取得時効の重要ポイントと解説

取得時効のポイント一覧

  1. 取得時効が成立するためには、①所有の意思を持っていること、②平穏かつ公然他人物占有すること、③一定期間占有すること、の3つが必要
  2. 上記「③一定期間」とは、占有開始時に、占有者が善意無過失であれば10年悪意or有過失であれば20年
  3. 取得時効は、自分の前の人の「占有期間」と、「占有開始の状態」を引き継ぐことができる

取得時効とは?

取得時効とは、他人の土地であるにも関わらず、その土地を自分の土地と信じて、一定期間使用していると、本当に自分の土地になってしまう制度のことです。
もう少し詳しく解説します。
取得時効を主張するには3つの要件を満たす必要があります。

取得時効の要件

  1. 所有の意思を持っていること
  2. 平穏かつ公然他人物占有すること
  3. 一定期間占有すること

ポイントは所有の意思がなければ、取得時効は成立しないということです。
あと、もうひとつ、建物を人に貸すことによって、自分は占有していないが、占有してもらう場合も、占有していることになります
これを、間接占有といいます。

では、一定期間とはどれだけの期間なのでしょうか?

取得時効の完成に必要な期間

占有開始の時期 必要な期間
善意無過失 10年
善意無過失でない 20年

ポイントは占有開始の時点で、善意無過失なのかそうでないのかによって、必要な期間が変わるということです。
善意無過失で占有を始めた者が後になって、悪意に変わったとしても、(つまり、他人のものだと気づいても)あくまでも、占有開始の時点で判断するため、10年で取得時効が完成します。

では、占有開始してから、別の人に渡った場合はどうなるでしょうか?

占有の承継

取得時効は、自分の前の人の「占有期間」と、「占有開始の状態」を引き継ぐことができます。

例えば、下記例、Aが悪意で15年占有した後、Bに建物を引き渡した場合、占有期間は承継され、さらに、占有開始の状態も引き継ぎます、つまり、Aが悪意なので、Bの占有期間をあわせて20年経過すれば時効は完成するので、Bは善意無過失でも、そうでなくても、5年で時効は完成します。

Aが悪意で15年間占有し、その後、Bが善意無過失で5年間占有した場合、Bの時効は完成するという図です。

では、次の例はどうでしょう?
この場合、起算点をAにする場合とBにする場合の2つを考えましょう。

 

Aが悪意で5年間占有し、その後、Bが善意無過失で占有した場合の図です。

まず、占有開始をAとします。すると、Aは悪意なので、Bは15年経過で時効完成となります。
一方、占有開始をBとします。するとBは善意無過失なので、10年経過で時効完成となります。

つまり、この場合、Bは占有を承継せずに、10年で時効完成するということです。 引っかからないように注意しましょう。

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取得時効の問題一覧

■問1
A所有の甲土地を占有しているBによる権利の時効取得に関して、Bが父から甲土地についての賃借権を相続により承継して賃料を払い続けている場合であっても、相続から20年間甲土地を占有したときは、Bは、時効によって甲土地の所有権を取得することができる。 (2015-問4-1)

 

答え:誤り

Bが時効によって土地を取得するには、所有の意思を持って占有する必要があります(取得時効の要件)。本問を見ると、Bは甲土地の所有者Aに対して賃料を支払っています。これでは、Bに所有の意思があるとは言えませんよね。(A所有の土地だから賃料を払っているわけなので、、、)

したがって、Bは時効取得することはできません。

本問はキチンと答えを導くためのプロセスが重要です。

上記は、そのプロセスを省略してポイントのみ話しています。

重要な「思考のプロセス」は「個別指導」で解説します!

この考え方を身につければ、取得時効の問題もドンドン解けるようになります!

是非、習得してください!


■問2
A所有の甲土地を占有しているBによる権利の時効取得に関して、Bの父が11年間所有の意思をもって平穏かつ公然に甲土地を占有した後、Bが相続によりその占有を承継し、引き続き9年間所有の意思をもって平穏かつ公然に占有していても、Bは、時効によって甲土地の所有権を取得することはできない。 (2015-問4-2)

 

答え:誤り

Bの父が11年間所有の意思をもって平穏かつ公然に甲土地を占有した後、Bが引き続き9年間所有の意思をもって平穏かつ公然に占有した場合、Bは占有期間を承継して20年占有したことになります。「Bの父」が占有開始時に「善意無過失であろうが、悪意であろうが、有過失であろうが関係なく」時効期間が満了するので、Bは時効取得できます。したがって、本問は誤りです。


