虚偽表示の重要ポイントと解説

虚偽表示のポイント一覧

  1. 虚偽表示当事者間では無効
  2. 虚偽表示では、善意の第三者は保護される
  3. そして、第三者に過失があっても、登記がなくても第三者が保護される

虚偽表示の言葉の意味

虚偽表示とは「謀り(はかり)ごとをして、嘘を言うこと」です。

嘘を言う点では心裡留保と同じですが、心裡留保は単独で本人のみ嘘をつくことであるのに対し、虚偽表示は相手方を巻き込んで嘘をつくことです。

そして、虚偽表示は「通謀虚偽表示(つうぼう虚偽表示)」とも言います。

虚偽表示は当事者間では無効

虚偽表示の成立要件は次の2つです。

  1. 虚偽の意思表示があること
  2. 相手方と通謀していること(相手方も巻き込んでいる)

重要なのは、虚偽表示の場合、当事者間では、意思表示は無効となります。

虚偽表示の具体例

例えば、 税金から逃れるために、実際は自分が所有している土地を信頼できる友人に 売ったこと(仮装譲渡)にし、友人の名義にしてしまうことです。 この場合、相手方を巻き込んで嘘をついているので、 心裡留保ではなく、虚偽表示になります。

表意者Aは、税金を滞納しており、A名義の土地があると、市から差押えを受けるため、当該土地の名義をBに移した。つまり、Aの意思表示は虚偽表示であった。この場合は、当事者間(AB間)の契約は、原則無効となる。

(虚偽表示)
民法94条 相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。
2 前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。

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虚偽表示における第三者との関係

当事者間の虚偽表示は無効ですが、 相手方Bが第三者Cに売却してしまったらどうなるだろう?

結論から言うと、本人Aは善意の第三者Cに対抗できません。つまり、第三者Cが善意の場合、本人Aは第三者Cに無効主張ができず、土地は第三者Cのものとなってしまいます。

表意者Aは、Bに対して自己所有の土地を仮装譲渡した。その後、Bは、当該仮装譲渡の事実を知らないC(善意の第三者C)に対して、当該土地を売却した。この場合、AB間では無効であっても、Aは第三者Cに対して無効を主張することができない。

これは、第三者Cに過失があっても、登記がなくても第三者が保護されます。
善意であればいいんです。

普通に考えれば、本人が謀りごとをして、嘘で売却したんだから、本人に責任はありますよね。
何も知らない第三者とどちらを保護するか考えれば、そりゃ、第三者を保護しますよね。

虚偽表示と転得者

【具体例】 例えば、Aは、債権者Bからの差押を免れるために、自己所有の土地を子C名義に登記していた。Cはその土地を、Cの所有に属しないことを知っているDに売却し、Dはその土地をE(転得者)に売却した。この場合、Aは、転得者Eに対し、土地の所有権を主張できるか?

虚偽表示の転得者との関係図です。

まず、民法94条2項では、「虚偽表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。」と規定しています。つまり、虚偽表示があった場合、善意の第三者が勝つことを意味しています。

ここで、94条2項の第三者とはどんな者か?を考えます。この点について、判例(最裁昭42.6.29)では、「虚偽の意思表示の当事者またはその一般承継人以外の者であって、その表示の目的につき法律上利害関係を有するに至った者」と言っています。分かりやすく言えば虚偽表示の目的物(具体例では、A所有の土地)について、虚偽表示の後に、新たに、土地に関して権利を取得した者が「第三者」ということです。今回の具体例では、AC間の虚偽表示の後に、Dが土地を購入しているので、Dは第三者といえます。

第三者Dが善意の場合

虚偽表示の転得者との関係。第三者が善意の場合の図です。

つまり、94条2項を考えると、第三者Dが善意であれば、第三者Dは保護され、DはAに対して所有権を主張することができます。また、この場合、転得者Eが悪意であろうが善意であろうが、Dは確定的に所有権を取得しているので、Dから有効に土地を取得した転得者Eは、Aに対して所有権を主張することができます

第三者Dが悪意の場合

虚偽表示の転得者との関係。第三者が悪意の場合の図です。

第三者Dが悪意の場合、第三者Dは、保護されないので、第三者DはAに対して所有権を主張することができません。では、転得者Eはどうか?この点について、判例では、転得者は94条2項の第三者に該当すると示しています。つまり、第三者Dが悪意であっても、転得者Eが善意であれば、Eは保護され、Aに対して所有権を主張することができます。逆に、転得者Eが悪意の場合は、Eは保護されず、Eは、Aに対して所有権を主張することができません

