虚偽表示における第三者との関係
当事者間の虚偽表示は無効ですが、 相手方Bが第三者Cに売却してしまったらどうなるだろう?
結論から言うと
本人Aは善意の第三者Cに対抗できません。つまり、第三者Cが善意の場合、本人Aは第三者Cに無効主張ができず、土地は第三者Cのものとなってしまいます。

これは、第三者Cに過失があっても、登記がなくても、第三者が保護されます。
善意であればいいんです。
普通に考えれば、本人が謀りごとをして、嘘で売却したんだから、本人に責任はありますよね。
何も知らない第三者とどちらを保護するか考えれば、そりゃ、第三者を保護しますよね。
- 虚偽表示では、善意の第三者は保護されます。
- そして、第三者に過失があっても、登記がなくても、第三者が保護されます
■問1
Aは債権者の差押えを免れるため、Bと通謀してA所有地をBに仮装譲渡する契約をした。
Cが、AB間の契約の事情につき善意無過失で,Bからこの土地の譲渡を受けた場合は,所有権移転登記を受けていないときでも,Cは,Aに対して,その所有権を主張することができる。
(2000-問4-2)
答え:正しい
通謀虚偽表示の無効は、善意の第三者に対抗できません。
つまり、善意の第三者が勝つわけです。
今回、Cは善意無過失なので、「善意」であることに違いはありません。
したがって、Cが勝ち、CはAに対して所有権を主張できます。
■問2
Aは債権者の差押えを免れるため、Bと通謀してA所有地をBに仮装譲渡する契約をした。
Eが,AB間の契約の事情につき善意無過失で,Bからこの土地の譲渡を受け,所有権移転登記を受けていない場合で,Aがこの土地をFに譲渡したとき,Eは,Fに対して,その所有権を主張することができる。
(2000-問4-4)
答え:誤り
今回、問題文を図にすると下記の通りです。
A→B→E
↘
F
つまり、AはEとFの両方に譲渡した形になります。
つまり、EとFは二重譲渡の関係です。
二重譲渡では、先に登記をした方が勝ちます。(=所有権を主張できる)
本問は、Eは所有権移転登記を受けていません。
Fについては登記の有無の記載はありません。
したがって、この状況でEはFに所有権を主張できるとまではいえないので誤りです。
■問3
Aは、その所有する甲土地を譲渡する意思がないのに、Bと通謀して、Aを売主、Bを買主とする甲土地の仮装の売買契約を締結した。善意のCがBから甲土地を買い受けた場合、Cがいまだ登記を備えていなくても、AはAB間の売買契約の無効をCに主張することができない。
(2015-問2-1)
答え:正しい
虚偽表示では、善意の第三者は、当事者(AおよびB)に対抗できます。
今回Cは善意なので、Cは善意でありさえすれば、Aに所有権を主張できます。
本問は「善意のC」と書いてあるので、所有権の登記を備えていなくてもAに勝ちます。
逆を言えば、AはAB間の売買契約の無効をCに主張することができないので、正しい記述となります。
2では、登記の有無で判断するのに対し、本問は善意かどうかで判断します。
この違いについては重要なので個別指導でお伝えします!
■問4
Aは、その所有する甲土地を譲渡する意思がないのに、Bと通謀して、Aを売主、Bを買主とする甲土地の仮装の売買契約を締結した。善意のCが、Bとの間で、Bが甲土地上に建てた乙建物の賃貸借契約(貸主B、借主C)を締結した場合、AはAB間の売買契約の無効をCに主張することができない。
(2015-問2-2)
答え:誤り
土地が仮装譲渡された場合、「土地上の建物」の賃借人は、虚偽表示の第三者に該当しません。
したがって、Cは第三者に該当しないので、Cは保護されないです。
したがって、Cは所有権を主張できません。
言い換えればAはCに対しても無効を主張することができるわけです。
したがって、 「AはAB間の売買契約の無効をCに主張することができる」ので、本問は誤りです。
▼なぜ、土地が仮装譲渡された場合、「土地上の建物」の賃借人は、虚偽表示の第三者に該当しないのか? 理解するための解説は個別指導で解説します!
