民法
【削除】再婚禁止期間の廃止
(改正前)女は前婚の解消又は取消しの日(離婚した日)から起算して100日を経過した後でなければ再婚できなかった。
(改正後)再婚禁止期間は削除されたので、離婚後すぐに再婚することも可能になった。
(改正背景)再婚禁止期間とは、女性が離婚した日から100日間は再婚できないという民法の規定です。この期間に生まれた子は、前夫と後夫のどちらの子か分からなくなるため、再婚禁止期間を設けていました。しかし、現代では医学が発達し、DNA鑑定を行うことで、子どもの父親を特定することができるようになったため、再婚禁止期間の定めが不要となったため削除されました。
【改正】再婚後に出生した子は、再婚した夫の子と推定する
(改正前)婚姻解消又は取消しの日(離婚の日)から300日以内に生まれた子は、婚姻解消前の夫(元夫)との子と推定する。
(改正後)婚姻解消又は取消しの日(離婚の日)から300日以内に生まれた子であっても、婚姻解消又は取消し後、再婚し、再婚後に生まれた子の場合、再婚後の夫(再婚後の夫)との子と推定する。
(改正背景)改正前の民法では、離婚の日から300日以内に「元夫以外の男」との間の子を出産した場合、嫡出推定の規定から、戸籍上、その子は「元夫の子」として扱われることになってしました。そのため、母親が、子の出生の届出をすることができず、子が無戸籍になってしまうことがありました。それを解消するために、再婚した場合、「再婚後の夫の子」と推定することになりました。
※「推定」とは、一応そのよう判断を下すことをいい、反対の事実が証明されれば、その判断は覆される(くつがえされる)場合に使います。つまり、再婚後の子は、「再婚後の夫の子」として扱いますが、DNA鑑定などで「元夫の子」と判断されれば、「元夫の子」になります。
不動産登記法
【改正】法人を所有権の登記名義人とする登記の申請
会社法人等番号を有する法人を所有権の登記名義人とする登記の申請の際には、法人識別事項(会社法人等番号)を申請情報として提供する必要があります。
【改正】海外居住者(自然人・法人)を所有権の登記名義人とする登記の申請
海外居住者(自然人・法人)を所有権の登記名義人とする登記の申請の際には、国内における連絡先となる者の氏名・住所等の国内連絡先事項を申請情報として提供する必要があります(国内連絡先となる者がないときはその旨を申請情報とすることもできます)。
また、添付情報として、①国内連絡先事項を証する情報(国内連絡先となる者の印鑑証明書で③と兼ねることができる)、②国内連絡先となる者の承諾情報及び③国内連絡先となる者の印鑑証明書(又は電子署名及び電子証明書)を提供する必要があります。
【改正】外国人を所有権の登記名義人とする登記の申請
外国人を所有権の登記名義人とする登記の申請の際には、ローマ字氏名(氏名の表音をアルファベット表記したもの)を申請情報として提供する必要があります。また、添付情報として、ローマ字氏名を証する情報(ローマ字氏名が記載された住民票の写し)を提供する必要があります。
【改正】相続登記の義務化
これまでは相続登記は権利に関する登記であり任意であったが、令和6年4月1日から、相続登記の申請が義務化されました。
- 相続(遺言も含む)によって不動産を取得した相続人は、その所有権の取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければなりません。
- 遺産分割が成立した場合には、これによって不動産を取得した相続人は、遺産分割が成立した日から3年以内に、相続登記をしなければなりません。
(1)と(2)のいずれについても、正当な理由なく義務に違反した場合は10万円以下の過料(行政上のペナルティ)の適用対象となります。「正当な理由」とは、例えば、相続人が極めて多数に上り、戸籍謄本等の資料収集や他の相続人の把握に多くの時間を要するケースなどが挙げられます。
宅建業法
【改正】「宅地造成等規制法」から「宅地造成及び特定盛土等規制法」に改正されたことによる変更