【問:虚偽表示と転得者/H5問3の類題】

Aがその所有地について、債権者Bの差押えを免れるため、Cと通謀してCに所有権を移転させた。
その後、Cの通謀について善意のDに当該土地を譲渡し、さらにDがEに譲渡した場合、EはEの善意悪意に関わらずAして対抗できる

【答】

Dが善意であることから、Dは確定的に土地の所有権を取得します。
そのため、Eが善意であろうが悪意であろうが、Dから当該土地を譲り受けたEも確定的に所有権を取得します。

つまり、Dが善意であれば、Eは善意悪意関係なく、EはAに対抗できる

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虚偽表示の問題一覧

■問1
Aは債権者の差押えを免れるため、Bと通謀してA所有地をBに仮装譲渡する契約をした。 BがAから所有権移転登記を受けていた場合でも、Aは、Bに対して、AB間の契約の無効を主張することができる。 (2000-問4-1)

 

 

答え:正しい

通謀虚偽表示では、当事者間では無効となります。 本問は、AとBは当事者間の関係なので、所有権の移転があろうがなかろうが関係なく、無効です。

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■問2
Aは債権者の差押えを免れるため、Bと通謀してA所有地をBに仮装譲渡する契約をした。 DがAからこの土地の譲渡を受けた場合には、所有権移転登記を受けていないときでも、Dは、Bに対して、その所有権を主張することができる。 (2000-問4-3)

 

 

答え:正しい

通謀虚偽表示では、当事者間では無効となります。 したがって、AB間の契約は無効です。(Bは無権利者) そして、AD間の売却は有効に行われているので、DはBに対して登記なくしてBに対抗できます。 ちなみ、Dは第三者にはなりません。 その理由は個別指導でお伝えします!


■問3
AB間の売買契約が、AとBとで意を通じた仮装のものであったとしても、Aの売買契約の動機が債権者からの差押えを逃れるというものであることをBが知っていた場合には、AB間の売買契約は有効に成立する。 (2007-問3-2)

 

 

答え:誤り

虚偽表示による当事者間(AB間)の意思表示(仮装で譲渡)は、無効です。 相手方Bが登記を備えたとしても無効です。 したがって、Bが知っていた場合、AB間の売買契約は無効です。


■問4
A所有の土地につき、AとBとの間で売買契約を締結した場合について、Aが、強制執行を逃れるために、A所有の甲土地を実際に売り渡す意思はないのにBと通謀して売買契約の締結をしたかのように装った場合、売買契約は無効である。 (2004-問2-2)

 

 

答え:正しい

「AはBと通謀して」と書いてあるので、虚偽表示の問題ということが分かります。 虚偽表示は当事者間(AB間)の意思表示は、無効です。 債権者が善意であろうが、悪意であろうが、過失があろうがなかろうが関係ありません。 この点は具体例がないと分かりづらいですし、理解しにくいですよね!? そのため、個別指導では具体例を使って、問題文がどのような状況なのかを解説し、さらに強制執行とはどのような制度かも解説しています!


■問5
Aは、自己所有の甲地をBに売却し引き渡したが、Bはまだ所有権移転登記を行っていない。AとFが、通謀して甲地をAからFに仮装譲渡し、所有権移転登記を得た場合、Bは登記がなくとも、Fに対して甲地の所有権を主張することができる。 (2003問3-4)

 

 

答え:正しい

AはFに仮装譲渡(グルになってウソの売買契約を結ぶこと)をしています。 「通謀虚偽表示」による譲渡を「仮装譲渡」ともいうのですが、ウソの売買契約なので、AF間の売買契約は無効です。 したがって、Fは無権利者です。 原則、登記がないと「第三者」に対抗できないのですが、無権利者Fは「第三者」に該当しません。 したがって、Bは登記がなくてもFに所有権を主張できます。


■問6
Aは債権者の差押えを免れるため、Bと通謀してA所有地をBに仮装譲渡する契約をした。 Cが、AB間の契約の事情につき善意無過失で,Bからこの土地の譲渡を受けた場合は,所有権移転登記を受けていないときでも,Cは,Aに対して,その所有権を主張することができる。 (2000-問4-2)

 

 

