同時履行の抗弁権を持って相殺できない具体例

下記図を見てください。
まず、AがBに100万円を貸したとします。
その後、AはBから100万円で車を購入したとします。
すると、Aは100万円を貸したのだから、Bに対する貸金債権を持ちます。
一方、Bは車の代金債権を持っています。

AB間で車の売買契約を締結した場合、買主Aは引渡し債権を有し、売主Bは代金債権を有します。この2つの債権は同時履行の関係にあります。ここで、AがBにお金を貸しており、Aが貸金を有していたとしても、同時履行の抗弁権の付着したBの代金と、Aの貸金債権は相殺できません。

ここで、
① Aは貸金債権を自働債権として、Bの代金債権とを相殺できます。
しかし、
② Bは代金債権を自働債権として、貸金債権とを相殺することはできません。
この点を説明していきます。

Aは貸金債権を自働債権として、Bの代金債権とを相殺できる理由

これはつまり、前に貸したお金で払ったことにして、車を引渡してもらうということです。
Aのもつ引渡債権とBの持つ代金債権は同時履行であり、相手が履行しなければ、こちらも履行しないという同時履行の抗弁権を有します。
ここで、Aが貸金債権を自働債権として、Bの代金債権を相殺するということは、自ら先に代金を払ったことと同じことを意味し、つまり、A自ら同時履行の抗弁権を喪失させている考えることができます。
目的物の引渡しを受けていない段階で、代金を支払うのと同じことで、相手方Bに不利になることはないので相殺できるということです。
言い換えると、Aの行為によって不利になるのはAなので、相殺できるということです。

Bは代金債権を自働債権として、貸金債権とを相殺できない理由

AはBが車の引渡をしない場合、お金を払いませんという同時履行の抗弁権を持っています。
もし、Bが相殺できるとしたら、Bは貸金債権を相殺して、車を引渡さないということができます。
そうなると、Aは、無担保の状態になり、困ってしまうわけです。つまり、Bの行為によってAが不利益を被るため、相殺できないということです。

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