留置権のポイント一覧
- 留置権は動産だけでなく不動産についても成立する
- 留置権者は、善管注意義務を負う
- 必要費償還請求権に基づいて建物を留置することはできる
- 造作買取請求権に基づいて建物を留置することはできない
- 留置権に物上代位性はない
留置権とは?
例えば、壊れた時計を修理に出し、修理完了後、所有者に引き渡そうとしたら、所有者が
「修理代金は後日払うから、先に時計を渡してくれ」と言いました。
この場合、時計屋さんは修理代金をもらうまで、時計を渡さないで(留置して)おけます。
この権利を留置権といいます。
上記は「時計」という動産についての具体例ですが、「不動産」も留置権の対象となります。
留置権者による留置物の保管
留置権者は、善良な管理者の注意をもって、留置物を占有しなければなりません(善管注意義務を負う)。
留置権者は、留置物の占有中に、留置物を使用・賃貸するためには、原則、債務者の承諾が必要です。
必要費償還請求権に基づいて建物を留置することはできる
建物の賃借人が建物に関して必要費を支出した場合 、その後、賃貸人(オーナー)が必要費を支払ってくれない場合、賃借人は建物を留置することはできます。つまり、賃借人は賃貸借契約終了後も、建物の明渡しを拒むことができます。
造作買取請求権に基づいて建物を留置することはできない
造作とは、簡単に言えば、畳やふすま、エアコンなどの建物の設備等を言います。
建物の賃貸借において、借主がオーナー(貸主)に対して「エアコン付けさせてください!」と言って、借主がエアコンを設置した場合、借家契約が修了する際に、借主は貸主に対して「エアコンを買い取ってもらえる権利」があります。これが造作買取請求権です!
そして、借主がエアコンを買い取ってもらえる権利があるにもかかわらず、オーナーがその代金を支払わない場合であっても、 借主は「代金を払ってくれないなら建物を明渡ません!」と主張できません。つまり、オーナーがエアコン台の代金(造作買取の代金)を支払わなかったとしても、借主は建物を留置することはできない(明渡を拒むことができない)です。
留置権は物上代位ができない
留置権に物上代位ができない点にについては、物上代位のページでご説明いたします。
ここでは、留置権は物上代位性が認められないとだけ覚えておいてください。
留置権の問題一覧
■問1
建物の賃借人が建物に関して必要費を支出した場合、賃借人は、建物所有者ではない第三者が所有する敷地を留置することはできない。(2013-問4-4)
答え:正しい
建物の賃借人が建物に関して必要費を支出した場合 、建物を留置することはできます。
これは、建物賃借人と建物賃貸人との間の債権債務の話で 建物の下の土地の所有者である第三者には関係ない話です。
つまり、建物賃借人は、建物所有者ではない第三者が所有する敷地までは留置することはできません。
簡単にいえば、建物賃借人は土地所有者には対抗できないわけです。
これもしっかり理解しておかないといけない部分です。
では何を理解するのか?
それは、「個別指導」で解説しています!
■問2
建物の賃貸借契約が賃借人の債務不履行により解除された後に、賃借人が建物に関して有益費を支出した場合、賃借人は、有益費の償還を受けるまで当該建物を留置することができる。 (2013-問4-3)
答え:誤り
建物の賃借人が、債務不履行により賃貸借契約を解除された後に 権原のないことを知りながらその建物を不法に占有する間に有益費を支出しても建物を留置できません。
なぜなら、そもそも、不法に占有しているからです。
不法に占有して、建物の古いキッチンをシステムキッチンに変えたからその有益費を払うまで建物を明渡しません!
というのはおかしいですよね!
■問3
不動産が二重に売買され、第2の買主が先に所有権移転登記を備えたため、第1の買主が所有権を取得できなくなった場合、第1の買主は、損害賠償を受けるまで当該不動産を留置することができる。 (2013-問4-2)
答え:誤り
二重譲渡の対抗関係では、先に登記をした方が所有権を主張できます。
そして、先に登記をした者(第2買主)が第1買主に対して建物の引渡し請求をしてきた場合、 第1買主は建物を留置することはできず、建物を明渡さないといけません。
この場合、第1買主は、売主に損害賠償請求ができます。
しかし、損害賠償されるまで建物を留置することはできません。(判例)
これは、キチンと理解すべき問題です!
