賃貸人Aと賃借人Bとが、居住目的で期間を3年として、借地借家法第38条の定期建物賃貸借契約(以下この問において「契約①」という。)を締結した場合と、定期建物賃貸借契約でも一時使用目的の賃貸借契約でもない普通建物賃貸借契約(以下この問において「契約②」という。)を締結した場合とに関する次の記述のうち、借地借家法の規定によれば、正しいものはどれか。
1.Bが建物の引渡しを受けた後にAが建物をCに売却して建物所有者がCに変わった場合、Bは、契約①の場合ではCに対して賃借人であることを主張できるが、契約②の場合ではCに対して賃借人であることを主張できない。
2.契約期間中は賃料の改定を行わない旨の特約を契約において定めていても、契約期間中に賃料が不相当になったと考えるに至ったBは、契約①の場合も契約②の場合も、借地借家法第32条に基づく賃料減額請求をすることができる。
3.Bが契約期間中に相続人なしで死亡した場合において、婚姻はしていないが事実上夫婦と同様の関係にあった同居者Dがあるときは、契約①の場合も契約②の場合も、Aに反対の意思表示をしないDは、建物の賃貸借契約に関し、Bの権利義務を承継する。
4.契約①の場合、公正証書によって契約をするときに限り契約の更新がないことを有効に定めることができ、契約②の場合、書面で契約し、かつ、Aに正当な理由がない限り、Aは契約の更新を拒絶することができなくなる。
1・・・ 誤り
本肢は、賃貸借契約の種類(定期建物賃貸借契約と普通建物賃貸借契約)によって、新しい所有者Cに対してBが賃借権を主張できるかどうかが問われています。
結論は、どちらの契約でも、BはCに賃借権を主張できるので誤りです。
まず、建物の賃貸借契約について、登記がなくても建物の引渡しがあれば賃借権を主張できると定められています(借地借家法31条)。
つまり、Bが建物をすでに引き渡されて使用している場合は、契約の種類に関係なく、建物の新しい所有者Cに対して「自分はこの建物を借りている」と主張できます。
このルールは、「契約①(定期建物賃貸借契約)」でも、「契約②(普通建物賃貸借契約)」でも同じで、引渡しを受けていれば新しい所有者に賃借権を主張できます。
契約の種類ではなく、「引渡しを受けているかどうか」が重要な条件となります。
本肢は「契約②では主張できない」となっているので誤りです。
2・・・ 誤り
この問題は、契約①(定期建物賃貸借契約)と契約②(普通建物賃貸借契約)で、賃料の減額請求ができるかどうかを問うものです。
1. 契約①:定期建物賃貸借契約の場合
定期建物賃貸借契約では、賃料の改定に関する特約を設けることができます。つまり、「契約期間中は賃料を変更しない」という約束をしておけば、たとえ賃料が不相当になったと借主Bが感じても、賃料の減額請求はできません。これは借地借家法38条9項で認められています。
2. 契約②:普通建物賃貸借契約の場合
普通建物賃貸借契約では、賃料の減額請求を禁止する特約は無効です。たとえ契約で「賃料は変更しない」と決めていても、経済状況の変化や近隣相場と比較して賃料が不相当になった場合には、借主Bは借地借家法第32条1項に基づいて賃料の減額請求ができます。
つまり、まとめると
- 契約①(定期建物賃貸借契約)では、賃料減額請求は認められない。
- 契約②(普通建物賃貸借契約)では、賃料減額請求が認められる。
このため、「どちらの契約でも賃料減額請求ができる」という本肢の記述は誤りです。
この点は、関連ポイント・周辺知識も含めて整理しておく必要があるので、個別指導で解説します!
3・・・ 正しい
問題文の状況は次の通りです。
- 賃借人Bが賃貸契約中に亡くなった。
- Bには相続人がいない。
- Bには婚姻届は出していないが、事実上夫婦のように暮らしていた同居者Dがいる。
この場合、契約①(定期建物賃貸借契約)でも契約②(普通建物賃貸借契約)でも、DはBの賃貸借契約を引き継ぎます。よって、正しいです・
賃借人が亡くなったとき、相続人がいない場合には、賃借人と事実上夫婦や養親子と同じ関係で同居していた人が権利や義務を引き継ぎます。
ただし、その同居者が1か月以内に契約を引き継ぎたくないと意思表示をすれば、契約を引き継ぐ必要はありません(借地借家法36条1項)。本肢は、上記のような「契約を引き継ぎたくないと意思表示をしていない」ので、正しい記述となります。
4・・・ 誤り
本肢は、契約①の内容も契約②の内容も誤りです。
1. 契約①定期建物賃貸借契約(定期借家契約)についての誤り
問題文では、定期借家契約は「公正証書」によらなければ契約の更新がないことを定められないと述べていますが、これは誤りです。
実際には、定期借家契約では、書面または電磁的記録(PDFなど)で契約をすれば、契約の更新がないことを有効に定められます。公正証書に限らなくてもよいのです。(借地借家法38条1項)
2.契約②普通建物賃貸借契約(普通借家契約)についての誤り
問題文では、普通借家契約では「書面で契約した場合は、賃貸人は更新拒絶ができなくなる」と述べていますが、これも誤りです。
実際には、普通借家契約では、契約の方式に決まりはなく、口頭でも成立します。そして、契約の更新を拒絶するためには、正当事由(建物の老朽化や自己使用の必要など)が必要です。書面かどうかは関係ありません。
令和6年(2024年):宅建試験・過去問
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