■問3
A所有の甲土地を占有しているBによる権利の時効取得に関して、Aから甲土地を買い受けたCが所有権の移転登記を備えた後に、Bについて甲土地所有権の取得時効が完成した場合、Bは、Cに対し、登記がなくても甲土地の所有者であることを主張することができる。 (2015-問4-3)

 

答え:正しい

系列を考えると、
A所有の土地について、Bが平穏かつ公然に占有

AがCに売却しCが登記

Bの時効が完成
となります。
この場合について、
時効完成前にAから甲土地を購入して所有権移転登記を備えたCは、時効完成前の第三者です。
そして、覚えポイントは、時効により所有権を取得したBは、時効完成前の第三者に対して、登記なく所有権を主張することができるということです。

この問題は考え方が重要です。

単に覚えてもヒッカケ問題でひっかかったりするので、考え方をマスターしましょう!

個別指導」では考え方を解説しています!

単に覚えるだけの学習はやめておきましょう!


■問4
A所有の甲土地を占有しているBによる権利の時効取得に関して、甲土地が農地である場合、BがAと甲土地につき賃貸借契約を締結して20年以上にわたって賃料を支払って継続的に耕作していても、農地法の許可がなければ、Bは、時効によって甲土地の賃借権を取得することはできない。

 

答え:誤り

結論から言うと
土地の賃借権も一定要件を満たせば、時効取得できます。

そして、耕作者が土地(農地)の賃借権を時効取得する場合、農地法3条許可は不要です。

したがって、BがAと甲土地につき賃貸借契約を締結して20年以上にわたって賃料を支払って継続的に耕作しているのであれば、農地法の許可がなくても、Bは、時効によって甲土地の賃借権を取得することができます。
つまり、誤りです。
これは、細かく一つ一つ理解すれば答えは導ける問題です。

理解の仕方は「個別指導」で解説しますので、是非理解をしてください!


■問5
売買契約に基づいて土地の引渡しを受け、平穏に、かつ、公然と当該土地の占有を始めた買主は、当該土地が売主の所有物でなくても、売主が無権利者であることにつき善意で無過失であれば、即時に当該不動産の所有権を取得する。 (2014-問3-1)

 

答え:誤り

本問は「即時取得」に関する問題ですが、そもそも即時取得とはどんなものかを解説します。

即時取得とは
取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意無過失のときは、即時にその動産について行使する権利を取得することです。

そして、この即時取得は不動産では成立しません。
したがって、買主はこの土地を即時取得することはできないと言う事です。

具体例を覚えれば簡単です。
個別指導」では具体例を解説しているので、その具体例をイメージしておきましょう!


■問6
20年間、平穏に、かつ、公然と他人が所有する土地を占有した者は、占有取得の原因たる事実のいかんにかかわらず、当該土地の所有権を取得する。 (2014-問3-4)

 

答え:誤り

受験生はこういった問題が苦手ですよね・・・
なぜなら、問題文の意味が理解しにくいから・・・

とりあえず、簡単に解説すると、占有取得の原因が「賃貸借契約」に基づく場合、占有者は「所有の意思がない」ので20年間、平穏に、かつ、公然と他人が所有する土地を占有しても所有権を取得できません(時効取得できない)。つまり、本問は誤りです。


■問7
Cが期間を定めずBから土地を借りて利用していた場合、Cの占有が20年を超えれば、Cは20年の取得時効を主張することができる。 (2004-問5-4)

 

答え:誤り

原則、賃貸借契約の賃借人は、いくら占有を継続しても所有権を時効取得することはありません。


■問8
AがBから甲土地を購入したところ、甲土地の所有者を名のるCがAに対して連絡してきた。Cが時効により甲土地の所有権を取得した旨を主張している場合、取得時効の進行中にBA間で売買契約及び所有権移転登記がなされ、その後に時効が完成しているときには、Cは登記がなくてもAに対して所有権を主張することができる。 (2010-問4-3)

 

答え:正しい

占有開始から時効完成までの間に第三者Aが現れても、その後、時効取得した者Cは登記なくして第三者Aに対抗できます。

したがって、本問は正しい記述です。

本問は問題文が何を言っているのかを理解することはもちろん、解説の考え方も理解しておく必要がある問題です。


■問9
土地の賃借権は、物権ではなく、契約に基づく債権であるので、土地の継続的な用益という外形的かつ客観的事実が存在したとしても、時効によって取得することはできない。 (2010-問3-1)

 

答え:誤り

土地の賃借権も時効取得できるので本問は誤りです。

この問題に関する理解すべき点を「個別指導」で解説しています!


