抵当権の順位変更のポイント一覧
- 順位を変更する場合に、利害関係人がいるときは、その利害関係人の承諾を得る必要がある
- 順位の変更をした場合、登記をしなければ効力がありません
抵当権の順位とは?
一つの目的物に対して、いくつでも抵当権を設定できます。
そして、登記の順番によって抵当権の順位が決まっています。
この抵当権の順番が優先弁済の順番となっています。
つまり、1番抵当権と2抵当権がいれば、1番抵当権者から優先的に弁済されます。
⇒ 被担保債権の及ぶ範囲
抵当権の順位変更とは?
抵当権の順位の変更とは
1番抵当権、2番抵当権などの順位を変更することで優先弁済される順番を変えることです。
例えば、
AがBから2000万円借り、A所有の不動産(担保価値1000万円)に抵当権を設定した。
その後、AはCより1000万円借り、同じ不動産に抵当権を設定した。
この場合、BとCとの間で順位の変更をすればCはBに優先して債権を回収できます。
ここで、順位を変更するには、各抵当権者の合意で順位変更することができるのですが、利害関係人がいるときは承諾を得る必要があります。
順位の変更をした場合、登記をしなければ効力がありません。
「抵当権の順位譲渡・抵当権の順位放棄」、「抵当権の譲渡・抵当権の放棄」については個別指導で詳しく解説します!
抵当権の順位変更等の問題一覧
■問1(抵当権の順位変更)
Aは、A所有の甲土地にBから借り入れた3,000万円の担保として抵当権を設定した。 AがEから500万円を借り入れ、これを担保するために甲土地にEを抵当権者とする第2順位の抵当権を設定した場合、BとEが抵当権の順位を変更することに合意すれば、Aの同意がなくても、甲土地の抵当権の順位を変更することができる。 (2016-問4-3)
答え:正しい
抵当権の順位変更をする場合、以下の要件を満たさないといけません。
1.順位変更する抵当権者全員の合意があること
2.利害関係人の承諾があること 3.順位変更の登記をすること
本肢の抵当権設定者Aは、利害関係者に該当しません。したがって、Aの合意がなくても、抵当権者BとDの合意があれば、抵当権の順位を変更することが可能です。
※利害関係人とは、転抵当権者を指します。
抵当権の順位変更や順位譲渡、順位放棄等、色々ありますがこれらについては個別指導で細かく解説しています。しっかり理解しておかないと引っかかるので、きちんと理解しておきましょう!
■問2(抵当権の順位放棄)
債務者Aが所有する甲土地には、債権者Bが一番抵当権(債権額2,000万円)、債権者Cが二番抵当権(債権額2,400万円)、債権者Dが三番抵 当権(債権額4,000万円)をそれぞれ有しており、Aにはその他に担保権を有しない債権者E(債権額2,000万円)がいる。甲土地の競売に基づく売却 代金5,400万円を配当する場合に関して、BがDの利益のため、抵当権の順位を放棄した場合、Bの受ける配当は1,000万円である。 (2015-問7-4)
答え:正しい
BがDのために抵当権の順位放棄をした場合
①「抵当権の順位放棄をした者」と「抵当権の順位放棄を受けた者」が持つ順位放棄前の優先弁済権の合計を出す(順位譲渡と同じ)
②その合計額を債権額の割合に応じて分ける
問題文では「BがDの利益のため、抵当権の順位を放棄した」となっているので、
①BとDの優先弁済権の合計額は3000万円
②BとEの優先弁済権の割合は
B:E=2000万円:4000万円=1:2です。( 1+2=3←これが分母となる )
つまり、3000万円についてBが1/3、Eが2/3の割合で分けるわけです。
したがって、
Bの優先弁済権(配当)=3000×1/3=1000万円
Eの優先弁済権(配当)=3000×2/3=2000万円
つまり、Bが受ける配当は1000万円なので、本問は正しいです。
抵当権の譲渡、抵当権の順位譲渡、抵当権の放棄、抵当権の順位放棄は2つ計算式だけで答えを導けます!
その計算式は「個別指導」で解説します!
■問3(抵当権の順位譲渡)
債務者Aが所有する甲土地には、債権者Bが一番抵当権(債権額2,000万円)、債権者Cが二番抵当権(債権額2,400万円)、債権者Dが三番抵 当権(債権額4,000万円)をそれぞれ有しており、Aにはその他に担保権を有しない債権者E(債権額2,000万円)がいる。甲土地の競売に基づく売却 代金5,400万円を配当する場合に関して、BがDの利益のため、抵当権の順位を譲渡した場合、Bの受ける配当は800万円である。 (2015-問7-2)
答え:誤り
BからDに抵当権の順位譲渡がされた場合
①「Bが有している2,000万円の優先弁済権」と「Dが有している1000万円の優先弁済権」を合計する。
すると、2000万円+1000万円=3000万円となる
②順位譲渡受けたDから弁済してもらうので、Dが3000万円の弁済(配当)を受け、Eは1円も受領できません。
したがって、本問は誤りです。
抵当権の譲渡、抵当権の順位譲渡、抵当権の放棄、抵当権の順位放棄は2つ計算式だけで答えを導けます!