①「広告開始時期の制限」及び「契約締結時期の制限」の対象となる許可等の処分について、「宅地造成等に関する工事の許可」及び「特定盛土等又は土石の堆積に関する工事の許可」が追加された。
(改正前)
- 宅地造成等工事規制区域内における宅地造成に関する許可を受ける前は、宅地・建物の売買・交換・貸借に関する広告をしてはならない。
- 宅地造成等工事規制区域内における宅地造成に関する許可を受ける前は、宅地・建物につき、自ら当事者・代理して、その売買・交換の契約を締結し、又はその売買・交換の媒介をしてはならない
(改正後)
- 宅地造成等工事規制区域内における宅地造成等に関する許可(宅地造成、特定盛土等又は土石の堆積に関する許可)受ける前は、宅地・建物の売買・交換・貸借に関する広告をしてはならない。
- 宅地造成等工事規制区域内における宅地造成等に関する許可(宅地造成、特定盛土等又は土石の堆積に関する許可)を受ける前は、宅地・建物につき、自ら当事者・代理して、その売買・交換の契約を締結し、又はその売買・交換の媒介をしてはならない。
②重要事項説明書の記載事項
(改正前)「宅地造成等工事規制区域内における宅地造成に関する許可」が必要な場合、その旨
(改正後)
- 「宅地造成等工事規制区域内における宅地造成等に関する許可(宅地造成、特定盛土等又は土石の堆積に関する許可)」が必要な場合、その旨
- 「特定盛土等規制区域内における特定盛土等又は土石の堆積に関する工事の許可・届出」が必要な場合、その旨
【改正】重要事項説明の対象となる建物状況調査
改正前は、重要事項説明の対象となる建物状況調査の結果は、調査実施後1年以内のものが対象でした。しかし、改正後は、鉄筋コンクリート造または鉄骨鉄筋コンクリート造の共同住宅等に限って、調査実施後2年以内のものが対象となりました。木造戸建住宅や木造アパートはこれまで通り1年以内のものが対象です。
【改正】標準媒介契約約款における建物状況調査の記載
改正前は、既存住宅に関する媒介契約書については、「建物状況調査を実施する者のあっせんの有無」のみを記載していましたが、改正後は、標準媒介契約約款については、建物状況調査を実施する者のあっせんが無い場合、その理由の記載する欄を設けられました。
記載方法の例として「所有者が、建物状況調査を実施する者のあっせんを希望しないため」や「すでに建物状況調査が実施されているため」が挙げられます。
【新設】不動産の売主等による告知書の提出
宅地又は建物の過去の履歴や性状など、取引物件の売主や所有者しか分からない事項に関し、売主等から協力を得られるときにおいて告知書を提出してもらい、これを買主等に渡すことについては、建物状況調査の活用と併せて、告知書により買主等への情報提供の充実が図られることで、将来の紛争の防止に役立つなど、宅地又は建物の円滑な流通を促進することが期待されることから、積極的に行うことが望ましい。
【告知書の記載事項の具体例】
- 境界確定の状況、土壌汚染調査等の状況、土壌汚染等の存否又は可能性の有無、過去の所有者と利用状況、周辺の土地の過去及び現在の利用状況
- 新築時の設計図書等、増改築及び修繕の履歴、石綿の使用の有無の調査の存否、耐震診断の有無、住宅性能評価等の状況、建物の傾き、腐食等の存否又は可能性の有無、過去の所有者と利用状況
- 従前の所有者から引き継いだ資料、新築・増改築等に関わった建設業者、不動産取得時に関わった不動産流通業者等
建築基準法
【改正】「耐火建築物」の定義が変更
(改正前)耐火建築物とは、次に掲げる基準に適合する建築物をいう。
イ その主要構造部が、(1)又は(2)のいずれかに該当すること。
(1)耐火構造であること。
(2)次に掲げる性能(外壁以外の主要構造部にあっては、(i)に掲げる性能に限る。)に関して政令で定める技術的基準に適合するものであること。
(i)当該建築物の構造、建築設備及び用途に応じて屋内において発生が予測される火災による火熱に当該火災が終了するまで耐えること。
