配布用のチラシ、新聞、雑誌、テレビ、ラジオ又はインターネットのホームページ」等がありますが、すべての広告媒体が、誇大広告等の禁止の対象となります。
つまり、実際に、紙やホームぺージで掲載していなくても、ラジオで、物件紹介をして、その紹介が誇大広告に当たれば、宅建業法違反となります。
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広告の開始時期の制限
宅建業者は、「宅地の造成の工事完了前」「建物建築の工事完了前」においては、当該工事に関し必要とされる「開発許可」や「建築確認」等の処分があった後でなければ、当該「未完成の宅地又は建物」の売買・賃貸の広告をしてはいけません。
分かりやすくいえば、未完成物件については、「開発許可」や「建築確認」等の処分前に広告を行ったら宅建業法違反となるということです。
例えば、造成工事が完了する前の宅地について、開発許可が必要であるにもかかわらず、開発許可を受ける前にこの宅地の広告を出したら、宅建業法違反ということです。
逆に、造成工事が完了する前の宅地であっても、開発許可を受けた後であれば、広告を出しても宅建業法違反にはなりません。
「開発許可」や「建築確認」等とは?
- 開発許可(都市計画法)
- 建築確認(建築基準法)
- 宅地造成工事の許可(宅地造成等規制法)
- 3条許可・4条許可・5条許可(農地法)
等
※国土利用計画法の事後届出・事前届出、規制区域内での許可は上記に含まれません。
広告の際の取引態様の明示
宅建業者は、「宅地又は建物」の「売買、交換又は貸借」に関する広告をするときは、自己が契約の当事者となって当該売買若しくは交換を成立させるか(売主)、代理人として当該売買、交換若しくは貸借を成立させるか(代理)、又は媒介して当該売買、交換若しくは貸借を成立させるか(媒介)の別(取引態様の別)を明示しなければなりません。
分かりやすくいうと、宅建業者が、不動産物件の広告をする場合、広告をする宅建業者が「売主」なのか、「代理」なのか、「媒介」なのかを広告に記載しなければならないということです。