損害賠償請求のポイント一覧
- 損害賠償請求ができる場合は、①不法行為が成立する場合と、②債務不履行があった場合
- 不法行為による損害賠償の場合、裁判所は過失相殺をすることができる(任意)
- 債務不履行による損害賠償請求の場合、裁判所は、必ず過失相殺をしなければならない(義務)
- 物を壊した場合の(不法行為による物損)損害賠償請求権の消滅時効期間は、①被害者又はその法定代理人が「損害」及び「加害者」を知った時から3年間、または、②不法行為の時(物を壊されたとき)から20年間
- 人の生命又は身体の侵害(不法行為による人損)による損害賠償請求権の消滅時効は、①権利を行使することができることを知った時から5年間、または、②権利行使できる時から20年間
損害賠償請求とは?
損害賠償請求とは、相手の違法な行為により、損害を被った場合に、「お金」という形で、支払ってと請求することです。
損害賠償請求ができる場合
- 不法行為が成立して、自らが損害を被った場合
- 相手方が債務不履行に陥り、自らが損害を被った場合
1の具体例として、加害者Aが車を運転していて、前方不注意でBを引いてしまった場合、Aの不法行為を理由に、被害者Bは、Aに対して損害賠償請求ができます。
2の具体例として、売主A、買主Bとして、建物の売買契約を締結した。10月20日に代金支払いと同時に建物を引渡す約束であったが、売主Aが、10月20日に、建物から引っ越すことができず、買主Bに引き渡すことができなかった。これによって、買主Bは住む場所が一時的になくなり、ホテル暮らしを余儀なくされた。この場合、ホテル代金等が「損害」となるので、損害賠償請求が可能です。
損害賠償と過失相殺
不法行為による損害賠償と過失相殺
交通事故などで例えると、
どちらか一方が100%悪い場合もありますが、本人も20%悪い場合などもございます。
このような場合、過失の割合に応じて、損害を公平に分担します。
これを過失相殺と言います。
そして、裁判になった際、裁判所は、お互いの過失の割合を見極めて、過失相殺をすることができます。(必ずしも過失相殺しなくてもよい)
債務不履行による損害賠償と過失相殺
売主A、買主Bとして、建物の売買契約を締結した。10月20日に代金支払いと同時に建物を引渡す約束であったが、売主Aが、Aの過失により、10月20日に、買主Bに引き渡すことができなかった。(Aの債務不履行)
売主Aが引き渡すことができなかった原因について、買主Bも関係してくる場合(買主Bにも責任がある場合)、裁判所は、買主Bの過失も考慮して損害賠償額を決定しなければいけません。(=過失相殺しなければならない:義務)
不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効
物損の場合
物を壊した場合の損害賠償請求権は、①被害者又はその法定代理人が「損害」及び「加害者」を知った時から3年間行使しないとき、または、②不法行為の時(物を壊されたとき)から20年間行使しないとき、時効によって消滅します。
人の生命または身体の侵害(人損)の場合
人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権は、①権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき、または、②権利行使できる時から20年間行使しないとき、時効によって消滅します。
損害賠償請求の問題一覧
■問1
債務の不履行に基づく人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権は、権利を行使することができる時から20年間行使しないときは、時効によって消滅する旨は民法の条文に規定されている。 (2015-問1-1)
答え:誤り
本問の「債務不履行に基づく人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権」は「①権利を行使できることを知った時から5年」または「②権利を行使できるときから20年」です。問題文自体誤っているので、民法の条文に規定されているはずがありません。
もし、 「債務不履行に基づく人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権」の消滅時効期間が分からなくても、解くテクニックがあります。それは「個別指導」でお伝えしている「民法の条文の解き方」をご覧ください!
■問2
不法行為による損害賠償債務の不履行に基づく遅延損害金債権は、当該債権が発生した時から10年間行使しないことにより、時効によって消滅する。 (2014-問8-2)
答え:誤り
不法行為による損害賠償債務の遅延損害金についても、不法行為に関する損害賠償請求権の期間制限のルールが適用されるとしています(判例)。つまり、「債権が発生した時から10年間」とする点が誤りです。
では、消滅時効はどうなるのか?
不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効は ①被害者が損害及び加害者を知った時から3年です。 または、
②不法行為の時から20年を経過した場合も損害賠償請求権は消滅します。
つまり①②の期間を過ぎると時効によって消滅します。
■問3
不法行為による損害賠償請求権の期間の制限を定める民法第724条における、被害者が損害を知った時とは、被害者が損害の発生を現実に認識したときをいう。 (2014問8-1)
答え:正しい
不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効は
①被害者が損害及び加害者を知った時から3年です。
または、
②不法行為の時から20年を経過した場合も損害賠償請求権は消滅します。(これが民法724条の内容です)
そして、①の「被害者が損害を知った時」とは、判例で「被害者が損害の発生を現実に認識したとき」としています。
したがって、本問は正しいです。
今回は特別に具体例を挙げてみます!