■問10
自己の所有と信じて占有している土地の一部に、隣接する他人の土地の筆の一部が含まれていても、他の要件を満たせば、当該他人の土地の一部の所有権を時効によって取得することができる。(2010-問3-2)

答え:正しい

他人の土地の筆の一部であっても、要件を満たせば時効取得できます。

これはどういうことを言っているのかイメージしにくいので「個別指導」では、具体例と図を使って解説しています!

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■問11
時効期間は、時効の基礎たる事実が開始された時を起算点としなければならず、時効援用者において起算点を選択し、時効完成の時期を早めたり遅らせたりすることはできない。(2010-問3-3)

 

答え:正しい

占有の開始時期を早めたり遅らせたりすることはできません。

つまり、時効完成の時期を早めたり遅らせたりすることはできません。

したがって、本問は正しいです。


■問12
通行地役権は、継続的に行使され、かつ、外形上認識することができるものに限り、時効によって取得することができる。 (2010-問3-4)

 

答え:正しい

地役権も時効取得できます。

そして、地役権を時効取得するには①継続的に行使され、かつ、②外形上認識することができるものが要件とされているので本問は正しいです。

これがどういうことを言っているのか?理解しておいた方がよいので、追加の解説を含めて「個別指導」で詳しく解説しています!

理解しながら学習を進めていきましょう!


■問13
取得時効の完成により乙不動産の所有権を適法に取得した者は、その旨を登記しなければ、時効完成後に乙不動産を旧所有者から取得して所有権移転登記を経た第三者に所有権を対抗できない。 (2007-問6-4)

 

答え:正しい

時効完成後に第三者が現れた場合、時効取得者と第三者は二重譲渡の対抗関係とみなされるので、登記を備えた方が対抗力を持ちます。

したがって、「取得時効の完成により乙不動産の所有権を適法に取得した者は、その旨を登記しなければ、時効完成後に乙不動産を旧所有者から取得して所有権移転登記を経た第三者に所有権を対抗できない」という記述は正しいです。

この点については、しっかり理解した方が良いですし、時効完成前に第三者があらわれた場合とどのように考え方が違うのかも理解したほうがよいでしょう。

なので、「個別指導」では上記について細かく解説しています。


■問14
A所有の土地の占有者がAからB、BからCと移った場合のCの取得時効に関して、Bが平穏・公然・善意・無過失に所有の意思をもって8年間占有し、CがBから土地の譲渡を受けて2年間占有した場合、当該土地の真の所有者はBではなかったとCが知っていたとしても、Cは10年の取得時効を主張できる。 (2004-問5-1)

 

答え:正しい

「占有開始時の状態(善意・悪意)」と「占有期間」は引き継ぐことができます。

つまり、Cは2年間引き続いて占有すれば、時効が完成し、10年の取得時効を主張できます。つまり、本問は正しい記述です。


■問15
Bが所有の意思をもって5年間占有し、CがBから土地の譲渡を受けて平穏・公然に5年間占有した場合、Cが占有の開始時に善意・無過失であれば、Bの占有に瑕疵があるかどうかにかかわらず、Cは10年の取得時効を主張できる。 (2004-問5-2)

 

答え:誤り

まず、占有の瑕疵とは、悪意のことと考えると分かりやすいです。

本問では、「Bの占有に瑕疵があるかどうかに関わらず」と書いてあります。言い換えると、「Bの占有について善意悪意に関係なく」と言い換えられます。もし、Bが占有開始時に悪意であったら、Bが5年占有しているので、Cの時効が完成するには、Cの占有期間は15年間必要(合計20年必要)となります。つまり、Bの占有に瑕疵があるかどうかにかかわらず、Cは5年占有で10年の取得時効を主張できるとはいえません。


■問16
Aから土地を借りていたBが死亡し、借地であることを知らない相続人Cがその土地を相続により取得したと考えて利用していたとしても、CはBの借地人の地位を相続するだけなので、土地の所有権を時効で取得することはない。 (2004-問5-3)

 

答え:誤り

賃借人は所有の意思はないので、時効取得できません。しかし、その賃借人死亡により相続した者Cは、所有の意思があり、一定要件を満たせば、時効取得できます。したがって、本問の「土地の所有権を時効で取得することはない」という記述は誤りです。

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