はじめに
都市計画事業は、都市の整備や再開発、さらには地域の魅力向上を目的として行われる工事全般を意味します。たとえば、地域住民が憩いの場として利用する「公園」を新たに整備する場合や、中心市街地の再生を目指す「市街地開発事業」など、いずれも建築工事を伴うため、計画段階から工事の進行まで一連の手続きや制限が設けられています。宅建試験においても、こうした制度の趣旨や流れ、各段階での建築制限の内容を理解しておくことは非常に重要です。以下、具体例を交えながら、都市計画事業の基本的な概念と各段階での制限について、わかりやすく解説していきます。
都市計画事業とは
基本的な考え方
都市計画事業とは、都市の機能向上や安全・快適な環境整備を目的とし、実際の建築工事を伴う事業全般を指します。たとえば、市の中心部に新たな公園を整備する計画が立てられた場合、そこには歩道や遊具、植栽など、具体的な施設が設置されることになります。このような工事は「都市計画事業」に該当します。また、広い区域を対象とする市街地再開発事業も同様に都市計画事業として扱われ、都市の未来を左右する大規模な計画となります。
認可・承認の必要性
都市計画法では、こうした具体的な整備計画について、都道府県知事または国土交通大臣の認可・承認が必要であると定めています(59条、60条)。つまり、たとえばある自治体が新しい公園整備の計画を立案した場合、いきなり工事に取りかかることはできず、まずは行政の認可や承認を受けなければなりません。さらに、これらの都市計画事業に関しては、土地収用法に基づく事業認定は行われず、「都市計画事業の認可又は承認の告示」がその代わりとされます(70条1項)。この仕組みにより、行政は事業が円滑に進むよう、また土地収用の適正手続きも兼ね備えた管理を実現しています。
工事期間の長さとその対策
都市計画事業は大規模な工事であるため、完成までに数年を要することが一般的です。例えば、市街地再開発事業の場合、複数の建物の取り壊しや新設工事、インフラ整備などが順次実施されるため、工事期間は非常に長くなります。工事が長期間にわたると、その間に近隣の民間企業や住民が独自に建物を建てるなど、工事の進行に支障が生じる恐れがあります。そこで、都市計画法では、事業の各段階ごとに適切な建築制限を設け、計画の実現を確実にする仕組みが整えられているのです。
都市計画事業の進行の流れ
都市計画事業は、以下のような段階を経て進行します。
- 都市計画事業の決定の告示
事業の計画内容が決定され、その内容が告示される段階です。
告示された区域内では、工事の円滑な進行を妨げるおそれのある新たな建築行為が制限されます。 - 都市計画事業の認可・承認の告示
行政が計画の具体性や実現性を確認し、認可または承認を与え、その旨を告示します。
事業地内ではさらに厳しい建築や土地利用の制限が課され、工事開始が確実となります。 - 都市計画事業の完了
最終的に全ての工事が完了し、事業が正式に終了します。
たとえば、新たな公園整備計画においては、初めに計画決定の告示が出され、周辺住民に対して今後の工事内容が公示されます。その後、工事に必要な認可・承認が得られた段階で、周辺地域での無断の建築行為が厳しく制限され、最終的に整備が完了するという流れとなります。
都市計画施設の区域又は市街地開発事業の施行区域内の制限
背景と目的
都市計画施設とは、具体的な整備内容が都市計画で定められた施設のことです。これには、道路、公園、下水道設備など、都市の生活基盤を支える重要な施設が含まれます。こうした施設の整備が決定されると、その区域内では、後から独自の建築が行われると、整備工事が妨げられる可能性があります。したがって、都市計画施設の区域や市街地開発事業の施行区域内では、新たな建築行為について事前に都道府県知事(または市の区域内では市長)の許可を得る必要があります(53条1項本文)。
具体的な制限内容と例外
たとえば、ある地域で新たに公共施設の整備計画が決定された場合、その区域内で住宅や店舗などの新たな建築を行う際には、必ず都道府県知事や市長の許可が必要です。しかし、以下のような例外も定められています(53条1項但書)。
・都市計画事業の一環として行う行為
・政令で定める軽易な行為
・非常災害に対する応急措置としての行為
具体例として、災害発生時に応急的に避難所として仮設施設を設置する場合などは、通常の許可手続きが適用されず、迅速な対応が可能となります。
知事の許可義務
さらに、都道府県知事等の許可が必要な建築行為のうち、特定の条件に該当する場合には、知事は必ず許可しなければならないとされています(54条)。たとえば、以下の条件を満たす建築物については、知事は許可を与える義務があります(54条3号):
・階数が2階以下で、地階を有さない
・主要構造が木造、鉄骨造などで、容易に移転または除却が可能なもの
