「契約不適合責任の特約制限」の重要ポイントと解説

契約不適合責任の特約制限は、8種規制の一つです。
8種規制とは売主が宅建業者、買主が宅建業者以外の場合に適用される買主保護を目的とする制限です。

契約不適合責任の特約制限のポイント一覧

  1. 民法では、契約不適合についての通知期間は、原則、買主がその不適合を知った時から1年以内
  2. 宅建業法では、上記通知期間(知った時から1年)について、「引渡しから2年」より長い期間で定めることは有効
  3. 上記2を除いて、民法より買主にとって不利な特約をすると無効となる

契約不適合責任とは?

引き渡された目的物の種類・品質・数量について、契約内容と違う場合、売主が負う責任を「契約不適合責任」といいます。

そして、民法では、買主は売主に対して、①追完請求、②代金減額請求、③損害賠償請求、④契約解除等の権利を持ちます。

また、売主が「種類又は品質」に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合、原則、買主がその不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しないときは、買主は、その不適合を理由として、上記「①履行の追完請求、②代金減額請求、③損害賠償請求、及び④契約の解除をすることができなくなります。

そして、契約不適合責任は、民法では、特約により、売主が一定の場合に限って、責任を負わないことができます。

しかし、これでは、一般消費者である買主が不利になる可能性があるので、宅建業法によって、契約不適合責任の特約に制限を加えました。

契約不適合責任の特約制限

宅建業法では、契約不適合責任の通知期間についてのみ引渡から2年」よりも長い期間とする特約は有効としています。

それより買主が不利となる特約無効とし、無効となった場合は、民法に従い通知期間は、「不適合を知ってから1年」となります

さらに、耐震偽装問題により、新築の欠陥住宅を販売したマンション開発業者が、補修費用を払えずに倒産し、マンション購入者が多大な費用を負担することとなりました。
その結果、平成21年10月1日から住宅瑕疵担保履行法による資力確保措置が取られるようになりました。

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契約不適合責任の特約制限の問題一覧

■問1
宅地建物取引業者は、自ら売主となる宅地又は建物の売買契約において、その目的物の瑕疵を担保すべき責任に関し、取引の相手方が同意した場合に限り、損害賠償の請求期間を当該宅地又は建物の引渡しの日から1年とする特約を有効に定めることができる。(取引の相手方は宅地建物取引業者ではないものとする) (2019問27-イ)

 

答え:誤り

本問は、売主が宅建業者、買主が非宅建業者なので8種制限が適用されます。

そして、本問は8種制限の一つである「瑕疵担保責任についての特約の制限」に関する内容です。 「瑕疵担保責任に関する特約」を定める場合、原則、民法と比べて買主に不利となる特約を締結することができません。

ただし、例外として、通知期間を引渡しから2年以上とすることは許されます。

民法では、瑕疵担保責任(契約不適合責任)を追及する場合、1年以内に、売主に対して契約不適合の旨を「通知」しなければならないと規定しています。

この「1年」を「引き渡しから2年」よりも長い期間で設定することはOKということです。

よって、本問は「請求期間を当該宅地又は建物の引渡しの日から1年とする特約」となっているので誤りです。

「改正民法」と「瑕疵担保責任の特約制限」の関連については、「個別指導」で細かく解説します!


■問2
宅地建物取引業者Aが、自ら売主として締結する売買契約について、
Aが宅地建物取引業者ではないBとの間で締結する宅地の売買契約において、当該宅地の種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任を負う期間をBがその不適合を知った時から2年とする特約を定めた場合、この特約は有効である。(2020問42-1)

 

答え:誤り
売主が宅建業者、買主が宅建業者でない者の場合において
契約不適合責任を負う期間については、民法における債権の消滅時効期間よりも不利な特約を定めることはできません。

民法における債権の消滅時効期間は「①不適合を知ったときから5年」かつ「②引渡しから10年」です。

本肢の「不適合を知った時から2年とする特約」は①よりも不利な特約なので無効です。


■問3
売主業者Aが宅地建物取引業者ではないEとの間で締結する建物の売買契約において、Aは当該建物の種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任を一切負わないとする特約を定めた場合、この特約は無効となり、Aが当該責任を負う期間は当該建物の引渡日から2年となる。 (2020問42-4)

 

答え:誤り

売主が宅建業者、買主が宅建業者でない者の場合
原則、「民法の契約不適合責任」の規定よりも買主に不利な特約はしてはいけません。

例外として、上記通知期間を、物件を「引渡した日から2年以上」とする特約は有効です。

よって、本肢の契約不適合責任を一切負わない」特約は無効となります。

特約が無効となった場合、民法のルールが適用されるので
売主業者Aが担保責任(契約不適合責任)を負う期間は「①不適合を知ったときから5年」かつ「②引渡しから10年」です。

よって、本肢は「引渡日から2年」となっているので誤りです。

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