Aを貸主、Bを借主として甲建物の賃貸借契約(以下この問において「本件契約」という。)が締結され、Bが甲建物の引渡しを受けた場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
1.CがBに対し甲建物をAから買受けたとの虚偽の話をしたので、これを信じたBが甲建物の占有を任意にCに移転した場合、AはCに対して、占有回収の訴えにより甲建物の返還を請求することはできない。
2.Bが、Aの甲建物への立ち入りを建物入り口を閉ざして拒んだときは、Aは甲建物の間接占有が侵奪されたものとして、Bに対して、占有回収の訴えにより甲建物の返還を請求することができる。
3.Bが死亡して、DがBを単独相続した場合、Dは相続開始を知るまでは、Bによる甲建物の占有を承継しない。
4.AとBのいずれもが死亡した場合、本件契約は当然に終了する。
1・・・ 正しい
占有回収の訴えは、「占有していたものを無理やり奪われた場合」に、その占有を取り戻すための手段です(民法200条1項)。
ここで重要なのは、「無理やり奪われた」ことが条件だという点です。つまり、占有者の意思に反して物の所持を失った場合だけが対象です。
もし占有者が「自分の意思で」占有物を引き渡した場合には、たとえその意思が騙された結果であっても、「無理やり奪われた」ことにはなりません。
つまり、占有回収の訴えを使うことはできないです。
判例(大正11年11月27日)でも、「他人の騙しによって占有者が任意に占有を移転した場合は、占有回収の訴えの対象とならない」とされています。
よって、AはCに対して、占有回収の訴えにより甲建物の返還を請求することはできない。」という記述は正しいです。
2・・・ 誤り
占有回収の訴えとは、自分の占有(物を持っている状態)が第三者に奪われたときに、それを取り戻すための方法です。しかし、この訴えが認められるのは、「占有が自分の意思に反して、第三者によって奪われた場合」に限られます。
今回のケースでは、B(借主)は建物を借りている立場なので、その建物の占有権を持っています。一方、A(貸主)は間接的に建物を占有している状態(=間接占有)にあります。
Bが建物の入口に鍵をかけてAの立ち入りを拒んだとしても、B自身が占有権者であることに変わりはありません。また、Aの間接占有も第三者によって奪われたわけではありません。したがって、この場合、Aが占有回収の訴えを使うことはできません。よって、本肢は誤りです。
3・・・ 誤り
被相続人(この場合はB)が死亡すると、その時点でBが持っていた占有は、相続の開始とともに相続人(この場合はD)に自動的に引き継がれます。
つまり、Dが「相続の開始を知った時点」ではなく、「Bが死亡した時点」で占有は承継されるのです。
これは、占有が相続財産の一部とみなされるためで、特に特別な事情がない限り、相続の開始と同時に相続人に移ると考えられています。
この考え方は、最高裁判所の判例(昭和44年10月30日)でも示されています。この判例では、被相続人が死亡した時点でその占有が相続人に引き継がれると明確にされています。
よって、「Bが死亡して、DがBを単独相続した場合、Dは相続開始と同時に、Bによる甲建物の占有を承継する」ので本肢は誤りです。
4・・・ 誤り
賃貸借契約は、貸主や借主が亡くなったとしても、契約自体は終わりません。亡くなった方の契約上の立場(地位)は、法律に基づき相続人に引き継がれます。そのため、「どちらかが死亡したら契約が当然に終了する」というのは誤りです。
令和6年(2024年):宅建試験・過去問
- 問1
 - 法律関係
 - 問2
 - 委任契約
 - 問3
 - 共有
 - 問4
 - 民法総合
 - 問5
 - 履行遅滞
 - 問6
 - 地上権
 - 問7
 - 賃貸借
 - 問8
 - 民法の条文
 - 問9
 - 承諾・債務引受
 - 問10
 - 契約不適合責任
 - 問11
 - 借地権
 - 問12
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 - 区分所有法
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 - 不動産登記法
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 - 問16
 - 都市計画法(開発許可)
 - 問17
 - 建築基準法
 - 問18
 - 建築基準法
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 - 盛土規制法
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 - 土地区画整理法
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 - 問34
 - 手付金等の保全措置
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 - 37条書面
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 - 営業保証金
 - 問37
 - 35条書面
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 - 免許
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 - 問40
 - 37条書面
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 - 問44
 - 37条書面
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