具体的には、ある地域で低層住宅の建築計画が提出された場合、その住宅が上記の条件に該当すれば、知事は申請者に対して許可を出さなければならず、計画の整備に支障が生じないよう、建築行為が適切に管理されることになります。
都市計画事業の事業地内における制限
事業地の確定とその意義
都市計画事業が具体的に認可または承認され、その告示がなされると、その地域は「事業地」として確定されます。事業地内では、実際に整備工事が開始されるため、工事の進行に影響を及ぼすような行為は、より厳しく規制されます。ここでの制限は、周辺での無秩序な開発や、新たな建築が工事の邪魔にならないようにするためのものです。
具体的な制限事項
事業地内においては、以下のような行為を行う場合、都道府県知事等の許可が必要です(65条1項):
- 土地の形質の変更
・例えば、既存の平坦な土地を大規模な盛土や切土によって大きく変形させる行為。 - 建築物の建築その他工作物の建設
・新たなマンションや商業施設、仮設建物の設置など。 - 一定の移動の容易でない物件の設置もしくは堆積
・重量が大きく、固定された設備や構造物の設置。
具体例として、事業地内において大規模な工場建設の申請があった場合、これが将来的な工事の進行に影響を与える可能性があるため、事前に許可が求められる仕組みとなっています。
土地・建物の譲渡に関する手続き
さらに、都市計画事業の施行に関する公告の翌日から起算して10日が経過した後、事業地内の土地や建物等を有償で譲渡しようとする場合、原則として、その土地建物等の内容、予定対価の額、譲渡先などを、書面で施行者に届け出なければなりません(67条1項)。たとえば、ある不動産会社が認可告示後に事業地内の土地を売却しようとする場合、必ず所定の手続きに従い、書面での届け出が必要となるため、無断の取引が行われることは防がれます。
市街地開発事業等予定区域内の制限
予定区域の設定とその目的
ニュータウンなど大規模な都市再開発事業の場合、実際に事業を決定するまでに非常に長い期間がかかります。この期間中に、地域内で個別の建築行為が自由に行われると、後に計画全体が崩れてしまう恐れがあります。そこで、あらかじめ「市街地開発事業等予定区域」として、整備に適する土地を現状のまま保全する措置がとられます。具体例として、ある地域でニュータウン開発の計画が立案された場合、まずはその区域が「市街地開発事業等予定区域」として指定され、その区域内での新たな建築や大きな土地改変が厳しく制限されます。
予定区域内の建築等の制限
市街地開発事業等予定区域が決定されると、その告示の日から都市施設の整備や市街地開発事業の決定の告示の日までの間、区域内での以下の行為が制限されます(52条の2):
・建築物の新築、その他工作物の建設
・土地の形質の変更など
この制限は、都市計画施設の区域や市街地開発事業の施行区域内の制限よりもさらに厳しく設定されており、計画の遂行に必要な土地利用の乱れを防ぐための重要な措置となっています。たとえば、予定区域内で商業施設や集合住宅が新たに建築されれば、後に計画されたニュータウン全体の整備に大きな障害となるため、このような行為は原則として認められません。
市街地開発事業等予定区域の進行の流れ
市街地開発事業等予定区域が定められた場合、以下の流れで制限が実施されます。
- 市街地開発事業等予定区域の決定の告示
・まず、予定区域が正式に決定され、その内容が告示されます。
・告示後、予定区域内での新たな建築や土地の改変行為が厳しく制限されます。 - 市街地開発事業または都市施設に関する都市計画の決定の告示
・予定区域を対象とした具体的な都市計画が策定・告示され、再度、区域内の利用について厳格な管理がなされます。 - 都市計画事業の認可・承認の告示
・最終的に、認可・承認が得られ、事業地内においてはさらに厳しい建築等の制限が適用され、整備工事が着手されます。 - 都市計画事業の完了
・全ての整備工事が終了し、事業が正式に完了します。
まとめ
本テキストでは、都市計画事業の基本概念から、その実施にあたって必要な認可・承認、さらに各段階での建築や土地利用に対する制限について、条文をそのまま用いながら具体例を交えて解説しました。都市計画事業は、計画段階、認可・承認段階、事業地内での厳格な制限、そして最終的な整備完了という一連のプロセスを経ることで、無秩序な開発を防ぎ、公共の利益や都市の整備計画を確実に実現するための制度です。たとえば、新たな公園の整備、低層住宅の建築、または大規模なニュータウン開発の各ケースにおいて、事前の告示や許可手続きが義務付けられることで、関係者全体が計画に沿った行動を取るようになっています。
このように、各段階で行政の厳しい管理と建築制限が設けられていることを理解することで、実務に携わる際はもちろん、宅建試験で問われる都市計画事業の知識をしっかりと身につけることができるでしょう。初学者の皆さんは、まずこの基本的な流れと具体例をしっかりと理解し、各条文の意義や目的を頭に入れておくことが、試験合格への第一歩となります。