何を理解すべきか?「個別指導」で細かく解説しています!
■問4
建物の賃借人が賃貸人の承諾を得て建物に付加した造作の買取請求をした場合、賃借人は、造作買取代金の支払を受けるまで、当該建物を留置することができる。 (2013-問4-1)
答え:誤り
造作を留置することはできますが、造作買取請求権に基づいて建物を留置することはできません。
造作って? そう思いますよね! 簡単に言えば、畳やふすま、エアコンなどの建物の設備等を言います。
借主がオーナー(貸主)に対して「エアコン付けさせてください!」と言って、エアコンを設置した場合、借家契約が修了する際に、エアコンを買い取ってもらえる権利があります。
これが造作買取請求権です!
そして、借主がエアコンを買い取ってもらえる権利があるにもかかわらず、オーナーがその代金を支払わない場合、 借主は「それなら建物を明渡ません!」と主張できるか?というのが本問の質問内容です。
ちなみに、「建物を留置する」=「建物を明け渡さずに使い続ける」と言う意味合いです。
この点について法律では、造作買取請求権を借主が持っていたとしても、つまり、オーナーがエアコン台の代金(造作買取の代金)を支払わなかったとしても、借主は建物を留置することはできない(明渡を拒むことができない)となっています!
なぜでしょう?
それは使い古したエアコンなんて価値は数万円程度です。
それに対して、建物の賃料は1か月で数万円、数か月立ては数十万円と膨れ上がり、価値は対等ではなくなります。
だから、借主は建物を留置できないわけです。
でも、原則、エアコン台を請求する権利はある(造作買取請求権はある)ので、明け渡し後に請求する形になります!
これで理解できましたよね!?
こうやって、具体例を使って、頭でイメージしながら理解していかないと実力は付かないですよ!
「個別指導」ではこのように学習を進めるから実力が付くんです(^^)/
さらに「個別指導」では、関連のポイントも一緒に解説しています!
■問5
建物の賃借人が賃貸人に対して造作買取代金債権を有している場合には、造作買取代金債権は建物に関して生じた債権であるので、賃借人はその債権の弁済を受けるまで、建物を留置することができる。 (2007-問7-2)
答え:誤り
造作買取請求権に基づいて建物を留置することはできません。
したがって、「造作買取代金債権は建物に関して生じた債権であるので、賃借人はその債権の弁済を受けるまで、建物を留置することができる」という記述は誤りです。
この問題に関連して一緒に学習していただきたい部分があります。
この点については、「個別指導」で表にまとめてあるのでご確認ください!
色々分野をまたいだ解説なので、勉強していない部分もあるかもしれません。
その場合は、勉強していない分野は後で復習すればよいでしょう。
■問6
留置権者は、善良な管理者の注意をもって、留置物を占有する必要があるのに対し、質権者は、自己の財産に対するのと同一の注意をもって、質物を占有する必要がある。 (2009-問5-4)
答え:誤り
留置権者も質権者も、善良な管理者の注意をもって、留置物や質物を占有する必要があります。
つまり、留置権者や質権者は「善管注意義務」を負うと言う事です。
「個別指導」では留置物や質物以外で善管注意義務を負う場合についても具体例を用いて解説しています。
■問7
留置権は動産についても不動産についても成立する。 (2009-問5-3)
答え:正しい
留置権・先取特権とも、動産・不動産のどちらも成立します。
したがって、「先取特権は動産については成立するが不動産については成立しない」という記述は誤りです。
これは「動産の留置権」「動産の先取特権」「不動産の留置権」「不動産の先取特権」一つ一つ具体例を見ていくほうが理解しやすいので「個別指導」では一つ一つ具体例を出して解説していきます!