答え:正しい

通謀虚偽表示の無効は、善意の第三者に対抗できません。 つまり、善意の第三者が勝つわけです。 今回、Cは善意無過失なので、「善意」であることに違いはありません。 したがって、Cが勝ち、CはAに対して所有権を主張できます。


■問7
Aは債権者の差押えを免れるため、Bと通謀してA所有地をBに仮装譲渡する契約をした。 Eが,AB間の契約の事情につき善意無過失で,Bからこの土地の譲渡を受け,所有権移転登記を受けていない場合で,Aがこの土地をFに譲渡したとき,Eは,Fに対して,その所有権を主張することができる。 (2000-問4-4)

 

 

答え:誤り

今回、問題文を図にすると下記の通りです。

A→B→E

つまり、AはEとFの両方に譲渡した形になります。

つまり、EとFは二重譲渡の関係です。 二重譲渡では、先に登記をした方が勝ちます。(=所有権を主張できる) 本問は、Eは所有権移転登記を受けていません。 Fについては登記の有無の記載はありません。 したがって、この状況でEはFに所有権を主張できるとまではいえないので誤りです。


■問8
Aは、その所有する甲土地を譲渡する意思がないのに、Bと通謀して、Aを売主、Bを買主とする甲土地の仮装の売買契約を締結した。善意のCがBから甲土地を買い受けた場合、Cがいまだ登記を備えていなくても、AはAB間の売買契約の無効をCに主張することができない。 (2015-問2-1)

 

 

答え:正しい

虚偽表示では、善意の第三者は、当事者(AおよびB)に対抗できます。 今回Cは善意なので、Cは善意でありさえすれば、Aに所有権を主張できます。 本問は「善意のC」と書いてあるので、所有権の登記を備えていなくてもAに勝ちます。 逆を言えば、AはAB間の売買契約の無効をCに主張することができないので、正しい記述となります。

2では、登記の有無で判断するのに対し、本問は善意かどうかで判断します。 この違いについては重要なので個別指導でお伝えします!


■問9
Aは、その所有する甲土地を譲渡する意思がないのに、Bと通謀して、Aを売主、Bを買主とする甲土地の仮装の売買契約を締結した。善意のCが、Bとの間で、Bが甲土地上に建てた乙建物の賃貸借契約(貸主B、借主C)を締結した場合、AはAB間の売買契約の無効をCに主張することができない。 (2015-問2-2)

 

 

答え:誤り

土地が仮装譲渡された場合、「土地上の建物」の賃借人は、虚偽表示の第三者に該当しません。 したがって、Cは第三者に該当しないので、Cは保護されないです。 したがって、Cは所有権を主張できません。 言い換えればAはCに対しても無効を主張することができるわけです。 したがって、 「AはAB間の売買契約の無効をCに主張することができる」ので、本問は誤りです。

▼なぜ、土地が仮装譲渡された場合、「土地上の建物」の賃借人は、虚偽表示の第三者に該当しないのか? 理解するための解説は個別指導で解説します!


■問10
Aは、その所有する甲土地を譲渡する意思がないのに、Bと通謀して、Aを売主、Bを買主とする甲土地の仮装の売買契約を締結した。甲土地がBから悪意のCへ、Cから善意のDへと譲渡された場合、AはAB間の売買契約の無効をDに主張することができない。(2015-問2-4)

 

 

答え:正しい

問題文の状況を図にすると

A→B→C→D

C:悪意
D:善意

転得者DもC同様、第三者として考えます。 つまり、転得者Dが善意であれば、転得者Dは保護されます。 言い換えれば、善意のDは所有権を主張できるので、 AはAB間の売買契約の無効をDに主張することができないです。


■問11
民法第94条第2項は、相手方と通じてした虚偽の意思表示の無効は「善意の第三者に対抗することができない。」と定めている。Aが所有する甲土地につき、AとBが通謀の上で売買契約を仮装し、AからBに所有権移転登記がなされた場合に、B名義の甲土地を差し押さえたBの債権者Cは「第三者」に該当する。 (2012-問1-1)

 

 

答え:正しい

「差押え権者」は、虚偽表示における法律上の「第三者」です。 したがって、差押権者Cは「第三者」に該当する旨の記述は正しいです。


■問12
民法第94条第2項は、相手方と通じてした虚偽の意思表示の無効は「善意の第三者に対抗することができない。」と定めている。Aが所有する甲土地につき、AとBの間には債権債務関係がないにもかかわらず、両者が通謀の上でBのために抵当権を設定し、その旨の登記がなされた場合に、Bに対する貸付債権を担保するためにBから転抵当権の設定を受けた債権者Cは「第三者」に該当する。 (2012-問1-2)

