抵当権と賃借人の重要ポイントと解説

抵当権と賃借人のポイント一覧

  1. 抵当権と賃借権の優劣は、登記の前後による
  2. 賃借人は登記がなくても、抵当権設定前に引渡しを受けていれば、賃借人は抵当権者に対抗できる
  3. 抵当権設定後でも、抵当権者の同意の登記がある場合、賃借人は抵当権者に対抗できる

抵当権と賃借権の優劣抵当権と抵当不動産の賃借人との関係図です。債務者Aは、Bからお金を借り、A所有の建物に抵当権を設定した。その後、Aは第三者に当該抵当建物を賃貸した。

抵当権と賃借権の優劣は、登記の前後によって決まります。
つまり、「抵当権設定前にいた賃借人C」は賃借権を登記していれば、抵当権者Bに対抗できるということです。

また、借地借家法では、抵当権設定前に賃借人Cが引渡しを受けていれば、抵当権者Bに対抗できます。

抵当権設定後に現れた賃借人との関係

上記のとおり、原則として、抵当権設定後の賃借人は抵当権者に対抗できません
ただし、例外として、抵当権者に対抗できる場合があります。

  1. 抵当権者の同意の登記がある場合
  2. 平成16年4月1日の時点で現に存在する短期賃借権(これは覚える必要ありません)
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抵当権と賃借人の問題一覧

■問1
AはBから2000万円を借り入れて土地とその上の建物を購入し、Bを抵当権者として当該土地及び建物に2000万円を被担保債権とする抵当権を設定し、登記した。Bの抵当権設定登記後にAがDに対して当該建物を賃貸し、当該建物をDが使用している状態で抵当権が実行され当該建物が競売された場合、Dは競落人に対して直ちに当該建物を明け渡す必要がない。 (2010-問5-3)

 

答え:正しい

抵当権者に対抗できない賃借人Dは競落人が建物を買い受けた日から6ヵ月間に限り建物を明け渡しが猶予されます。

つまり、「Dは競落人に対して直ちに当該建物を明け渡す必要がない」という記述は正しいです。

本問を「建物の明け渡し猶予制度」と呼ぶのですが、これはしっかり流れを理解しておかないと、本試験では使えない知識となります。

本試験で使えない知識をどれだけ持っていても仕方がないので、「個別指導」では、試験でも使えるように体系的に解説しています!


■問2
Aは、Bからお金を借入、その担保として抵当権が設定されている甲建物を所有しており、抵当権設定後に、甲建物を賃借人Cに対して賃貸した。Cは甲建物に住んでいるが、賃借権の登記はされていない。抵当権が実行されて、Dが甲建物の新たな所有者となった場合であっても、Cは民法第602条に規定されている短期賃貸借期間の限度で、Dに対して甲建物を賃借する権利があると主張することができる。 (2008-問4-2)

 

答え:誤り

本問では、「①抵当権設定」→「②賃借人が甲建物の引渡しを受ける」→「③競売にかけられ新たな所有者が現れる」
といった流れです。

つまり、抵当権設定後に賃借人は甲建物を引渡してもらっているため、抵当権が賃借権より優先する(抵当権者が勝つ)わけです。そして、抵当権の実行(競売)によって甲建物を取得した「新たな所有者」も賃借人Cに対抗できるわけです。

逆をいうと、賃借人Cは抵当権実行(競売)による競落人Dに対抗できません。ただし、対抗できないからといってすぐ明渡す必要はなく、競落人が所有権を取得してから6ヶ月以内に賃借人Cは明渡せばいいとしています。これを「建物の明渡猶予制度」と言います。したがって、「Cは短期賃貸借期間の限度で、Dに対して甲建物を賃借する権利があると主張することができる」が誤りです。そして、本問は旧制度と混乱させる問題です。

本問の「短期賃貸借」は平成16年3月31日に廃止された内容です。そのため、これ以降にお伝えする内容は覚える必要はありません。参考までにしてください。

建物の賃貸借の場合、契約期間が3年以内の賃貸借を短期賃貸借というのですが、抵当権が登記された後に賃借権が設定された場合であっても、その賃借権が短期賃借権であるならば、その賃借権は抵当権に対抗できるという制度が平成16年3月31日まではありました。

しかし、この制度は廃止されて、本問のポイントである「建物の明け渡し猶予制度」ができたわけです。


■問3
Aは、Bからお金を借入、その担保として抵当権が設定されている甲建物を所有しており、抵当権設定後に、甲建物を賃借人Cに対して賃貸した。Cは甲建物に住んでいるが、賃借権の登記はされていない。Aが借入金の返済のために甲建物をFに任意に売却してFが新たな所有者となった場合であっても、Cは、FはAC間の賃貸借契約を承継したとして、Fに対して甲建物を賃借する権利があると主張することができる。 (2008-問4-4)

 

答え:正しい

任意売却の場合、売却前に賃借権の対抗要件を備えていれば、新所有者に対抗できます。

したがって、「賃借人Cが建物の引渡しを受ける」→「任意売却」という順なので、賃借人が対抗力を持ちます。

つまり、建物の賃借人Cは、建物の賃借権をFに主張することができます。

任意売却も含めて詳しい解説は「個別指導」でお伝えします!

もちろん図も表もあります。


■問4
BはAに対して自己所有の甲建物に平成15年4月1日に抵当権を設定し、Aは同日付でその旨の登記をした。Bは、平成16年12月1日に甲建物をFに期間2年の約定で賃貸し、同日付で引き渡した。Fは、この賃貸借をAに対抗できる。 (2005-問6-4)

 

答え:誤り

抵当権者の対抗要件は「抵当権設定登記」で、一方、建物賃借人の対抗要件は「賃借権の登記 or 建物の引渡し」です。

本問を見ると、平成15年4月1日に抵当権者Aは抵当権設定登記をし、その後、平成16年12月1日に建物賃借人Fは建物の引渡しを受けています。

つまり、抵当権者Aの方が対抗要件を備えるのが早いので、AはFに対抗できるわけです。

本問から色々派生させて勉強ができます!つまり、関連付けながら一つのストーリーとして複数のことを学ぶことができます!

このように1問から色々つながりをもって学習ができると効率的です!

この点については「個別指導」で解説していますので、是非、あなたも効率的な勉強を行ってください!

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