相殺と差押の関係で重要なポイントを例で説明していきます。
ポイントは、
「差押前に受ける前に、反対債権を取得したのか」
「差押後に、反対債権を取得したのか」
によって、相殺できる、できないが変わってきます。
差押後に反対債権を取得した場合
まず、BがAにお金を貸しました。(BはAに対する貸金債権を得る)
次に、Bはお金がなくなり、Cからお金を借りました。(CはBに対する貸金債権を得る)
Bは期限になってもCにお金を返さないため、Bの持つAに対する貸金債権を差押ました。
その後、Bはさらにお金がなくなり、Aからお金を借りました。(Aは反対債権を得る)
差押え → 反対債権を得る
この場合、Cは差し押さえたのだから、相殺されては困りますよね。
差押の意味がありませんよね。
だから、差押後に反対債権を取得しても、相殺できないということです。
差押え前に反対債権を取得していた場合
次はお金の貸し借りの順序が異なります。
まず、BがAにお金を貸しました。(BはAに対する貸金債権を得る)
次に、Bがお金がなくなり、Aからお金を借りました。 (Aは反対債権を得る)
その後、Bはお金がなくなり、Cからお金を借りました。(CはBに対する貸金債権を得る)
Bは期限になってもCにお金を返さないため、Bの持つAに対する貸金債権を差押ました。
反対債権を得る → 差押
この場合、もし、Cからの差押え前に、Aの貸金債権が相殺適状(相殺できる状態)の場合、Aは相殺できるわけです。その後、差押をしても、相殺できるA(Cから見ると第三債務者)を保護して相殺できるとしています。
相殺と差押えの問題一覧
■問1
Aは自己所有の甲建物をBに賃貸し賃料債権を有している。Aの債権者Cが、AのBに対する賃料債権を差し押さえた場合、Bは、その差し押さえ前に取得していたAに対する債権と、差し押さえにかかる賃料債務とを、その弁済期の先後にかかわらず、相殺適状になった段階で相殺し、Cに対抗することができる。 (2011-問6-1)
答え:正しい
差押債権と相殺の関係では、反対債権を差し押さえる前に取得していたかどうかで判断します。
債務者Cは、債権者Bに対して差押え後に取得した債権による相殺をもって差押債権者に対抗することができません。
差押え前から反対債権を有している場合は、その弁済期の先後にかかわらず相殺することができます。
この問題もキチンと理解したほうがよいので「個別指導」では細かく解説します!
単に覚えるだけの勉強では本試験で合格点を取れないので、早めに勉強の仕方は変えましょう
■問2
Aは、自己所有の甲不動産を3か月以内に、1,500万円以上で第三者に売却でき、その代金全額を受領することを差押えと相殺として、Bとの間でB所有の乙不動産を2,000万円で購入する売買契約を締結した。条件成就に関する特段の定めはしなかった。差押えと相殺付法律行為は、差押えと相殺が成就した時から効力が生ずるだけで、差押えと相殺の成否が未定である間は、相続することはできない。 (2011-問2-2)
答え:誤り
原則、当事者の権利義務は、相続をすることができます。
例外として覚えておくべきものは
一身専属的な権利(一身専属権)です。これは相続できません。
例えば、生活保護費の受給権利です。
これは、この「個人」に与えられた対する権利なので相続できません。
運転免許や弁護士資格なども同じ理由で相続できません。
本肢は例外に該当しないため、原則通り相続できます。
■問3
Aは、B所有の建物を賃借し、毎月末日までに翌月分の賃料50万円を支払う約定をした。AがBに対してこの賃貸借契約締結以前から貸付金債権を有しており、その弁済期が平成16年8月31日に到来する場合、同年8月20日にBのAに対するこの賃料債権に対する差押があったとしても、Aは、同年8月31日に、このBに対する貸付金債権を自働債権として、弁済期が到来した賃料債務と対当額で相殺することができる。 (2004-問8-4)
答え:正しい
Cが差押をする前に、Aが反対債権を取得したのであれば、Aは反対債権を自働債権として相殺することはできます。つまり、本問では、Aは、「AのBに対する貸金債権」を差押前に取得しているので、Aは「Aの貸金債権」をもって(自働債権として)、差し押さえられた賃料債権と相殺できます。このような対抗に関する問題については、考え方(判断基準)が分かれば、簡単に解けます!
なので、これも得点源ですね!絶対間違えてはいけない問題です!