(ⅱ)当該建築物の周囲において発生する通常の火災による火熱に当該火災が終了するまで耐えること。
(改正後)耐火建築物とは、次に掲げる基準に適合する建築物をいう。
イ その主要構造部のうち、防火上及び避難上支障がないものとして政令で定める部分以外の部分(以下「特定主要構造部」という。)が、(1)又は(2)のいずれかに該当すること。
(1)耐火構造であること。
(2)次に掲げる性能(外壁以外の特定主要構造部にあっては、(i)に掲げる性能に限る。)に関して政令で定める技術的基準に適合するものであること。
(i)当該建築物の構造、建築設備及び用途に応じて屋内において発生が予測される火災による火熱に当該火災が終了するまで耐えること。
(ⅱ)当該建築物の周囲において発生する通常の火災による火熱に当該火災が終了するまで耐えること。
【改正】大規模建築物以外の建築物に関する「建築確認」を、建築副主事が行えるようになった
(改正前)建築確認は、建築主事・指定確認検査機関が行うことができる。
(改正後)建築確認は、建築主事・指定確認検査機関が行うことができ、
大規模建築物以外の建築物(一般建築物)に関する「建築確認」は、建築副主事も行うことができる。
盛土規制法
これまで「宅地造成等規制法」だった法律が「宅地造成及び特定盛土等規制法(通称、盛土規制法)」に改正された。内容としては、「宅地造成等規制法」の内容に「特定盛土等に関する規制」が追加されたイメージです。
【改正】「造成主」が「工事主」に名称変更
(改正前)「造成主」とは宅地造成に関する工事の請負契約の注文者又は請負契約によらないで自らその工事をする者をいう。
(改正後)「工事主」とは、宅地造成、特定盛土等若しくは土石の堆積に関する工事の請負契約の注文者又は請負契約によらないで自らその工事をする者をいう。
※内容的にはそれほど変わっていません。
【新設】特定盛土等規制区域の新設
都道府県知事は、基本方針に基づき、かつ、基礎調査の結果を踏まえ、宅地造成等工事規制区域以外の土地の区域であって、「土地の傾斜度、渓流の位置その他の自然的条件」及び「周辺地域における土地利用の状況」その他の「社会的条件」からみて、当該区域内の土地において特定盛土等又は土石の堆積が行われた場合には、これに伴う災害により市街地等区域その他の区域の居住等の生命又は身体に危害を生ずるおそれが特に大きいと認められる区域を、「特定盛土等規制区域」として指定することができる。
【新設】特定盛土等規制区域内における特定盛土等又は土石の堆積に関する工事の届出
特定盛土等規制区域内において行われる一定規模()の特定盛土等又は土石の堆積に関する工事については、工事主は、当該工事に着手する日の30日前までに、当該工事の計画を都道府県知事に届け出なければならない。
(盛土・切土において、届出が必要な一定規模とは?)
- 盛土で高さが1mを超の崖を生ずるもの
- 切土で高さが2mを超の崖を生ずるもの
- 盛土と切土とを同時に行って、高さ2m超の崖を生ずるもの(1、2を除く。)
- 盛土で高さ2mを超となるもの
- 盛土又は切土の面積が500㎡超のもの(1~4を除く)
(土石の堆積において、届出が必要な一定規模とは?)
- 堆積の高さ2m超かつ面積300㎡超
- 堆積の面積500㎡超
【新設】特定盛土等規制区域内における特定盛土等又は土石の堆積に関する工事の許可
特定盛土等規制区域内において行われる一定規模(下表参照)特定盛土等又は土石の堆積に関する工事については、工事主は、当該工事に着手する前に、都道府県知事の許可を受けなければならない。
(盛土・切土において、許可が必要な一定規模とは?)
- 盛土で高さ2m超の崖を生ずるもの
- 切土で高さ5m超の崖を生ずるもの
- 盛土と切土を同時に行って、高さ5m超の崖を生ずる場合(1、2を除く)
- 盛土で高さ5m超となるもの
- 盛土又は切土の面積が3000㎡超のもの(1~4を除く)
(土石の堆積において、届出が必要な一定規模とは?)