 

答え:正しい

判例では、「仮装した抵当権設定登記」がされた後の「転抵当権者」は「虚偽表示の第三者」に該当します。

問題を時系列にすると
① 虚偽表示により、BがA所有の甲土地の抵当権者となる
② CがBにお金を貸す
③ CがBの抵当権の転抵当権者となる。(①の抵当権に抵当権を設定する=転抵当)

Bを抵当権者とする仮装した抵当権設定登記がされたのち、善意のCを権利者とする「転抵当権設定登記」がされた場合、 転抵当権者Cは虚偽表示における第三者として保護されます。


■問13
民法第94条第2項は、相手方と通じてした虚偽の意思表示の無効は「善意の第三者に対抗することができない。」と定めている。Aが所有する甲土地につき、AとBが通謀の上で売買契約を仮装し、AからBに所有権移転登記がなされた場合に、Bが甲土地の所有権を有しているものと信じてBに対して金銭を貸し付けたCは「第三者」に該当する。 (2012-問1-3)

 

 

答え:誤り

単なる債権者は、虚偽表示における第三者に該当しません。
問題を時系列にすると
① 虚偽表示でAがBに甲土地の所有権を移転
② Bにお金を貸したC
CはBにお金を貸しただけで、甲土地の抵当権を取得したり、差し押さえたりしていません。
Cは、抵当権を設定したり、差押えをしたりしていないので、Cは単なる債権者(法律上の利害関係人とまでは言えない)ので、第三者に該当しません。


■問14
民法第94条第2項は、相手方と通じてした虚偽の意思表示の無効は「善意の第三者に対抗することができない。」と定めている。AとBが通謀の上で、Aを貸主、Bを借主とする金銭消費貸借契約を仮装した場合に、当該仮装債権をAから譲り受けたCは「第三者」に該当する。 (2012-問1-4)

 

 

答え:正しい

判例により、虚偽表示による契約から生じた仮装債権の譲受人は第三者に該当します。

① 虚偽表示でAはBにお金を貸したことにする。(Aは債権者)
② Aがもつ貸金債権をCが譲り受ける(Cは虚偽表示による契約から生じた仮装債権の譲受人)
Cが有する貸金債権は虚偽表示の目的物ともいえます。

今回、Cは、虚偽表示による契約から生じた仮装債権なので、上記判例により「第三者」に該当します。

問6~9についても「基本的な考え方」があり、その考え方に基づいて判例が導かれています。 つまり、基本的な考え方が頭に入っていれば答えを導けるようになります! この点については、個別指導でお伝えします!


■問15
AがBから甲土地を購入したところ、甲土地の所有者を名のるCがAに対して連絡してきた。Cは債権者の追及を逃れるために売買契約の実態はないのに登記だけBに移し、Bがそれに乗じてAとの間で売買契約を締結した場合には、CB間の売買契約が存在しない以上、Aは所有権を主張することができない。 (2010-問4-4)

 

 

答え:誤り

C→B→A

通謀虚偽表示(ウソの契約)を行うと、当事者間(BC間)の契約は無効です。 したがって、CはBに対して甲土地を返すよう主張できます。 ただし、本問は、さらにBがCに甲地を売却しています。つまり、第三者が存在する場合はどうなるのか? 第三者Aが善意であれば(虚偽表示の事実をしらなければ)、第三者Aは所有権を主張できます。 したがって、 「Aは所有権を主張することができない。 」という記述は誤りです。 本問は単に上記を覚えるだけでなく、キチンと理解すべき問題です。 どのように理解すべきかは個別指導で解説します!


■問16
A所有の甲土地をAとBが通じてした仮装の売買契約をした。そして、Bに所有権移転登記を行った後、CはBとの間で売買契約を締結した。この場合、CがAB間の売買契約が仮装であることを知らず、知らないことに無過失であっても、Cが所有権移転登記を備えていなければ、Aは所有者であることをCに対して主張できる。 (2008-問2-2)

 

 

答え:誤り

「仮装」という言葉があるので、虚偽表示の問題ということが分かります。 そして、第三者Cは善意(仮装であることを知らず)・無過失です。 虚偽表示では、本人Aは善意の第三者Cに対抗できません。つまり、本人Aは善意のCに所有者であることを主張できません。 したがって、本問は誤りです。

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