その計算式は「個別指導>」で解説します!
■問4
AがBとの間で、CのBに対する債務を担保するためにA所有の甲土地に抵当権を設定する場合と根抵当権を設定する場合について抵当権の場合には、BはCに対する他の債権者の利益のために抵当権の順位を譲渡することができるが、元本の確定前の根抵当権の場合には、Bは根抵当権の順位を譲渡することができない。 (2014-問4-4)
答え:正しい
抵当権は順位譲渡できます。
一方、根抵当権は元本確定前の場合、順位譲渡できません。
これはそのまま覚えてもいいですね。
ただ、順位譲渡の意味は理解すべきです!「個別指導」では順位譲渡はもちろん解説しています!
■問5
抵当権について登記がされた後は、抵当権の順位を変更することはできない。 (2013-問5-4)
答え:誤り
登記の後であっても、抵当権の順位を変更することができます。
ただし、利害関係者がいるときは、利害関係者の承諾を得なければなりません。
これも複数の知識が必要なので「個別指導」で解説しています!
■問6
AはBから2,000万円を借り入れて土地とその上の建物を購入し、Bを抵当権者として当該土地及び建物に2,000万円を被担保債権とする抵当権を設定し、登記した。AがBとは別にCから500万円を借り入れていた場合、Bとの抵当権設定契約がCとの抵当権設定契約より先であっても、Cを抵当権者とする抵当権設定登記の方がBを抵当権者とする抵当権設定登記より先であるときには、Cを抵当権者とする抵当権が第1順位となる。 (2010-問5-1)
答え:正しい
本問では、抵当権の設定「契約」の順序はB→Cですが、抵当権設定「登記」の順序はC→Bです。そして、抵当権の順位は登記をした順になります。つまり、先に登記したCが1番抵当権者、Bが2番抵当権者となります。抵当権の設定契約の先後で順位は決まりません。
少しわかりづらいので、「個別指導」では図を使って解説しています!
■問7
Aは、Bから借り入れた2,400万円の担保として第一順位の抵当権が設定されている甲土地を所有している。Aは、さらにCから1,600万円の金銭を借り入れ、その借入金全額の担保として甲土地に第二順位の抵当権を設定した。抵当権の実行により甲土地が競売され3,000万円の配当がなされる場合、BがCに抵当権の順位を譲渡していたときは、Bに1,400万円、Cに1,600万円が配当され、BがCに抵当権の順位を放棄していたときは、Bに1,800万円、Cに1,200万円が配当される。 (2006-問5-1)
答え:正しい
■抵当権の順位譲渡
抵当権の順位譲渡は、順位譲渡した者とされた者の間で、弁済の優先順位を変更するものです。
まず、抵当権の順位譲渡をした者と抵当権の順位譲渡を受けた者が持つ優先弁済権の合計を出します。
その合計額から順位譲渡を受けた者が優先的に弁済してもらえます。
まず、順位変動がない場合の優先弁済権はB:1番2400万円、C:2番600万円となります。
つまり、B・Cの受けれる優先弁済権の合計は3000万円です。
そして、BがCに順位譲渡したということは、Cが先に優先弁済を受けるので、Cは債権額1600万円の弁済を受け、Bが残り1400万円を受けます。
そのため、前半は○です。
■抵当権の順位放棄
抵当権の順位放棄は順位放棄した者と放棄された者が同一順位となり、債権額の割合で按分する(割合に応じで分ける)ものです。 まず、順位放棄前のB、Cの受けられる優先弁済権の合計は順位譲渡の場合と同様3000万円です。BとCの債権の割合は2400:1600=3:2です。つまり、Bが3000万円の5分の3=1800万円、Cが3000万円の5分の2=1200万円という風に分けるわけです。
そのため、後半も○です。
理解しながら学習をしていきましょう!
■問8
Aは、Bから3,000万円の借金をし、その借入金債務を担保するために、A所有の甲地と、乙地と、乙地上の丙建物の上に、いずれも第1順位の普通抵当権 (共同抵当)を設定し、その登記を経た。その後甲地については、第三者に対して第2順位の抵当権が設定され、その登記がされたが、第3順位以下の担保権者 はいない。この場合、Bと、甲地に関する第2順位の抵当権者は、合意をして、甲地上の抵当権の順位を変更することができるが、この順位の変更は、その登記をしなければ効力が生じない。 (2001-問7-4)
答え:正しい
「抵当権の順位変更は、その登記をしなければ効力を生じない」とうことはそのまま覚えればよいですが、抵当権の順位変更をするとどうなるか?を理解しておきましょう。
この点については、「個別指導」では、具体例を用いて解説しています。