例えば、報道による名誉毀損について考えましょう。
ニュースを見ている方は身近なことなので分かりやすいと思います。
報道で名誉毀損を受けた場合、被害者がその報道(テレビや新聞、週刊誌)などを見なければ、数日間、名誉毀損を受けていることを認識していないことがあり ます。その後、知り合いから「こんな記事が報道されているよ!」とうわさを聞いて初めて損害の発生を認識することになります。
このような場合、被害者が損害を知った時とは、被害者が損害の発生を現実に認識した時をいうと解すべきと判例では言っています。
■問4
Aは、Bに建物の建築を注文し、完成して引渡しを受けた建物をCに対して売却した。本件建物に瑕疵があった場合に関して、CがBに対して本件建物の瑕疵に関して不法行為責任に基づく損害賠償を請求する場合、当該請求ができる期間は、Cが瑕疵の存在に気づいてから1年以内である。 (2014-問6-3)
答え:誤り
不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効は、被害者Cが損害及び加害者を知った時から3年です。
また、不法行為の時から20年を経過した場合も損害賠償請求権は消滅します。
これは、関連事項も併せて学習すると効率的なので、「個別指導」ではまとめて解説しています!
本試験で得点できるように、また、混乱しないようにしっかり頭を整理しておきましょう!
■問5
Aは、Bに建物の建築を注文し、完成して引渡しを受けた建物をCに対して売却した。本件建物に瑕疵があった場合に関して、Bが建物としての基本的な安全性が欠けることがないように配慮すべき義務を怠ったために本件建物に基本的な安全性を損なう瑕疵がある場合には、当該瑕疵によって損害を被ったCは、特段の事情がない限り、Bに対して不法行為責任に基づく損害賠償を請求できる。 (2014-問6-2)
答え:正しい
居住者等の生命、身体又は財産を危険にさらすような瑕疵(建物としての基本的な安全性を損なう欠陥)がある場合、注文者Aだけでなく建物の買主Cも、建築業者Bに対して、不法行為による損害賠償請求ができます。これは、平成19年の判例です!
ここで一つ注意していただきたいことがあります!
それは「個別指導」で解説します!
意外と勘違いしている方が多いので、この注意点には気を付けましょう!
■問6
買主の売主に対する瑕疵担保による損害賠償請求権には消滅時効の規定の適用があり、この消滅時効は、買主が売買の目的物の引渡しを受けた時から進行する。 (2014-問3-3)
答え:正しい
判例によると、買主の売主に対する契約不適合責任に基づく損害賠償請求権は、目的物の引渡後10年で消滅時効によって消滅するとしています。
つまり、契約不適合責任に基づく損害賠償請求権は買主が売買の目的物の引渡しを受けた時から進行するということです。
これは考え方を理解していたら解ける問題です(^^)/
考え方については「個別指導」でお伝えしています!
■問7
AB間でB所有の甲不動産の売買契約を締結した後、Bが甲不動産をCに二重譲渡してCが登記を具備した場合、AはBに対して債務不履行に基づく損害賠償請求をすることができる。 (2012-問8-3)
答え:正しい
BがAに売り渡した後に、BがCにさらに同じもの売った場合です。これは二重譲渡ですね。
BはAに甲土地を引渡す義務が生じます。しかし、Cが登記してしまっているため、Bは約束通りAに土地を引渡すことができません。
つまり、Bは履行不能(債務不履行)ということです。
債務不履行の場合、相手方は損害賠償請求ができます。
このように、単に「履行不能だから損害賠償請求できる」と考えて覚えるのではなく
①BはAに売却したにもかかわらず、その後Cにも売却した
②Cが登記を備えたから、Aに不動産を引渡せない=履行不能
③BはAに対して履行不能になったから、AはBに損害賠償請求ができる
という風に一つ一つ論理立てて理解しないと本試験で得点は取れません。
だから、「個別指導」では論理立てて本試験で得点できるような解説をしているわけです!
本気で次の試験で合格したいのであれば、今すぐ「個別指導」をご利用ください!
■問8
両当事者が損害の賠償につき特段の合意をしていない場合において、債務者の責めに帰すべき債務の履行不能によって生ずる損害賠償請求権の消滅時効は、本来の債務の履行を請求し得る時からその進行を開始する。 (2010-問6-3)
答え:正しい
判例では、履行不能による損害賠償義務の消滅時効は本来の債務の履行を請求し得る時から進行を始めます。
したがって、本問は正しいのですが、少しわかりにくいので「個別指導」では具体例を出して解説しています!
■問9
両当事者が損害の賠償につき特段の合意をしていない場合において、債権者は、債務の不履行によって通常生ずべき損害のうち、契約締結当時、両当事者がその損害発生を予見していたものに限り、賠償請求できる。 (2010-問6-1)
答え:誤り
通常事情によって生ずべき損害については、予見していたものだけでなく、予見していないものも損害賠償請求できるので本問は誤りです。
単にこれを覚えても使えないので、「個別指導」では具体的にどういうことなのかも詳しく解説しています!
「覚える学習」ではなく、「理解学習」をして、合格するための勉強をしていきましょう!
■問10
売主Aは、買主Bとの間で甲土地の売買契約を締結し、代金の3分の2の支払と引換えに所有権移転登記手続と引渡しを行った。その後、Bが残代金を支払わないので、Aは適法に甲土地の売買契約を解除した。Aは、Bが契約解除後遅滞なく原状回復義務を履行すれば、契約締結後原状回復義務履行時までの間に甲土地の価格が下落して損害を被った場合でも、Bに対して損害賠償を請求することはできない。 (2009-問8-4)
答え:誤り
本問の場合、契約してから原状回復の履行時までの間に甲土地の価格が下落することで売主は損害を被っています。契約解除したからといって併せて損害賠償請求ができないというルールはないので、売主Aは買主Bに対して債務不履行(賃料不払い)に基づく損害賠償請求も行えます。