■問5
Aは、その所有する甲土地を譲渡する意思がないのに、Bと通謀して、Aを売主、Bを買主とする甲土地の仮装の売買契約を締結した。甲土地がBから悪意のCへ、Cから善意のDへと譲渡された場合、AはAB間の売買契約の無効をDに主張することができない。(2015-問2-4)
答え:正しい
問題文の状況を図にすると
A→B→C→D
C:悪意
D:善意
転得者DもC同様、第三者として考えます。
つまり、転得者Dが善意であれば、転得者Dは保護されます。
言い換えれば、善意のDは所有権を主張できるので、
AはAB間の売買契約の無効をDに主張することができないです。
■問6
民法第94条第2項は、相手方と通じてした虚偽の意思表示の無効は「善意の第三者に対抗することができない。」と定めている。Aが所有する甲土地につき、AとBが通謀の上で売買契約を仮装し、AからBに所有権移転登記がなされた場合に、B名義の甲土地を差し押さえたBの債権者Cは「第三者」に該当する。
(2012-問1-1)
答え:正しい
「差押え権者」は、虚偽表示における法律上の「第三者」です。
したがって、差押権者Cは「第三者」に該当する旨の記述は正しいです。
■問7
民法第94条第2項は、相手方と通じてした虚偽の意思表示の無効は「善意の第三者に対抗することができない。」と定めている。Aが所有する甲土地につき、AとBの間には債権債務関係がないにもかかわらず、両者が通謀の上でBのために抵当権を設定し、その旨の登記がなされた場合に、Bに対する貸付債権を担保するためにBから転抵当権の設定を受けた債権者Cは「第三者」に該当する。
(2012-問1-2)
答え:正しい
判例では、「仮装した抵当権設定登記」がされた後の「転抵当権者」は「虚偽表示の第三者」に該当します。
問題を時系列にすると
① 虚偽表示により、BがA所有の甲土地の抵当権者となる
② CがBにお金を貸す
③ CがBの抵当権の転抵当権者となる。(①の抵当権に抵当権を設定する=転抵当)
Bを抵当権者とする仮装した抵当権設定登記がされたのち、善意のCを権利者とする「転抵当権設定登記」がされた場合、
転抵当権者Cは虚偽表示における第三者として保護されます。
■問8
民法第94条第2項は、相手方と通じてした虚偽の意思表示の無効は「善意の第三者に対抗することができない。」と定めている。Aが所有する甲土地につき、AとBが通謀の上で売買契約を仮装し、AからBに所有権移転登記がなされた場合に、Bが甲土地の所有権を有しているものと信じてBに対して金銭を貸し付けたCは「第三者」に該当する。
(2012-問1-3)
答え:誤り
単なる債権者は、虚偽表示における第三者に該当しません。
問題を時系列にすると
① 虚偽表示でAがBに甲土地の所有権を移転
② Bにお金を貸したC
CはBにお金を貸しただけで、甲土地の抵当権を取得したり、差し押さえたりしていません。
Cは、抵当権を設定したり、差押えをしたりしていないので、Cは単なる債権者(法律上の利害関係人とまでは言えない)ので、第三者に該当しません。
■問9
民法第94条第2項は、相手方と通じてした虚偽の意思表示の無効は「善意の第三者に対抗することができない。」と定めている。AとBが通謀の上で、Aを貸主、Bを借主とする金銭消費貸借契約を仮装した場合に、当該仮装債権をAから譲り受けたCは「第三者」に該当する。
(2012-問1-4)
答え:正しい
判例により、虚偽表示による契約から生じた仮装債権の譲受人は第三者に該当します。
① 虚偽表示でAはBにお金を貸したことにする。(Aは債権者)
② Aがもつ貸金債権をCが譲り受ける(Cは虚偽表示による契約から生じた仮装債権の譲受人)
Cが有する貸金債権は虚偽表示の目的物ともいえます。
今回、Cは、虚偽表示による契約から生じた仮装債権なので、上記判例により「第三者」に該当します。
問6~9についても「基本的な考え方」があり、その考え方に基づいて判例が導かれています。
つまり、基本的な考え方が頭に入っていれば答えを導けるようになります!
この点については、個別指導でお伝えします!
■問10
AがBから甲土地を購入したところ、甲土地の所有者を名のるCがAに対して連絡してきた。Cは債権者の追及を逃れるために売買契約の実態はないのに登記だけBに移し、Bがそれに乗じてAとの間で売買契約を締結した場合には、CB間の売買契約が存在しない以上、Aは所有権を主張することができない。
(2010-問4-4)
答え:誤り
C→B→A
通謀虚偽表示(ウソの契約)を行うと、当事者間(BC間)の契約は無効です。
したがって、CはBに対して甲土地を返すよう主張できます。
ただし、本問は、さらにBがCに甲地を売却しています。つまり、第三者が存在する場合はどうなるのか?
第三者Aが善意であれば(虚偽表示の事実をしらなければ)、第三者Aは所有権を主張できます。
したがって、 「Aは所有権を主張することができない。 」という記述は誤りです。
本問は単に上記を覚えるだけでなく、キチンと理解すべき問題です。
どのように理解すべきかは個別指導で解説します!
■問11
A所有の甲土地をAとBが通じてした仮装の売買契約をした。そして、Bに所有権移転登記を行った後、CはBとの間で売買契約を締結した。この場合、CがAB間の売買契約が仮装であることを知らず、知らないことに無過失であっても、Cが所有権移転登記を備えていなければ、Aは所有者であることをCに対して主張できる。
(2008-問2-2)
答え:誤り
「仮装」という言葉があるので、虚偽表示の問題ということが分かります。
そして、第三者Cは善意(仮装であることを知らず)・無過失です。
虚偽表示では、本人Aは善意の第三者Cに対抗できません。つまり、本人Aは善意のCに所有者であることを主張できません。
したがって、本問は誤りです。