- 堆積の高さ5m超かつ面積1500㎡超
- 堆積の面積3000㎡超
不動産取得税
【延長】住宅の取得に係る不動産取得税の税率の特例措置(軽減税率)
住宅取得の負担軽減による住宅取得・流通の促進を図るため、住宅を取得した場合の不動産取得税の税率は3%に軽減されます(本則:4%)。
【延長】宅地評価土地の取得に係る不動産取得税の課税標準の特例措置
宅地評価土地の取得に係る不動産取得税の課税標準は、価格(固定資産課税台帳価格)の2分の1に軽減されます。
登録免許税
【延長】住宅用家屋に係る所有権の保存登記等に係る特例措置(軽減税率)
住宅用家屋に係る登録免許税率について、以下のとおり軽減されます。
所有権の保存登記 | 本則0.4%→ 軽減税率0.15% |
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所有権の移転登記 | 本則2.0%→ 軽減税率0.3% |
住宅取得資金の貸付け等に係る抵当権の設定登記 | 本則0.4%→ 軽減税率0.1% |
所得税
【新設】被相続人の居住用財産(空き家)を譲渡した場合の特例(3000万円の特別控除)
相続または遺贈により取得した「被相続人居住用家屋」または「被相続人居住用家屋の敷地等」を、平成28年4月1日から令和9年12月31日までの間に売って、一定の要件に当てはまるときは、譲渡所得の金額から最高3,000万円(※)まで控除することができます。
(※) 令和6年1月1日以後に行う譲渡で「被相続人居住用家屋」および「被相続人居住用家屋の敷地等」を相続または遺贈により取得した相続人の数が3人以上である場合は2,000万円までとなります。
(適用要件)
- 売った人が、相続または遺贈により被相続人居住用家屋および被相続人居住用家屋の敷地等を取得したこと。
- 「相続または遺贈により取得した被相続人居住用家屋を売るか、被相続人居住用家屋とともに被相続人居住用家屋の敷地等を売ること。」又は「相続または遺贈により取得した被相続人居住用家屋の全部の取壊し等をした後に被相続人居住用家屋の敷地等を売ること。」
- 相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。
- 売却代金が1億円以下であること。
【延長】住宅ローン減税について子育て世帯・若者夫婦世帯の借入限度額
借入限度額について、子育て世帯・若者夫婦世帯が令和6年に入居する場合には、令和4・5年入居の場合の水準(認定住宅:5,000万円、ZEH水準省エネ住宅:4,500万円、省エネ基準適合住宅:4,000万円)は維持された。
【延長】合計所得金額が1000万円以下の者は、新築住宅の床面積要件を40㎡以上で住宅ローン減税を受けられる
新築住宅の床面積要件を40㎡以上に緩和する措置(合計所得金額1,000万円以下の年分に限る。)について、建築確認の期限を令和6年12月31日(改正前:令和5年12月31日)に延長する。分かりやすく言えば、令和6年12月31日までに床面積要件を40㎡以上の建物の建築確認を受けることができれば、その年の合計所得が1000万円以下であれば、住宅ローン控除の対象となる。
贈与税
【延長】住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置等の延長
住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置について、3年間(令和6年1月1日~令和8年12月31日)延長となりました。内容は下記の通りです。
非課税限度額 | 質の高い住宅:1,000万円 、一般住宅:500万円 |
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床面積要件 | 50㎡以上(合計所得金額が1,000万円以下の受贈者に限り、40㎡以上50㎡未満の住宅についても適用) |
住宅金融支援機構
【新設】機構は空家住宅情報の提供や援助を行うことができるようになった。
「空家等対策の推進に関する特別措置法21条」の改正により下記条文が追加されました。結果として、機構は空家住宅情報の提供や援助を行うことができるようになりました。
21条 独立行政法人住宅金融支援機構は、独立行政法人住宅金融支援機構法第13条第1項に規定する業務のほか、市町村又は空家等管理活用支援法人からの委託に基づき、空家等及び空家等の跡地の活用の促進に必要な資金の融通に関する情報の提供その他の援助を行うことができる。